岩手県の動物園に勤める獣医さんのお話。主人公の星野はケガをした動物の痛みがわかる特異体質の持ち主ですが、物語にファンタジーの要素はそれほど無いです。それよりも動物と向き合うとはどういうことかを現実的に学べる漫画だと思いました。ペット医療と違って動物園医療はまだまだ治療法が確立されていないことが多く、獣医さんそれぞれが試行錯誤して治療をしているということを初めて知りました。読むと動物園の印象が変わります。それと同時に星野については急病になった先輩獣医の代わりに赴任してきた津川との人間同士の話も描かれています。津川は人に対して冷血な印象ですが動物達に関わることにはとても熱いです。怒ると津川弁になるなど根っからの悪人ではないことは分かりますが、彼には明かされてない秘密がまだありそうです。表紙の絵が綺麗だなと思って手に取ってみたらとても面白かったです。
読んでまず、すごく丁寧につくっている作品だなという印象でした。 自分が好きな作家八十八良先生(「不死の猟犬」「ウワガキ」)のようなやわらかい絵柄で読みやすく、昨今のストーリー漫画に多い、飽きさせないようにやたらとヒキをつくり「がち」なものが、この作品にはない。 (ない…は言いすぎたが、無理がなく、仰々しくもない。) 悪く言うと地味なのかもしれないが、家族を題材とした内容とよく合っており、個人的に好感がもてる。 さて、大まかなストーリーだが、地元でワルだった父親と娘の二人の話。 母はすでに他界しており、いない。 素行不良だった父親のせいで、周囲から孤立してしまった娘は、いつしか父親を恨み、避けるようになる。 父親も父親で「過去は変えられないから」と、昔に何があったか話そうとしない。 そんな父親の煮え切らない態度が原因で大喧嘩をし、父親が出ていってしまう。 数日後、帰ってきたときは、なぜか赤ちゃんになっていて…という話。 赤ちゃんになった父親とともに現れた、死神を自称する猫サンシロウ。 なんでも彼がミスったことが原因で、父親の肉体までもリセットしてしまったという。 しかも、成長速度が早い状態で。 そんな感じで、子供に戻った父親と娘の、少し変わった親子の物語。 面白いなと思うのは、娘に育てられてワルだった父親はどう変わるのかということと、結果娘と父親の関係はどうなるのかというところ。 過去は変えられないという父が、子供からやり直し、何かを変えていくのか。 父親がいなくなったことで、少しづつ明らかになる、子供になる前の父親の素顔と、それに伴って起きる娘の心境変化。 親子関係を中心に面白くなりそうな仕掛けが色々あり、どう転ぶのか楽しみです。また娘が現実を受け入れながら、学校と育児をこなして成長していく姿は、素直に応援したくなります。 大変で、愚痴るときもあるけど、何だかんだ頑張ってしまう姿は、リアリティあってグッときます。 久しぶりに完結まで続いて欲しいと思った作品でした。
地元で泣く子も黙る伝説の元ヤンだった男に、祖母が狙われる話。 といっても、詐欺とか遺産目当てではありません。 恋愛対象として狙っている…とも安易に言い切れないのですが、元ヤンが幼い頃、祖母に世話になった恩返し的な感じで祖母を守る感じ。 全体として、孫の女子高生・律が、祖母と元ヤンの関係に何か裏があるのでは?と怪しんで、空回りして、ドタバタするコメディタッチの展開は、どこか懐かしい感じがします。 また、祖母の若い頃が愛嬌ある美人で、そりゃ元ヤンもなびくわと思うのですが、年老いても変わらず通い続ける(思い続ける?)元ヤンの姿勢に、なんともピュアで、見ていてほっこりします。 これも一つの愛の形ですかね。 資産とか容姿とかステータスではないところで、ひかれあう感じいいですね。 女子高生と元ヤンにフラグが立たないことを祈って、2巻を楽しみにしてます。
みなさまは「総合診療科」という言葉に聞き覚えはありますでしょうか? 病院の"診療科"といえば、「消化器内科」「脳神経外科」など、疾患の部位とそれに対応した処置で分けられた科が思い当たるかもしれません。それぞれの科ごとに専門的な知識や技術を有した医師が活躍している、というのはこれまでの医療マンガでも描かれてきた部分だと思います。しかし、実際の医療現場では、"熱がある"や""咳が出る"という誰にでも起こるような症状なんだけど治療をしても症状が改善されずしかも原因が分からない、もしくは、診断をした疾患では説明できない症状が現れた、ということが少なからず起こり得ます。そんな患者に対し、病気の部位に囚われず包括的に診療を行なって原因疾患を特定する、という目的で設置されているのが「総合診療科」です。 https://ho.chiba-u.ac.jp/section/soshin/index.html 総合診療専門医は、2018年から始まった新専門医制度において既存の18基本領域に加えた"19番目の基本領域"として新たに制定された専門医でもあります。 そしてその「総合診療科」の医師を主人公に描いたのがこの『19番目のカルテ 徳重晃の問診』という作品です。 かつて、NHKで総合診療医をテーマにした番組が放送されていました。 『総合診療医 ドクターG』 https://www2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009050706_00000 "ドクターG"と呼ばれる総合診療のプロフェッショナルが自身で実際に経験した症例をピックアップし、医師2年目の研修医3人と討論して疾患を絞り込んでいくという番組です。その番組で繰り返し強調されていたのが、「問診」の重要性。患者の発言、表情、動き、もしくは近親者による目線、そのどこかに隠されている手がかりを常日頃から行なっている「問診」で見つけ出す・見逃さないようにする。それがが総合診療医として大切なことだと伝えているように感じました。『19番目のカルテ』の第1話を読んだだけでも、診療の上で問診で"患者の声を聴く"ことの重要性が感じられると思います。 また、この作品の真髄は、実は第1話以上に第2話に隠されているのではないかと思っています。一話完結型の医療マンガだと、患者さんの病名を推測するという推理小説的な要素も含まれてきます。しかしながら、実際の医療現場においては"病名を当てること"が目的ではなく、それどころか患者さんが本当になにかの病気なのかもわからない。そんな中で、どうすれば患者さんの抱える問題が解決するのか、"人間を診る"ことで道しるべを立てていく、そんな総合診療医の特徴が見事に描かれています。 特別な技術や大掛かりな手術は登場しない、だけど医師という職業の専門性や凄さを感じられる、もちろん人間ドラマとしても面白い。そんな作品になっていくだろうと期待しています。 1巻まで読了
ピッコマで連載中の今作。祖父の運営している碁会所で手伝いをしている女子高生・安桜千鶴がその碁会所にたまたま来たお客さんであった少年・大嵩響矢と対局し、響矢が千鶴のある"秘密"を暴いたことから2人が囲碁部を作り、全国高校団体戦を目指すことになるという物語。 囲碁のマンガといえば少年マンガの金字塔である『ヒカルの碁』や、少女マンガとして初めて囲碁を題材にした『星空のカラス』などが思い当たります。今作の特徴はそれらの作品とは異なり「囲碁部」として大会出場を目指す、つまり"団体戦"として描いていることにあると思います。囲碁の対局自体はもちろん"個人戦"であり、一対一の真剣勝負であることから来る心理戦が魅力の1つです。そこに"団体戦"という横の繋がりを加えることで対局の心理も複雑になり、さらに恋愛要素も自然に絡んでいくことでより多層的な作品になっていくのだと思います。 電子書籍限定で発売されている作品ではありますが、作中の囲碁の説明やおまけページなどの解説も、囲碁のルールを知らない人にもオススメしたい作品です。 1巻まで読了
月刊少年シリウスでスタートした「3×3EYES」の高田裕三先生のSF超大作(決定事項)です。 1巻の帯にある通り、”集大成”と銘打ってるだけに、初っ端からエンジン全開。出し惜しみなくド迫力の戦闘シーンが繰り広げられ、導入の1巻から既にスペクタクルな展開になってます。 ストーリーは地球外からやってきた地球外機甲化AI「シュネルギア」という巨大なロボ(のようなもの)に乗る運命となった少年少女たちの物語。 シュネルギアを巡り、国連軍とアンバックという組織が激しく対立し、少年と少女は敵対する組織同士、シュネルギアに搭乗し戦う運命に巻き込まれてゆくのです…。 主人公・二ノ宮シロの見た目も性格も、歪んでなくて心優しい性格なのがいいですね。闇を抱えたどこかの乗らない少年と違って、駄々をこねないでシュネルギアにササッと乗ってくれるあたり、話が早いです。 シュネルギアはパイロットと協調する事で機能をアンロックし、あらゆる機能が進化していく仕組みになっています。 AIのような思考回路も存在しており、このAIの性格が非常に人間臭くて面白い。物語のサポート役として欠かせない存在となってます。 ちなみに、シュネルギアとは、ラテン語で「協調」を意味するそうで、作中で度々「シュネルギアしよう!!」「今を切り抜くためにシュネルギアを!!」という熱い決めセリフとして使われているのが、最高に格好いいのです。 まだ1巻が出たばかりですが、各話にめっちゃ気になるサブキャラたちが配置されていて、名前すら明かされていません。 おそらく他のシュネルギアの搭乗者となるのではないでしょうか。 次巻がとても楽しみです。
黒い森の奥深くにひっそりと住む少女ルーナ。彼女は普段は薬を作りながら3ヶ月に1度街で薬を売って生活をしていますが、実は彼女は人間の何十倍も生きている魔女で、しかも、触れたり歩いたりしたりした場所に毒キノコが生えてしまうことから"シャンピニオンの魔女"として恐れられている黒魔女だったのです。そんな彼女がある少年に恋をするところから物語が始まります。 毒キノコの設定など、ところどころに暗い設定が見え隠れする作品ですが、それを補って余りある可愛らしい絵柄と素敵なファタジーの雰囲気、そして要所で挟まる優しい口調の語りから、まるで絵本を読んでいるかのような感覚を受ける作品。そして、ルーナと彼女が後に恋に落ちる少年・アンリとの出会いがとても幻想的でかつ純粋さと切なさに溢れていて、絵本のような雰囲気も相まって、大人になってからこの作品に出会ったということが勿体なくすら感じる、そんな作品です。是非、この作品を手に取って、この物語、そしてルーナとアンリのやりとりから穢れのないピュアな心を感じてみてほしいです。 1巻まで読了。
上流階級層に紛れて密かに生きている「吸血鬼」の一族。彼らは永遠の命を持っていますが、人間に正体を知られないため、純粋に生き血を得るため、また吸血鬼の社会で権威を示すため、1人の吸血鬼に対して1人の人間を"餌"として飼い、生活の保証を与える対価としてその血を啜るという関係を持っていました。 主人公は吸血鬼の月子とその"餌"として月子に飼われることとなった花絵。花絵は天涯孤独の身であるために"餌"となったわけだが、実は野心的な性格があってこの状況を利用しようと虎視眈々と伺っている節があります。一方の月子は以前の"餌"であったフミという女性が3年前に亡くなり、花絵に冷たく当たっているのもどうやらその影響がありそうな様子。 吸血鬼と人間、永遠を生きる月子とやがて寿命を迎える花絵。この2人が様々な意味で不均衡なパートナーとなったことでお互いに心を通わせ合っていくという物語です。 そしてこの物語は実はこれだけではありません。月子と花絵以外に、かつては名門だったが現在は厳しい家計の家庭に生まれた櫻子とその餌の桐夫、親が威厳に厳しい家庭に生まれた永一郎とその餌の少年・瞬という2組のパートナーが描かれます。 つまり、同じテーマを換骨奪胎しながら、女性×女性、女性×男性、男性×男性という3通りの組み合わせが描かれており、それを全て1冊で堪能できる作品なのです。表紙を見ると百合マンガっぽく見えるのですが、BL好きにも、もちろんストレートな男女の関係の物語が好きな方にも薦められる裾野の広い作品です。 また、この3組の物語は実は繋がっており、それぞれの物語を駆け抜けた後、最後に月子と花絵の物語に戻ってきて結末を迎えます。3組6人の人生を描きながらたどり着く結末は切なさもありつつも希望に満ちていて、強く心に残るものとなっています。 調べてみると作者の吉田了さんは別名義でBL作品を1作出されていてこの名義では初の単行本の様子。また、コミックジンガイという見るからにニッチなテーマを扱ってそうなレーベルで連載されていた作品ということもあり、私も表紙買いするまで全く知らなかった作品なのですが、このマンガ家さんのことは今後絶対追っていこうと思える、魅力のたくさん詰まった作品です。 全1巻読了
令和2年でイチオシしたくなるような、読めば絶対ニヤニヤしちゃう魅力を本作は持っている! 人間は恋愛対象外、蛇にしか恋愛感情を頂けないことを隠しながら生きてきた学園のアイドル的女子高生・財部つくしが、なぜか新任教師の加賀美肇に恋してしまうというラブコメディ。 ファーストコンタクトで人が恋に落ちる瞬間を読者が目撃してしまうのけれど、なぜ好きになってしまうのか……というのはもちろん読んでいけば分かる。異種間ラブコメと謳っていることから、色々と察して欲しい。 ただ一言、**ヒロインの嗅覚が凄すぎる……(笑)** 自分の感情を確かめるために、先生をグイグイ押していくヒロインの姿は可愛いし、自分の感情の理由を自覚してからはさらに推していくヒロインの可愛さは無限大。 フェチズム全開で頬ずりしようとするわ、嬉々として舐められようとするわ、タイトル通りで押しまくり。 駄目でも引かない、前進あるのみ! ファーストインプレッションでヒロインに抱いた優等生的なイメージが、読み進めていくうちに崩れていく。 **学園で被っていた仮面など、「好き」というエネルギーの前にはあっさりと剥がされてしまうのだ。** 舐めるという行為が、実は教師の加賀美に取っては大事な行為なのだけれど、JKを舐めるというあまりにも非日常的な光景(というか普通なら教育委員会案件)が、時にえっちな雰囲気があったり、邪魔できないような尊い雰囲気が漂っていたり。 先生はペロリスト(舐める人)として照れを持つ稀有な存在だし、つくしちゃんはペロラレリスト(舐められる人)として反応が完璧。 舐めたい人と舐められたい人で、需要と供給が見事に満たされている!WinWinの関係性なのが素晴らしい(!?) 舐めるという行為にこんなに魅了されるのは、かつてアフタヌーンで連載していた『謎の彼女X』以来と言っても過言ではない(これもヒロインのよだれを舐める良い漫画なんだ) **ヒロインが作った手料理よりも、ヒロイン自身が一番美味しいというから、先生も読者も困ってしまうんだよなあ!!!(笑顔)** まさにタイトルに書いた、「君が1番美味しいラブコメディー」が嘘ではないことが、読んでもらえれば絶対に分かる。 読み終わった頃には、すっかり胃袋を掴まれてしまっているはずだ。読者はつくしちゃんを舐められないので、熟読して胃袋を満たすしかない! **つくしちゃんが美味しく食べられる様(嫌らしい意味ではなく)を、ぜひ楽しんで欲しい。** また、めちゃくちゃ押しまくるつくしちゃんだけど、実は赤面シーンが多いのも大きな魅力。 赤面しているヒロインは人類の文化遺産なのだ。押して押して押しまくりながら赤面するつくしちゃんを、みんなで堪能しよう! **訳アリ高校教師✕訳アリ女子高生=ニヤニヤ必須のラブコメディ** 令和2年以降の人類史では上記方程式が成り立つということを、漫画好きの全ての人間に、ぜひ提唱させて頂きたい……! 電撃マオウ2020年6月号の表紙のつくしちゃんも最高に可愛いことを、最後に報告してこの文を終える。
とても懐かしい感じがたまらない空気感の漫画でした! 舞台の田舎が、「夏休みにおじいちゃん家に来た」かのような景色が、私の心をくすぐってしまいます。笑 良い意味で、児童向けの漫画を読んでいるような感覚で、 でもものすごく感情と音が溢れている、表現力が素晴らしい作品でした! 全ての景色と言葉が、中学生の目線で語られていて、 それでもその素直な感情が、腐った大人になっちまった自分にもすごく響いてきます。笑 主人公の朝倉てん君が、すっごく初々しいくて可愛いんです!! 中学校一年生なのですが、ついこの間まで小学生だった年頃がそのまんまキャラクター性に表れていて可愛らしいんですが、 そこが今後、音楽を通じてどう成長していくのか楽しみです。 もう一人の主人公、都会から引っ越してきた表紙の女の子、りおちゃんも魅力的な人物です。 都会から田舎にやってきたちょっと強気な性格が、舞台の田舎とのギャップになっていて、そこがより作品の雰囲気を引き出しています。 「天才肌」なタイプのキャラクターではなく、年相応で素直な性格の2人に、目が離せないです。 続刊楽しみにしています!!
心に傷を持つ冴えない教師と、女子高生との心の交流を描く本作品。五十嵐先生はこういう キャラを使ったお話が多い印象。 登場人物も多くない中で、二人の関係性が どういう結末を迎えるのか・・と1巻でそういうのも、ナンバリングが「1巻」ではなく 「上巻」とでてるから(´;ω;`) まだ掲載雑誌で「短期集中連載」とも 「最終回まで後何話」とも言ってないのに このナンバリングは何とかならんか。 「2巻で完結」でいいじゃない! 個人的に五十嵐先生は「鬼灯さんちのアネキ」 から好きなので、早くも次作に期待! #1巻応援
藤原(中臣)鎌足の息子、史(ふひと)は朝廷で一官吏に甘んじていたが、大海人大王(天武天皇)より歴史書の編纂を秘密裏に命じられる。抜群の記憶力で叩き込んだ史文を、彼はある思惑から名を隠して口述する事に。しかし、倭語で筆記する者に正体を隠す為、止む無く女装をする。稗田阿礼と名乗る女装した史を見た筆記者の太安万侶は思わず言ってしまう……「愛(うつく)しい」と。 ◉◉◉◉◉ 歴史書とは「古事記」の事。梅原猛の「稗田阿礼=藤原不比等」説に「稗田阿礼女性説」を掛け合わせた感じのストーリーは、様々な秘密や疑問が折り重なった、多様な面白さが詰め込まれている。 女装を巡る秘密と太安万侶のドキドキはコメディとして。分かりやすくコミカルな神話語りは知的好奇心として。神話への思いがけない疑義は政治ミステリーへ……等々。 見所を沢山詰め込みながら、史の「中臣」への疑問は、「藤原」を巡る大きな秘密に向かって静かに、だが大きく進んでいく。 歴史を少し知っている人なら、家名を変えながら1200年もの間続く藤原家の権勢の、理由を知りたいと思うのではないか。始祖・鎌足の後、没落した藤原を再興した、史=不比等の存在にその根本理由があるとしたら……という大きな運命に、記憶力以外は割と真っ当な若者の不比等が今後、どのような心持ちで挑んでいくのか。 また一つ、嘘みたいな本当の様な、不思議に胸躍る歴史ミステリー(エンタメ要素もバッチリ!)が生まれてしまった……。
"ギャングース"では半グレの怖さと持たざる者たちの生活を"マーダーボール"では理不尽さに対抗するスポーツの強さを教えてくれた肥谷先生の最新作 引きこもりの兄を持ち自分自身もいじめられてる主人公の野星 筋肉ゴリラチンピラから逃げ切った動画がSNSに拡散されるとこから始まる物語です タイトルと展開からボクシング漫画だと思います 思うというのは、主人公はまだ1巻ではボクシングを始めていないからですがそれでも期待感でいっぱいなのは主人公のキャラが独特で魅力的だからです 野星がこれからどうなるかを見たくなるし野星のファンになってしまう漫画 半グレの怖さとスポーツの魅力が味わえるこの作品を是非たくさんの人に読んでもらって野星のファンが増えてほしいです
首都圏のとある町の本屋で働く作家志望の”緒川菫子”と童顔で口の減らない謎が多い少年”化野蓮”の書店員コンビが町に溢れる怪異に挑む現代怪異譚。 全人類に履修してほしい本当に良質なオカルト漫画です。 この漫画には現在怪異譚かくあるべしという内容に28歳短太眉むっちりヒロインという僕の大好きが詰まっています。 オカルト漫画は古くは"妖怪ハンター"や最近では”オカルトちゃんは語れない”等知的好奇心をくすぐり時に理不尽さを加えた、人間の想像力の豊かさを感じることができる素敵なジャンルです。そして、この漫画ではオカルトの楽しさを存分に楽しむことができます。 タイトルにあるようにこの漫画には”怪異”と”乙女”と”神隠し”が出てきます。 ”怪異”という言葉は広辞苑に『あやしいこと。ふしぎなこと』『ばけもの。へんげ。』と記載されています。つまり怪異とはあやしい現象やふしぎな事象、それに伴う化物のことを指します。僕の中で”怪異”というのは現象に近いと思っています。俗に言う妖怪や幽霊というのは恨みによる行動原理や意思があるイメージで怪異というのはそれらが起こす現象であったりを指す物だと思っています。 次に”乙女”とは本作の28歳短太眉地味むっちりヒロインの緒川菫子さんのことだと思われます。小説家の卵で1つめの怪異の被害者でもある絶対ヒロイン。 そして”神隠し”に関してはネタバレになりそうなので細かくは書けません。気になる方は2話で一端が出てくるので是非読んで確かめてください。 怪異の話をすると怪異に引かれるとよく言います。 この漫画を読んだ人は怪異の話をしたくなるので、皆たくさん怪異の話をして怪異に引かれて快適なオカルトライフを満喫してください。
ララ先生は、個人的にコミティアの新刊の中で一番楽しみにしていた作家さんですが、遂にデビューされました! 私がララ先生の作風で、そして『夏の魔物』で一番好きな点は、 人物たちが抱える、あらゆる方向性を持った複雑な感情が、全て綺麗に表情に現れているところです。 微妙に変わったり、コロコロと変わったりと、1コマ1コマ全て違う表情をしている人物の顔に、我々は釘付けになります。 『夏の魔物』の中で、主人公の佐藤さんと村田くんが複雑な感情を持っているのは、枷になっていることがあるからです。 それは、絶対に覆ることのない、女性アルファと男性オメガの、オメガバースの関係性です。 オメガバースには、オメガが弱者、アルファが強者という、カースト制が存在します。 (詳しくはググっていただけると助かります…笑) オメガは、ある時期に入ると、無条件にアルファを惹きつけてしまうので、恋愛・肉体関係においてオメガに選択権や決定権はないものとされています。 『夏の魔物』の魅力は、 "絶対的なカースト制がある世界観のもとで生まれたこの感情は、自身の体質≒階級(アルファ・オメガ)を排除したものだと信じたい(信じている)" という想いから溢れ出る、主人公たちの言葉や行動です。 オメガは無条件にアルファを引き寄せますが、その中でも特別惹かれあったアルファとオメガの繋がりを「運命の番」などと言います。 しかし、本作は違うんです…! 2人はアルファだから・オメガだから惹かれあっているんじゃないんです。 佐藤さんは、第一話で村田くんに告白するために空き教室に呼び出しますが、 そこで初めて自身がアルファであること、また、村田くんがオメガであったことに気づき、 「この気持ちは、ずっと恋だと思っていた。でも違った!私がアルファだから!」と混乱し、取り乱してしまいます。 ここで取り乱してしまうのも、今までの村田くんに対する感情は本物の恋であったことを信じている故なのです。 なので、読んでいてとても苦しいシーンでした。 村田くんも、オメガだから佐藤さんを受け入れた(ナニがあったかはもう是非読んでください…!!笑)訳ではないという気持ちを打ち明けるタイミングが、また絶妙なんですよね…!! 彼は佐藤さんに対して、少し投げやりな台詞や行動をとるのですが、それはまるで、 "自分は決してアルファ=佐藤さんに支配される側ではなく、アルファとオメガの関係性とは全く無縁のところで、佐藤さんを想っている" ということを遠回しに言っているかのようです。 そんな村田くんのちょっと生意気な性格と表情、是非みなさんにも見て欲しいです。 絶対虜になります…!笑 本作は、2020年4月現在、コミックシーモアにて先行配信されていますが、今後各電子書籍サイトでも配信予定だそうです。 もしかしたら、「オメガバース」というジャンルに抵抗を持っている方もいるかもしれませんが、まずは試し読みをしてみて欲しいです…! もちろん、オメガバースを知らなくても楽しめます。 この作品のあの空気感に触れたら、読者は「夏の魔物」に取り憑かれること間違いなしです。 …余談ですが、過去のコミティア出展の際に、Twitterで大童澄瞳先生から絶賛のコメントを頂いたことのある作家さんなので、 作画や構成力はピカイチです!
総合診療医に就任した徳重先生を中心に描かれている作品。 読んでいて、徳重先生の笑顔と患者さんへの向き合い方に心が温まりました。 医療の漫画は、学ふことも多いので興味深く読んでます。 徳重先生が、病院に更に根付いていく姿と患者さんにどのように向き合っていくのか、次巻発売予定の秋が待ち遠しいです。
心中したがりな文豪先生がトラックに轢かれて異世界転生したけども、そんなこと関係なく死にたい「センセー」はいつも睡眠薬をポリポリ食べている。 かの有名な文豪を彷彿させるセンセーですが、異世界でも女性を引き寄せてしまう運命なんですね…そしてその女性を破滅へ導く。 センセーの願いはひとつ、一緒に心中するはずだった「さっちゃん」を見つけ出し、今度こそ死ぬこと。(1巻の最後でさっちゃんは凄いところに転生してたことが発覚している) 瀕死の重傷を負っても案内役のアネットの魔法で治癒されてしまう。果たしてセンセーは死ぬことが出来るのか?そしてタマの本名は一体何なのか?
並行世界からの侵略者「壊獣」を、緩衝地帯の「壁の中」で殱滅する「防壁師」。共に防壁師を目指していた親友を壊獣によって喪った新更命乃は、親友の為に壊獣と闘うと決める。 闘い続けるうちに明らかになる事実、隠された秘密。バディを組む隊長が口にする「地獄」とは……? ♡♡♡♡♡ 『γ―ガンマ―』で悩めるヒーロー達×怪獣・怪人の闘いと姉妹百合を描いた荻野純先生。今作では並行世界からの侵略との闘いに相棒百合を掛け合わせて、最初から重い世界観を描いている。 人間と似た体型の巨大な「壊獣」、人工的で無機質な地形の「壁の中」、人知れず戦う防壁師……そこはかとなく暗く、冷徹な世界観に、悲観的な先行きを想起せざるを得ない。 世界や敵に関する重要な事は、毎話少しずつ明かされる。プロの防壁師になった命乃にも、少しずつしか事実は明かされない。そしてふと辿り着いてしまった真相が、命乃を混乱させる。 思いがけない事実に苦悩する命乃に、寄り添う隊長も何かを胸に秘めている。力を合わせて闘う、重い物を背負った二人の関係は、切ない程に尊い。 この先の世界と二人の関係に待ち受けるのは、悲劇か、それとも幸福か……命乃と共に秘された世界の全てを見るまで、気持ちが落ち着かなそうだ。 (個人的には、やはりタイトルの「セメルパルス(semelparous)という言葉が気になるところ。一回結実性、つまり多年草植物が生涯に一度だけ花を咲かせ、枯れてしまうこと。竹やリュウゼツランが有名。この言葉は世界観に関わるのか、防壁師の能力に関わるのか、それとも女性同士の関係性に関わることなのか……。他にも色々なワードから作品世界の空想・予想を楽しめる作品だと思います。絶対考察ブログとか書きたくなるやつです!)
最初は、彼女を異常に溺愛している男が主人公で、主従関係がある変なカップルの話だなと思って読んでいたら、実は彼女のキョーコさんの方にヤバすぎる秘密がありました。 新興宗教、かどうかはわからないけど、キョーコさんは地球滅亡を止めるため「太陽神」に捧げる生贄を10人集めないといけないという使命を背負っていることが判明します。さすがの岡田くんも「何言ってるんだこいつらは」とドン引きするも、結局はキョーコさんの為に自分が「生贄」を集めることになってしまう。 岡田くんからすると、自分はキョーコさんと2人だけで一生仲良く暮らしていければそれで良かったのに、厄介な事に巻き込まれてしまったなという思いかもしれません。ただ客観的に見れば、キョーコさんは太陽神を崇めている。そしてそのキョーコさんのことを、岡田くんは崇め奉っている(愛し方が恋人のそれとはかけ離れているように見えるので)。完全なる信仰の一方通行が出来上がっています。 これから、岡田くんはキョーコさんのために生贄を集めなければいけないわけですが、同意があったとしてもやってることは誘拐・監禁という立派な犯罪です。 どこかで我に返ってキョーコさんと縁を切る…なんてことはおそらくなさそうなので、気が済むまでキョーコさんのために突っ走って頑張ってほしいな。 一番笑ったのは、大家さんの圧倒的なパワー。2巻以降も出てきてくれるのかな。あと岡田くんの正気なのか正気じゃないのか判別の難しい表情が地味にツボ。
絶海の孤島にある全寮制の学校。そこに通う少女たちは、「不老」の研究のために孤島に集められたという。その研究に関わる数値として少女それぞれに「回帰値」という数値が付与され、その数値の大小によって学校内のヒエラルキーすら変わってくる。そんな閉鎖的な空間に迷い込んだ転入生・永見千剣(ながみ ちはや)。彼女の存在により少しずつ少女たちの日常が変化していく。 正直今のところまだ謎の多い世界観なんだけど、整った絵柄で全寮制の女子校の生活が描かれる中で「不老の研究」という不穏なワードと「回帰値」という数値でスクールカーストが形成されているという世界。ディストピアのような雰囲気が至る所で見え隠れしながらも、人間関係そのものは歪んではいるけど普通の学校でも存在しうるような上下関係に見える。この、整然とした部分と混沌とした要素が混ざり合って不思議な雰囲気を作り上げていて、今後も目が離せない作品。 1巻まで読了
そこは田舎とも都会とも言えない、でもとても"閉鎖的"な町。男は外で稼いで来るのが仕事で、共働きだろうと女が家事育児をするのが当たり前、そんな今や化石のような前時代的な考えが蔓延る町。そんな町が嫌で東京に就職し、東京のしがらみの中で疲弊してまたこの町に舞い戻ってきた38歳の女性が主人公。 現代の感覚でいうと主人公の考え方はもっともらしく見えるのだけど、それはその町の"普通"とはあまりにかけ離れていて、そこに38歳という年齢、そして一旦町の外に出たにも拘らず戻ってくることになってしまったという状況が重ね合わさって、主人公の苦悩は重くなり、しかし打開策の選択肢は少ないという息苦しさが作品全体にのしかかってくる。痛々しいまでの心理描写が心をえぐってくる、でも目が離せない作品。 この作品のテーマとなる部分はかつての少女マンガでは大きな主題として存在していたのかもしれないが、最近では直接的に扱われることが少し減ってきているように思う。"男性性・女性性"という概念のに対する閉塞感の打破がゴールだったものが、そこから一歩外へと踏み出し、"多様性"というより自由度の高い問題に触れることができるようになってきてるのではないかと感じている。 私自身にとってもこの物語は"フィクション"で、主人公に感情移入はできるものの、この町の"普通"に現実感を得ることができずにいる。でも、この主人公と同じような悩みを抱えている、この物語が"フィクション"ではない人も間違いなくいるはずで、そういう人にこそ届いてほしいと思う作品。 1巻まで読了
海外赴任する親についていくのが嫌で、実家を他人に貸して大家業をすることにした19歳の今野ゆめ。同居人のお姉さん達はいずれも重度の「ガチオタ」だった! 大家業に悪戦苦闘しつつ、お姉さん達に触発される無気力なゆめに、何か変化は訪れるか?発見の日々、始まる! ▼▼▼▼▼ 「マンバ」に集まる皆さんは、漫画オタクだったり、他にも何らかの濃い趣味をお持ちかと思う。 そういう人であれば、自分の趣味を誰かと共有したい……つまりは「布教」したいと思う一方で、あまり趣味を他人に押し付けて、相手に引かれるのが怖い、という引き裂かれた思いに悩んだ経験がおありではないだろうか? 主人公・ゆめとルームシェアする社会人の2人の女性は、それぞれ何らかのジャンルの「ガチオタ」である。そして、大家のゆめに対して最初は、その事を告げてはいなかった。 しかし、少しずつそれぞれの「推し」がバレていくと、オタクの彼女達はオタク語りが止まらなくなり、その勢いで布教活動を始めてしまう。強く推したいけど、反応が怖くて腰が引ける2人の布教の様子は、きっと多くの人が共感するだろう。 私はとても共感した! 主人公・ゆめは無気力で面倒臭がり。好きなものもなく漫然と生きてきたが、2人との同居で、まずアクティブな2人に惹かれ、関心を持つ。 今まで面倒臭いと切り捨ててきた、目の前の人への関心・共感。それを取り戻すために、興味を持とうという気になったゆめは、努力するうちに、ガチオタ2人が思いもよらなかった方向へ、足を踏み出す。 意外だけれどもしっくりくる、ゆめの「発見」に、読んでいて思わず「そうきたか!」と膝を打ってしまった。 自分で見つけたものほど、強く思い入れてしまうもの。巻末、ゆめが「自分で」見つける瞬間を見てしまうと、もう次巻の展開が楽しみで仕方ない!
推し作品の打ち切り。 それはマンガオタなら誰もが経験してるであろう。 『ディアボロのスープ』の打ち切りから早6年。 何と世界観をそのままに原作者をつけて帰ってくるというウルトラC。 また読めるだけでも嬉しいのに、前以上に面白くなってるって、そんな幸せなことある!?
結構淡々と描かれてるように思ったけど、話は面白いと思った。 “手”を題材にした話って初めて読みました。 子供の手を握ると、自分の手とは違う手が出てきて自由自在に操れる。 元刑事の鮫島は、旧友に頼まれて指定場所に行ったら知らない子供(ユキ)がいて、何故か逃げる羽目になるし、首相を殺した犯人にされるし、ユキが命狙われるしで事件に巻き込まれていくけど、一体これからどうなるのやらですね。 この”手”が一体何を意味するのか、ユキが何者なのか、裏が多そうなので気になります!
岩手県の動物園に勤める獣医さんのお話。主人公の星野はケガをした動物の痛みがわかる特異体質の持ち主ですが、物語にファンタジーの要素はそれほど無いです。それよりも動物と向き合うとはどういうことかを現実的に学べる漫画だと思いました。ペット医療と違って動物園医療はまだまだ治療法が確立されていないことが多く、獣医さんそれぞれが試行錯誤して治療をしているということを初めて知りました。読むと動物園の印象が変わります。それと同時に星野については急病になった先輩獣医の代わりに赴任してきた津川との人間同士の話も描かれています。津川は人に対して冷血な印象ですが動物達に関わることにはとても熱いです。怒ると津川弁になるなど根っからの悪人ではないことは分かりますが、彼には明かされてない秘密がまだありそうです。表紙の絵が綺麗だなと思って手に取ってみたらとても面白かったです。