ワカコ酒

猫娘的OL様の一人酒

ワカコ酒 新久千映
名無し

OLとして仕事も充分にこなし、 チャンと彼氏もいる(らしい)。 しかし「お一人様」で飲むのが好きなワカコさん。 そういう主人公の漫画だと聞いていたので 「カワイイOLなのに実はオヤジ吞みが好きな  ギャップありキャラ」 の漫画か、と思っていた。 読む前は。 そして読んだ感想としては カワイイ面もあるのだが何か違う。 オヤジ吞みに近い感じはあるが、どこか違う。 そう感じた。 なんせ猫娘(by水木しげる)かと、と思うほどの 目玉が大きいキャラで、その猫目が 更にでかくなったりニヤリとした感じの半眼になったり、 まさに猫が眼をつむったように糸目になったり。 なので、通常で言う「綺麗」「カワイイ」とか、 そこから生じる「ギャップがおもしろい」 というのとは少し違う感じがした。 カワイイといえば・・いえなくもないが。 酒も肴も本当に好きで、 チャンと敬意を払いつつ味わっている。 だが時々、料理や、酒を味わう場にたいして いい感じに「高飛車」だったりする(笑)。 さあ、私を楽しませておくれ!みたいな 部分を感じることがある。 わりとSMでいう隠れSみたいなキャラ なのかもなあ、とも思った。 カニ味噌を食べて 「~は旨いのう」 なんて、ただのカワイイ人は絶対に言わないし(笑)。 けれど、作者の新久先生が猫好きだとわかって、 隠れSというよりは ワカコさんはそのまんま猫なんだ、と思い至った。 美形とか綺麗ではないが、カワイイ。 仕草や感性が独特っぽい。 そして少し、ツンデレのツンの部分が隠し味。 あー猫が一人飲みしたらこんな感じだろうな、 こんなことを考えながら吞むんじゃないかな、 と思い至った。 本能の導くままに酒を肴を味わい、 時に目を見開き、時に目を細め、 時にキョロキョロし、 時に少しだけ上から目線になり、 そんな、猫みたいなカワイイ哲学者が 酒と肴を楽しみ、味わい、考える。 それがワカコ酒かな?と思った。

長い道

すずさん、道さん

長い道 こうの史代
影絵が趣味
影絵が趣味

映画化大ヒットの『この世界の片隅に』や『夕凪の街・桜の国』などの広島を舞台にした連作で名高いこうの史代ですが、今回紹介するのはそんな彼女の初期の作品である『長い道』です。 舞台は戦時でも広島でもなく、業田良家の『自虐の詩』にも似たちょっとダメな感じの新婚夫婦を短編連作形式で描いているのですが、至る所に後の広島連作に通ずるモチーフやエッセンスが出てくる出てくる。『長い道』はこうの史代の原石の宝庫と言っても過言ではないかもしれません。 スターシステムを採用しているので『この世界の片隅に』のすずさんと、『長い道』の道さんは同じ顔なのですが、二人の共通点は顔だけでなく、それぞれの世界の捉え方、ここにもひとつあると思います。すずさんや道さんの目からはいったいどのように"この世界"がみえているのでしょうか。 なぜ、こうの史代がすずさんや道さんのような人物を主人公に選ぶのか、そこには彼女が座右の銘にしているというアンドレ・ジッドの言葉「私はいつも真の名誉を隠し持つ人間を書きたいと思っている」に深い関係がありそうです。こうの史代の世界にやられてしまった人はジッドの代表作のひとつ『田園交響楽』もおすすめです。

モブ子の恋

誰かの大切な秘密を知ってしまい陰から応援したくなるそんな感じ

モブ子の恋 田村茜
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

ここまでひそやかで奥ゆかしくて優しく見守っていたくなる恋は久しぶりだ。 大学生になって同じスーパーでバイトを続けて1年。 モブ子は控えめで大人しく同僚の誰からも連絡先を聞けてなかったりする。 そんな中、自然と目で追ってしまうのは同い年で困ったときにそれとなく助けてくれる入江くん。 まだ恋と自覚できないような淡い想いを抱いて、バイトに精を出す。 たまらない。 コミュ障と片付けてしまいたくないような、他人を思いやれるがゆえに控えめになってしまう様も見ていてもどかしくて仕方ない。 が、それがいいのだ。 入江くんもまた、そんなモブ子を暖かい目で見つめ、気遣っている。 なんとも前時代的とも言えるこの言葉にしない距離感。 お互いに踏み込まない。 踏み込まないが、その平行線はとても暖かいのだ。 それとなくいる。 それとなく見ている。 意識し合ってるのにお互いそれには感知できず。 ああ、もどかしい! でも、僕は見守ることしかできないのです。 完全なる蚊帳の外。 僕自身、イケイケな恋はしてこなかったので、モブ子と入江くんに感情移入しつつも、どうにか背中プッシュしてくれと新人ちゃんにも感情移入できるいう楽しい読み方ができている。 今後どうなっていくのか楽しみ。