※ネタバレを含むクチコミです。
夜の東京を駆るモグリ(!)のタクシー運転手「ミッドナイト」。彼が乗せるのはなぜだか毎回ワケアリの乗客ばかり。色んな人が居るんだな…という点では『ドキュメント72時間』とか『家、ついて行ってイイですか?』的な楽しみ方も出来るかも。 単純にお客さんを乗せる以外にも陰謀や犯罪に巻き込まれるエピソードも多いので、カーアクションも見所の一つです。 ミッドナイトが乗る相棒のタクシーはボンドカーやマッハ号のように特殊機能が満載のロボットカーです。防弾機能はもちろん車体から「5本目」のタイヤが飛び出たり、アクロバットなワクワク仕様。そんなタクシーがあるか!という感じですがやっぱりこれは嬉しいですね。 各話完結で読みやすいですがレギュラーキャラも魅力的で、なんとブラック・ジャックも登場します。モグリ仲間として! 脳死状態になってしまったミッドナイトの「ダチ公」マリを診察するなどなかなかの活躍ぶりで、衝撃的と言われる最終話にも重要人物として登場しています。 個人的な推しキャラは密かにミッドナイトに想いを寄せる運送会社の女社長カエデちゃんなのですが、これもまた最終話の展開に胸が締め付けられた次第…。 きちんと調べてはいないですが、最終話が収録されている電子書籍はおそらくこの文庫版だけだと思います。単行本に収録されなかったのは手塚治虫公式サイトによると「あまりにも意外だったため」とのこと。 確かに今読んでもかなりインパクトのある結末でした。 https://tezukaosamu.net/jp/manga/480.html 軽々しいことは言えませんけれども百合作品が好きな人は今こそミッドナイトを最終話まで読むべきなのではないだろうか…というような少々勢いづいたことを言ってしまうくらいのパワフルなストーリーテリングを楽しめる作品でした。
ブラック・ジャックがカワイイ女子中学生になっちゃった!テヅコミシリーズ初めて読みましたが面白かったです。 登場人物はお医者を目指すクロミ、死神を名乗る中二病高校生キリ、破天荒男子ピノオの3人。大胆すぎる改変だ…。本家のシリアスさはどこへやら、キャラがキャッキャするようすが最大の魅力かと。 本作のテーマは家族です。 クロミ、キリ、ピノオ。彼らは三者三様に家族をめぐる寂しさや孤独感を抱えています。賑やかな画面とは裏腹にどこか寂しげな雰囲気が流れているのが、ただのカワイイパロディに終わらない味わいに繋がっていると思います。 ブラック・ジャックは医療を通じて人を救ってきました。一方クロミたちにはそんな力はありません。それでもみな、それぞれのやり方で誰かを助けようとしているのです。 「なぜブラック・ジャックを女子中学生に?」という問いにはあとがきで七野ワビせん先生が応えているのですが、個人的にはこちらもじんときました。こういうifはいいですね。
古代中国の遺跡から発掘された巨像。この像こそが超能力によって操れる巨大ロボ「燈台鬼」です。巨大ロボものも描いてたんだ…という素朴な驚きから読んでみました。 燈台鬼を手に入れようとする邪悪な少年、珍鬼の目線で物語が始まる構成が新鮮で、展開が予想できないドキドキ感が序盤にはあります。 主人公、貫一が登場してからはゴブリン公爵と名を変えた珍鬼と燈台鬼を奪い合うのがメインテーマ。タイトル、『燈台鬼』じゃなくて敵の名前なんだっていうのもなんだか面白いですね。 燈台鬼に念を飛ばし動力源となるのはヒロインの愛愛ですが、肩に乗って指示を出し実際に「操縦」するのは貫一です。この辺りの役割が分かれているのもロボものの妙味を抑えてあって楽しい。 破壊の化身として作られた燈台鬼が正義の心に目覚めたり、敵に機体を乗っ取られたり、ライバルヒロインが登場したりと今に連なるロボットアニメのスタンダードが大体描かれているのが圧巻で、総理が燈台鬼の対応に手をこまねく様子なんかほぼ『シン・ゴジラ』ですよ。展開もギミックも全く古臭くないです。(もしかしたらロボアニメが変わってなさすぎるのかもしれないけど…) 後半の見所は何と言ってもゴブリンが開発した対燈台鬼用の人工ロボイドとの戦いです。海洋油田プラントでバトルが繰り広げられるのと、ライバル機らしく黒色なのがポイント高い。 クライマックスが少々駆け足かつビターなのは好みが分かれそうですが、これでもかと言わんばかりのロボットものの魅力がたっぷり詰まっています。 ロボアニメ好きな人に感想聞いてみたい作品です!
手塚治虫で好きな作品ってなに?トークをした時に「アドルフを告ぐ」と言う人が必ずいるじゃないですか。なぜかやけにツウっぽく見えるんですよね。ずっと気になっていたのですがようやく読みました。面白い!ですが、私の一番はこれじゃないな…というのが率直な感想です。 ヒトラーの話というのは知っていましたが、他に2人のアドルフが登場する、物語の半分は日本がベースになっている、中東戦争まで描かれている…などなど、あまりのスケールの大きさに驚きました。それにミステリーとしても人間ドラマとしても読み応えがすごいんです。どんなに風呂敷を広げても最後まで面白いってまさに神業ですよね。私が読んだ単行本には手塚先生のインタビューが収録されていて、もっと描きたいエピソードがあったとおっしゃってましたが、もう十分すぎるくらい完璧ですよ…!と思いました。
いつもの和田ラヂヲ先生といった感じが逆にいい。テヅコミの人も火の鳥を誰にお願いするかは相当迷ったんじゃないかと思いますが適任でしたね。和田ラヂヲ先生って他の漫画でも芸能人をネタにしたりしますが、ちゃんとリスペクトを感じるので好きです。正直に言うと自分は火の鳥と全く関係ないとこで一番笑ったかな…。
手塚治虫の名作中の名作です。医療ものの漫画は好きなのでいろいろなものを読み漁りましたが、最終的にはブラックジャックのような名作にかなうものは無いのではと思わせられます。社会に対する風刺も含まれていて、単なる医療ドラマというより、さらに奥深い世の中の病巣までえぐり出すのが面白いです。
※ネタバレを含むクチコミです。