あらすじ

かのマッカーサー元帥との面会を果たしたトメは、克巳の思惑どおり、「鉄腕麗人」として世間の大きな注目を集めていた。次のステップとして日比谷美容が用意したのは、自らスタジアムを作り、女子野球連盟からの脱退を表明することだった。そして、そのスタジアムの総工費を、アメリカ女子選抜チームとの賭け試合で賄うという壮大な計画を打ち立てたが……!?
鉄腕ガール 1巻

昭和20年、日本は戦争に負けました。みんな貧しかったけれど心は開放的で、世界がまだ難しくなる前、一人一人の個性を受け入れる大きさがありました。戦争に勝った国は日本に命令したんです、「今までのように女性を虐げるのはやめなさい」と。時代の波に乗って女達は動き始めました。――女子プロ野球にかける乙女達の麗しき熱闘、今、プレイボール!!

鉄腕ガール 2巻

必要なのは、“美しさ”と“凶暴さ”……。日比谷美容の蘭崎五十鈴に将来性を見出された加納トメは、同じキャバレーの女給仲間だったタマを誘い、女子プロ野球界へ乗り込んだ!!同時に日比谷美容のイメージガールにも起用されたトメには、驚くべきポスターが準備されていて……。――「アタシは男に生まれたかったなんて思わない、絶対現実を否定しないぞ。抵抗しないことは、罪だ」――。

鉄腕ガール(3)

黒人の女監督・マーサの指導の下、トーナメント戦の優勝を目指し、合宿に入ったトメたちキャンディーズのメンバー。そこには女子プロ野球のエキシビションでトメを叩きのめした宿敵・黒沢もいて……。1ヵ月の合宿の後、ついにキャンディーズ初の練習試合が決まった。相手は屈強な男達が数多く在籍する米軍海兵隊!!死ぬ気で投げるトメのピッチングは、海兵隊の猛攻を食い止めることができるのか!?

鉄腕ガール(4)

かのマッカーサー元帥との面会を果たしたトメは、克巳の思惑どおり、「鉄腕麗人」として世間の大きな注目を集めていた。次のステップとして日比谷美容が用意したのは、自らスタジアムを作り、女子野球連盟からの脱退を表明することだった。そして、そのスタジアムの総工費を、アメリカ女子選抜チームとの賭け試合で賄うという壮大な計画を打ち立てたが……!?

鉄腕ガール(5)

克巳が拉致され、日米戦に負けるよう脅迫された五十鈴たちだったが、犯人の要求を拒否したまま運命の日を迎えた!!しかし、試合開始直前、今度はトメが犯人によって監禁されてしまい……!?キャンディーズと日比谷美容、そして日本国民の夢を賭けた闘いは、トメ不在のキャンディーズに託されることになった。敗戦国・日本で、日本人と米国人の闘いが、再び幕を開ける!!

鉄腕ガール(6)

「敗戦国を劇的に復活させるお金をアメリカ人から奪い取るの……」――7回の表に入り、日米決戦野球券の最終集計結果が発表された。キャンディーズに賭けられた券の枚数は、なんと2億5400万枚!!勝利すれば、国民は国家予算並みの金額を手にすることができる!?大エースのトメが戻ってきたキャンディーズは攻勢に転ずるが、その裏では新たな駆け引きが始まっていて……。

鉄腕ガール(7)

日本中が熱狂した日米決戦から5ヵ月が過ぎ、トメは巨額の資金をかき集めながら、ある目標に向かって動きだしていた。トメに魅せられた女・鳥越はるかとアメリカに渡ったトメは、日米決戦のアメリカ側の出資者であったバンクス家に出向き、夢を叶えるため驚愕の「契約」を結ぶことになって……。激動の時代、己の信念に突き動かされた鉄腕麗人が、アメリカで再度猛攻撃をかける!!

鉄腕ガール(8)

昨年の大リーグのホームラン王であり、国民的スーパースターのジョー・ダンカンを担ぎ出し、彼の引退を賭けた試合の興行にこぎつけたトメ。試合前から様々なスキャンダルを引き起こし、アメリカ国民の非難を一身に背負ったトメは、「悪魔に魂を売った女」として、ダンカンを打ち取るためにマウンドに立った!!二度とアメリカに降伏しないため、鉄腕麗人の運命を賭けた闘いが始まった!!

鉄腕ガール(9)

ダンカンとの壮絶な闘いの後、トメはハワイへと飛び立った。それは、日米決戦後、GHQによって米国へと連れていかれた克巳との再会を果たすためだった。だが、克巳の待つハワイでは、トメの想像を絶する人生の波乱が待ち構えていて……。「結構面白いぜ、アタシの人生」――鉄腕麗人・加納トメが駆け抜ける、空前絶後の女の生き様、ここに在り!!

鉄腕ガール

女子プロ野球に、太陽は昇るか。

鉄腕ガール 高橋ツトム
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

【世界と戦うアスリート漫画①〜スポーツコラム風に】 1934(昭和9)年、あのベーブ・ルースを擁した米国選抜チームを相手に一人、気を吐いた日本人投手がいた。その年、彼を中心に日本初の男子プロ野球チームが誕生する。 彼の名は、沢村栄治。背番号14。 学生野球が盛んな日本にようやく生まれたプロ野球の中心で、彼は自ら輝き、日本中を熱中させた「太陽」だった……というのは史実。 ★★★★★★ そしてここからは架空の話。 例えば太平洋戦争敗戦後に日本で女子プロ野球リーグを構想するとして、もし沢村栄治のような「太陽」が女子にいたら、どうなっただろう? カフェの女給を寄せ集めたチームの中に、ずば抜けた身体能力と負けん気を持った女がいた。彼女は化粧品会社の女性社長のチームで、日本を代表する豪腕……まるで沢村のような……に成長する。 彼女の名は、加納トメ。背番号14。 その豪速球とマウンド度胸は、周囲に夢を見させる。しかし彼女を待っていたのは、プロリーグではなかった。 女性社長と彼女の弟はプロリーグ構想を骨抜きにし、米国資本との賭け試合を仕掛ける。米国との「経済戦争」は日本中を熱狂させるが、その先に待っていたのは……。 プロリーグとは縁遠い場所で、加納トメは全身全霊で戦い続ける。勝負の場を作るために自ら前線に立ち、女が野球をやる権利を賭けた大博打を打つ。そして圧倒的な才能にも関わらず、常に格上に挑み、負けて当然のギリギリの闘いをする。 その姿は時に清々しく、時にひどく見苦しい。しかし彼女は周囲を惹きつけ、「太陽」として日本を明るく照らし、現代の我々の網膜にも忘れ難い影を焼き付ける。 ★★★★★ ……という強烈な印象を残す本作。その現実離れした物語は実際のスポーツ興行には参考にし難いと思われるかもしれない。しかし私達は本来、現実離れした圧倒的な才能・物凄いプレイを観たくて、競技場に足を運び、ニュースに一喜一憂するのではなかったか。 例えば『1518! イチゴーイチハチ!』の環会長や、『球詠』の選手達が将来飛び込む女子プロ野球の歴史に、もし加納トメがいたら……と想像するのはとても楽しい。それは彼女達が加納トメというとんでもない才能を目標にし、いつか凌駕し、歴史を上書きする瞬間を見せてくれることを期待するからだ。