ハネチンとブッキーのお子さま診療録

家族の絆も診る小児科マンガ

ハネチンとブッキーのお子さま診療録 佐原ミズ
六文銭
六文銭

小児科を題材としたマンガは数あれど、大抵、障害の有無だったり虐待だったりが多く、読んでいてキツくなるんですが、テーマとしてドラマチックな展開ができるので(その表現が正しいか疑問ではあるが)、マンガとしてそうなる展開も是非に及ばずと思いながら読んでました。 が、本作は、なんの変哲もない家事や育児に追われた人たちが、ブッキーというデスメタルよろしくの文字通り一風変わった容姿の小児科医によって救われていくストーリー。 なんのドラマチックな展開もないのですが、淡々とした日常に潜むちょっとした苦労の数々に、子持ちの人なら共感必至だと思います。 ありていにいうとすごくいいです。 主人公のハネチンこと羽根田は、奥さんを亡くされて、幼い子ども2人の育児をしながら、仕事も人並み以上にこなそうとしてままならず、焦りから子供に当たってしまい、後悔する・・・ 後悔するくらいならやらなければいい なんて言えるのは、その感情に至ったことがない人間のセリフで、100%悪いとわかっていても、止められないことだってある。 特に子育ての場合は、理屈ではどうにも割り切れないことが多々ある。 それを的確に描いているのが、なんとも新鮮でした。 ブッキーの、患者とのつかずはなれずな程よい距離感もいい。 病気だけでなく、その病気に至る経緯から家族の関係性も診る小児科マンガで、今後も期待大な作品です。

鉄楽レトラ

ふたつの赤い靴がつなぐ青春の絆

鉄楽レトラ 佐原ミズ
ANAGUMA
ANAGUMA

青春の瑞々しさ・ほろ苦さ・爽やかさにくわえて、若者の持つエネルギーの熱さ…。 ジュブナイルストーリーの魅力がたっぷり詰まったマンガです。 佐原ミズ作品は本作が初めてだったのですが、圧倒されてしまいました。 主人公・鉄宇(きみたか)とヒロイン・宝(たから)はバスケとフラメンコ、それぞれの夢に敗れてしまいます。偶然出会った彼らは、自分には似合わなくなったバスケシューズとフラメンコシューズ…お互いの「赤い靴」を交換します。 高校生になり、宝が新たにバスケを始めたことを知った鉄宇は、自身もまた彼女から受け取った赤い靴を履き、フラメンコ教室のドアを叩くことに…。 本作の多くの登場人物は過去に引きずられ、未来におびえています。 鉄宇と宝は靴と一緒に、互いの夢を交換することで、未来に向かって進んでいけるようになりました。 鉄宇が赤い靴を履いたことで「アイツががんばってるんだから、自分もがんばろう」と周囲のキャラクターも、みな少しずつ変わっていくのです。 一度くじけても、誰かと一緒なら新しい夢を追っていける…その姿に勇気づけられます。 6巻と短いストーリーではありますが、彼らの未来に思いを馳せながら読了した時の充実感、味わってみてほしいです。 末筆ではございますが、妹の銘椀(なまり)ちゃんが終始かわいいことを付け加えさせていただきます。 ホント健気でいい子でね…。