兄の嫁と暮らしています。

「ただそれだけの話です」

兄の嫁と暮らしています。 くずしろ
ゆゆゆ
ゆゆゆ

一巻無料でなんとなく読んだら、なにこれ、すごくおもしろい。 あはは、でなくて、興味深いほうのおもしろさ。 帰宅した主人公。 玄関を開けて出てきた美人さんに対して主人公のモノローグ。 ――嫁です。 ページをめくって、追加モノローグ。 ――兄の嫁です。 この流れに、グッと心を持っていかれた。 その前に兄が死んだ話をされている。 それでも兄の嫁と、兄との思い出を語り合いつつ暮らしている。 ――両親は昔 死んで 兄も半年前に死んで ――今は 兄の嫁と 暮らしています ――ただ それだけの話です 主人公のモノローグはたんたんとしている。 なんてことない日常が綴られているのに、少し歪な関係が加わるせいで、相手を利用していると罪悪感が端々からこぼれてしまう。 幸せそうにしているのに、どこかうまくいってない。 うまくいってるように思えると、出てくる亡くなった兄の影。 ふたりとも、喪失感を受け入れないといけない。 一巻まで読んだところだと、幸せな日常に見えてどこか欠けていてつらい。 あらすじに「日常センシティブストーリー」と聞き慣れない単語があるのは、この気持ちをあらわしているんだろうか。

雨夜の月

聴覚障害者と心通わす百合 #1巻応援

雨夜の月 くずしろ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

女子高生が聴覚障害者のクラスメイトと心を通わせる過程を描くこの作品。ライトなノリの台詞の遣り取りの中に心の揺れを幾重にも描いて、ハッとさせられる事の多い内容となっています。 聴覚障害の描き方がステレオタイプで無く(参考文献の多さからも窺えるのですが)一人の「その人固有の障害という特性を持つ」女性のリアルが見えてくる様です。そしてその特性故に周囲と壁を作り、入学早々孤立する彼女に、懸命に、悩みながらもきちんと意思を確かめながら接する主人公。 彼女固有の障害についてストーリーの流れで分かりやすく描写されていて、孤独を深める理由が心に響く。それ故に真摯に関わってくる主人公に、彼女が少しずつ心を許す描写にも説得力が生まれるのです。 しかしここで、一つの謎が生まれます。 なぜ主人公は、彼女に関わろうとするのか。 正義感や同情ではない。ただ相手を知りたいと強く願う主人公の動機は……私は誰かと仲良くなりたいと思う時、実はその人に理由無く、目を惹かれてはいなかったかと思い返す。 彼女との出会い、習いに行っていたピアノの女性教師の結婚……そう、これは間違いなく、百合の物語なのです。

あくまのまま

魔力禁止! 悪魔にママは難しい #1巻応援

あくまのまま くずしろ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

魔界の悪魔を呼び出した、小4の桜。悪魔セーレ(男)に魂を差し出して願ったのは……「ママになって!」 ……悪魔に頼む事じゃない! 悪魔セーレにしてみたら、今迄に考えたことも無いケース。そもそも何を求められているのかも分からず、母親と死別していて母子関係が分からない桜の、曖昧な願望に振り回される。 何か頼まれると、強力な魔力と悪魔の価値観でダークに張り切るセーレは、「そうじゃない!」と桜に突っ込まれる。色々分かっていない悪魔が悪いようで、突っ込む少女も賢いが何かズレてる……?というヘンテコなやり取りが、凄く笑える。 セーレと桜の「二人の」契約は、桜が独断で行ったため、さらに面倒なことになる。次々と増えていく登場人物……!その都度、割ときちんと対応していくセーレだが、悪魔の凄みが隠しきれず、結果ツッコミどころ満載! セーレが家事面でも精神面でも、桜と家族を助ける存在になるのかどうか……先行き未知数のかなりぶっ飛んだ、悪魔男子の〈継母〉コメディ。桜の寂しさも描かれ、人間の機微と「察する」ことを覚えつつあるセーレの対応力に期待! (去年の作品ですが……2020年5月時点で次巻が未定なので応援!)

永世乙女の戦い方

女流棋士として普通なのが、むしろ良い

永世乙女の戦い方 くずしろ 香川愛生女流三段
六文銭
六文銭

同著者の作品「千早さんはそのままでいい」が好きで、将棋マンガも好きだったので、ある種流れで読んでしまったが、いい作品に出会えた。 女流棋士を題材にした作品だが、特に気に入ったのが、主人公がその業界ではいたって「普通」な感じなところ。 もちろん主人公になるくらいなので、ある種センスみたいなものはあるようだが、神童だったとか、業界から一目おかれるズバ抜けた才能があるとかない。 なんなら奨励会に通う年下に、ハンデをもらうくらいだ。 伝聞推定だが、将棋界とは、幼少の頃から化け物みたいな強さでしかプロにはなれないし、ゆくゆく生き残っていくにはそれ以上でないと厳しいと聞いているなかで、主人公の能力はいたって平均値(ちょっと強い?)くらいの印象しかない。 ずっと続けていくのかも不明だ。 ただ、将棋を教えてくれた憧れの女流棋士と指したい、その一心のみで指している。 この普通なのが、なんとも良いんです。 将棋よく知らない一般人と目線が揃うというか、特に女流はぬるま湯とか腰抜けとか、この普通さに女流の現実を切り込んできちゃうのもいい。 そんな主人公の香が、これからどう化けていくのか、そのきっかけは何なのか、将棋界における女流の現実と、どう立ち向かうのか? 色々、今後が楽しみな作品です。