米代先生の新作百合読み切り(みなみちゃんの恋)を読んだらこちらも読み返したくなったので。 自分のことを依存される側だと認識していた女が、その依存の実態は自分本位に偏ったものだったことに気付く瞬間の表情が好き。依存関係を錯覚している女ほど好きなものない。
好きな女の気を引こうと自分を傷つけていく女。でもそれは好きな女の幸せを願ってのことでもあってどうしようもない。 これ田中みなみと伊藤あさこから来てるのマジ?
原作者が同じ人とは思えないくらい漫画家それぞれの良さが発揮されてる短編集ですね。それも長嶋有さんの漫画審美眼の賜物だと思いますが。どれも面白かったけど雁須磨子先生のとあるアパートの歴代の住人達が出てくる話が特に好きでした。完全に雁須磨子先生の作品になってたと思います。三本阪奈さんは家族エッセイを描かれている作家さんという認識しか今までなかったですが、オリジナルのストーリー漫画を読んでみたい!と強く思いました。龍角散を食べる為に本多先輩が一瞬マスクを外した時の顔が可愛くて説得力があった。
吉田戦車、ウラモトユウコ、オカヤイヅミ、河井克夫、島崎譲、衿沢世衣子、カラスヤサトシ、島田虎之介、100%ORANGE、よしもとよしとも、フジモトマサル、陽気婢、小玉ユキ、うめ、萩尾望都、藤子不二雄A。 前作にあたる『長嶋有漫画化計画』に筆を寄せた目が眩むような錚々たる面々です。 それから11年が経ち、遂に第2弾となる本著が発売されました。 今回の描き手は 『あした死ぬには、』の雁須磨子 『凪のお暇』のコナリミサト 『トクサツガガガ』の丹羽庭 『メタモルフォーゼの縁側』の鶴谷香央理 『ご成長ありがとうございます』の三本阪奈 『往生際の意味を知れ!』の米代恭 の6名。今回は全員女性作家ですが、全員実に絶妙な「今」を描いている方々。長嶋有さんがずっとマンガを愛し続けて広く読まれているであろうことが伝わってくる、一マンガファンとして心が躍る陣容です。 米代恭さんの「三十歳」は、シンプルに米代恭さんの描く表情が良いです。無機質な表情も、真逆の感情を全開にした表情も。主人公の瞳にハイライトが宿る瞬間が堪りません。タイトルにある三十という年齢の、歳を重ねて至る諦観とその裏にまだ残る稚さ。幼い子供のように在れる相手ができて時間を共に過ごすようになる過程、伸びやかになる心の描写も好きです。こういう男女の関係を今描いてもらうなら米代さんというのは非常にしっくりきます。 三本阪奈さんの「舟」の主人公の妄想癖、個人的にはとても共感します。昔から現実を差し置いて空想の世界へ行ってしまうところがありました。妄想ができる脳がひとつあれば、永遠に暇にはならないなと思います。本著の中では最も新しい2022年の短編ということで、マスクを着けた登場人物たちとそれを利用した演出がとてもよく利いていました。思春期の矯正は、特に女の子にとっては外見上の面で嫌な部分もあるものですが、マスクはそれを隠せるという意味では少しありがたい存在でもあるのだなと。リフレインする特徴的なフレーズなども小気味いいです。大人へと漕ぎ出していく彼女たちの姿に、在りし日を重ねます。「表現は読者と年をとっていくだけではダメで、ときには若者に向けて放っていないとダメだ」という、長嶋さんの感性も素敵です。 丹波庭さんの「今も未来も変わらない」は、レンタルビデオ屋でDVDを借りるというほんのひと昔前にあった風景がとても懐かしく感じられる一篇です。私の家の近所のレンタルショップも時代の波に呑まれて潰れてしまいましたが、100円の日にたくさん借りたり延滞金を払わないように必死になったしたことを久しぶりに思い出させてもらいました。 ″僕は映画を観た時の「情景」も含めて「映画」だなって思うんです″ というセリフはマンガにも完全に同じことが言えて、いつどこでどのようにして誰との関わり合いの中で読んだのかという記憶と共に自分の中に残っています。それ故に、マンガの帯も挟まっているチラシも私にとっては大事な欠片なのです。余談ですが ″ガムと締切はよくのびるんだよ″ のセリフも好きです。 鶴谷香央理さんの「問いのない答え」は、311の震災を描いた作品。長嶋さんと鶴谷さんの出逢いが、震災の翌日からTwitter上で行なっていた言葉遊びだったそうでそんな現実も上手く反映させた物語となっています。10年前のTwitterは、今より人が少なくて3000RTもされたら珍しいことでした。他愛もない好きなことを介して生まれる緩い繋がりが非常に愛しい自由な場でした。ただ、今はかなり変質してしまってかつてあった楽園の心地良さに想いを馳せます。あの頃から繋がり続けてくれている方に感謝しつつ、繋がりが解けた方々もどこかで元気に暮らしていて欲しいなと思います。日常の細やかな所作や機微が、落ち着いた筆致で描かれ鶴谷さんの良さが短編の中にもよく表れています。コロナなどで塗り潰されてしまった部分もありますが、いつまでも留めておくべき記憶がここにあります。 雁須磨子さんの「三の隣は五号室」は、チャレンジングな原作小説を巧みにマンガに落とし込んでいます。なぜか四号室がないアパートの五号室に住んだ歴代の住人たちのザッピング的な物語です。村田沙耶香さんが原作に寄せたあとがきに書かれている通り、「前の人」というのは不思議な関係です。私も以前住んだ家では引っ越したばかりのときに、ずっと前の人への郵便物が届き続けたことがあります。まったく縁もゆかりもないけれど、同じ空間を共有する他人。内装や機能など知らない間に継承をしていて影響を与え合うひとつなぎの関係。同じ景色の中で何を思い、どのように暮らして生きていったのか。人生のどこかで一瞬でも交わった人ともまた違い、直接関わっていないけど生まれる不思議な関係。小さなアパートの一室がまるで社会の縮図のような人間模様を描いているさまは、奇妙な面白みがあります。 コナリミサトさんの「もう生まれたくない」は、このタイミングで単行本化されたことに運命を感じました。「歯の欠けたベーシスト」「セガサターンのゲーム」と言って、あるバンドを即時に連想できる人は今どれくらいいるのでしょうか。奇しくも一昨日、そのバンドのリーダーは誕生日を迎え、その1週間ほど前に歯の欠けたベーシストの後釜に座ったベーシストが逝去したという報が出て、私は数日間号泣しながら彼の仕事を振り返っていました。そして、昨日バンドリーダーによりベーシストを弔うイベントの発表が行われました。そう、X JAPANです。作中に登場するセガサターンのゲームは『X JAPAN Virtual Shock 001』でしょう。私は人生で初めて行ったライブがXだったので、育ててくれた親のようなバンドです。奇跡の再結成からずっとずっとニューアルバム発売を待ち続けて十数年経ってしまいました。唯一ずっと「コンサートをやりたい」と言ってくれてきたHEATHが8月にYOSHKIと共演してセッションした時も泣きました。そして、この短編でまたXやHEATHのことが思い出されて涙を堪え切れませんでした。ふとしたことで、人はあっけなく死ぬ。そして、永遠に拭えない後悔をする。もう少し、違う選択肢を採れたかもしれないと思いながら……。 長嶋さんのあとがきや、それぞれの作品へのコメントも実に味わい深いです。「漫画は暗くて愉快」という概念、真諦を突いています。 原作ファンの方やそれぞれの作家のファンの方はもちろん、そうでない方も今をときめく感性豊かな方々による豪華なコラボレーションを味わってみてはいかがでしょうか。
結論からいうと、個人的には大満足。 ひよりがだんだん人間になる様子や市松の心境の変化が人間のリアルさを描いていて感情移入がすごいです。 謎が謎をよぶ、ラブサスペンスな作品です。
長いまつげ、サラサラとした髪の毛、読み取れない表情、時々吐露される感情。 お人形さんみたいな容姿だけど、本心見せず要領よく人をあしらう元カノひより。 冴えない雰囲気の青年として描かれているものの、要所要所でさらりとイケメン、元カノへの未練たらたらな元カレ市松くん。 一緒に映画を撮っていたふたりが再会し、元カノが元カレに言った言葉。 「市松君に私の出産記録を撮って欲しいの。」 「だから市松君の精子が欲しい。」 そして認知もいらない、と。 なんてめちゃくちゃな。 OKしないと話は進まないんだけど、まさかのOKして、さらにまさかのシリンジ法を漫画で見ると思わなかった。 若いから、すぐすぐ妊娠しちゃうのかねえ。わからん。 あと、出産でもしもの事態が起こるとか、生まれた子が五体満足前提なのがちょっと気になる。 世の中どうなるかわからないもの。 老婆心働いて、余計なことを考えてしまう。 本編は妹や叔母が出てきて、ひよりの本心が描かれ、これから一体どうなるんだろうというところで3巻へ続く。 2巻無料でなんとなく読んでみたものの、これは無料分で満足できないタイプの漫画だ‥。
7年前に別れた元カノが忘れられない主人公の市松海路。 付き合ったのは、だったの1か月。 その期間に撮った映画の映像を毎日見ては、一日の報告をしている毎日。 その元カノの日下部日和は、7年ぶりに頼みたい事があるとTELをしてきた。そして、会ってみると・・・。 『出産映画を撮って欲しい。』『海路の精子が欲しい。』『父親はいらない。セックスもしない。が、子供が欲しい。』とびっくり発言を連発!! 結局、ダメなら他の人に頼むと言われ協力することにした海路だが。 漫画家の母との確執。父親の死の真相。複雑な家庭環境から自分を見失いかけている日和。 2巻読了。 これから、もっと面白くなりそうな予感♬
※ネタバレを含むクチコミです。
微妙な生まれたての恋心っていうか恋と執着を認識しきれてないっていうかストーカーってやっぱり気持ち悪いなっていうか、それでも人をここまで好きになったことあるかな?って考えさせられるような好きってなんだろうとか結婚とか不倫とか姉弟とかそっくりさんとかみんなまとめて人間だけれど違う人で、誰がどう思おうと自分が幸せだと思ってればいいよねってはなし。
漫画家ならではだなと思ったのは、原稿明けにボロボロの体で食べたものの思い出を語っている作家さんの多いこと。 殆どがエッセイですが、スエカネクミコ先生は創作でした。 衝撃的だったのは峰なゆか先生の炭水化物愛。 役に立ったのは晴川シンタ先生の蟻塚と、釣巻和先生の心太アレンジレシピ。 エッセイとして面白かったのは、石黒正数先生のラ王と多田基生先生の普段の食事が粗末すぎて美味しいラーメン食べたら脳がバグっちゃった話。 酒、肉、麺ときたら次はなんだろう。 スイーツ?
米代先生の新作百合読み切り(みなみちゃんの恋)を読んだらこちらも読み返したくなったので。 自分のことを依存される側だと認識していた女が、その依存の実態は自分本位に偏ったものだったことに気付く瞬間の表情が好き。依存関係を錯覚している女ほど好きなものない。