あらすじ今の時代からは想像もつかない“大飢饉”。舞台は中世、農村の時代。日照りが続き干上がった土地では、食べるものは何もなくなる。飢饉で追いつめられた人間のすることとは・・・!?不幸な生まれ方をしたアシュラは、その逞しい本能により壮絶な生き方を繰り広げる。人間性の本質と欲望をギリギリのところまで描いた“衝撃の問題作”!!ジョージ秋山の代表的傑作!
人と人ならざるものの境はどこにあるのでしょう。人を殺したら、親を殺したら、人を食べたら、人ならざるものになってしまうのでしょうか。 飽食の現代においても愛やら道徳やらだけで腹いっぱいにはならない。そこかしこに死体が転がる飢饉の中、生きるために我が子を焼いて食おうとするものを誰が責められようか。 そして、母に焼かれた憎しみだけを携えて獣のように生きるアシュラを誰が責められようか。 人として生きることはアシュラにとって救いなのだろうか。 和尚や若狭と出会わずに、憎しみのまま生きて死んでいく方が苦しくなかったのかもしれない、と心の奥の方で考えてしまう。 愛とか幸せとかそういう類のものは気づかない方が生きやすいような気がする。 それでも、人として生まれてしまったなら人として生きていかねばならない。 ただ生まれて死ぬことがこんなに酷だなんて、人は難儀な生きものだなあ…。 救いも何も考えず真っ当に生きて真っ当に死ぬ、それ以外に人の道は無いのかもしれない。 ということは結局救いがないってことなの?なんて疑問も生まれてしまうけれど。 人として生まれてしまった以上は人として生きていかねばならない。それ以上でもそれ以下でもない。 今の私が受け止められるのはそれくらいです。