幽霊の陰謀
※ネタバレを含むクチコミです。
なかなかショッキングなタイトル。イッチこと市郎くんは夜の街で心霊現象や謎の少女に出くわして以降、身の回りで不可解なことが起こるようになり、相談相手の記者も謎の死を遂げ…。という導入は本格ホラーな趣ですが、中盤以降はかなりトリッキーです。
頻発する心霊現象の正体は死後世界に生きる幽霊たちのしわざで、死後世界ではなんと戦争が起こっており、兵力確保のために現世から大量の死人を集める工作活動が行われていることがわかります。
イッチが出会った謎の少女も実は幽霊のくるみちゃんで、死後世界からその身を狙われていたところを助けたことで、イッチ自身も命を落とし幽霊としてふたりで死後世界の問題に関わっていくことになります。
ホラー、オカルト、サスペンスとさまざまな様相を見せる本作の中で、死後世界と現世両方の事情に翻弄されながら紡がれるふたりの愛が物語を貫く芯になっていくのが見事です。
終盤、死後世界から難民として現世に「亡命」してきた大量の幽霊を日本は持て余すことになります。幽霊が社会問題になってしまうというのも皮肉ですね。
そのような状況で幽霊たちは人の居ないアマゾンへ移住する者と現世に転生する者とに分かれ、イッチとくるみちゃんも「生まれ変わってもきみを見つける」と誓い転生を果たします。エモすぎる約束だ…。
そんな流れから個人的に一番の驚きだったのがラストシーン。見ず知らずの男の子と女の子が視線を交わすのです。一台の電車が駅のホームに入ってくるところで。
ここで2016年に公開された新海誠監督の大ヒットアニメ映画『君の名は。』のことを思い出してほしくてですね…。鑑賞済みの方はピンときていただいたかもですが、『君の名は。』でも駅のホームで男の子と女の子が出会うわけなんです。
うまく説明できないですけど『君の名は。』と『日本発狂』、両作チェックすることで1974年と2016年の隔たりが一瞬で埋まる…のではないかなと思います。手塚作品はいつまでも色褪せないみたいな言い方はよくされますが、その意味を言葉でなく心で理解できました。
小ネタとしては赤塚・藤子・石森というどこかで見たこと聞いたことある人たちが編集部員として出てきますよ。
深夜の街を亡霊たちが行進する!?市郎少年はふとしたことから、現世と来世とを行き来する不思議な少女と出会った。“あの世”で着々と準備が進められている陰謀とは何か!?夏の夜に巨匠が贈る怪奇ロマンの世界!
深夜の街を亡霊たちが行進する!?市郎少年はふとしたことから、現世と来世とを行き来する不思議な少女と出会った。“あの世”で着々と準備が進められている陰謀とは何か!?夏の夜に巨匠が贈る怪奇ロマンの世界!