あかねさす柘榴の都

スペインはグラナダ、世界遺産の街での新生活 #1巻応援

あかねさす柘榴の都 福浪優子
兎来栄寿
兎来栄寿

「天狗の赤い髪」、「ノウゼンカズラの夏」の福浪優子さんの初連載・初単行本が発売されました。 舞台は、スペイン、アンダルシア地方のグラナダ。『茄子 アンダルシアの夏』でご存知の方も多いかもしれませんね。 グラナダはスペインの南端にあり、街全体が世界遺産となっている場所。作中ではアンダルシアが大好きでバルセロナから夏になる度に来る、という人物も登場します。しかし、東端にあるバルセロナからは電車で11時間ほど掛かる場所。日本だと青森から山口まで電車で行くような感覚でしょうか。 グラナダは歴史があり自然も多く美しい街で「いつか移住したい」と語る夫婦には、かつて世界遺産に月1以上で通ってそこの自然と街並みを愛しすぎて移住した身として深く共感しました。 そんな余談はさておき、本作は両親を亡くした14歳の少年が叔母の住むグラナダに移住して新生活を始めるという筋書きです。 美人でスタイルも良くてぶっきらぼうで「強い女」感がビンビンの叔母さんですが、主人公に対しては確かな優しさを感じさせてくれます。 見知らぬ土地で少しずつ色々な人たちと関係性を築いていく様子や、慣れないスペイン料理を苦労しながら作って食べる日常風景は見ていて癒されます。ガスパチョやシナモンレモンプリンはとても美味しそう!福浪優子さんの絵柄がまたテーマにピッタリとハマっています。 現代のスペインをメインの舞台にしたマンガというのはあまり多くないのでそれだけでも面白く、このアンダルシアの風を感じる作品をもっともっと読みたい! という欲求に駆られます。いつか実際に行ってみたいですね。

ごくちゅう!

きらら系に擬態したゆるアングラ日常もの #1巻応援

ごくちゅう! 草下シンヤ こんぱる&ふじしまペポ 雨宮
兎来栄寿
兎来栄寿

刑務所生活は様々なマンガで描かれていますが、その中でも最もかわいく、しかしリアルでミニマムな事柄まで女囚の実態を面白おかしく描写しているのはこの作品でしょう。 独居房から雑居房に転房になった主人公うらら(罪状:大麻取締法違反)を中心に、目つきが悪く不器用だけど面倒見のいいひまり(罪状:業務上横領罪、スタイル抜群の美人な姉御・柚木(罪状:傷害罪)、大人しくてミステリアスな敬語キャラ・華(罪状:不明)のかわいい4人組が送る刑務所生活が描かれます。 日々の大きな楽しみである入浴時、お湯に浸かる際には外に手を出していないといけない理由であったり、獄中生活に大きな危険を及ぼす水虫にどう対処しているかなど、初めて知ることも多く興味が尽きませんでした。 幕間のコラムでは監修者の実体験が更に詳しく書かれており、コミュ障で集団生活が苦手という方の視点から語られる獄中生活は新鮮でとても面白かったです。 アングラに精通した草下シンヤさんも監修に入っているので、見た目に反したガチさは折紙つき。 「この世で最も聖地巡礼をオススメできない萌え漫画」という、usagiさんの帯コメントも大好きです。 彼女たちが一緒にいる時間は短い期限付きですが、ずっと眺めていたくなる魅力があります。

アイの歌声を聴かせて

読めば絶対「アイの歌声」を聴きたくなる! #1巻応援

アイの歌声を聴かせて 吉浦康裕 前田めぐむ
ANAGUMA
ANAGUMA

去年劇場で予告編を見てから公開をずっと楽しみにしていたアニメーション映画のコミカライズ作品です。映画を見るまでは…とマンガ版を我慢していたのですが、先日鑑賞でき、無事にドハマリしたのでこちらも読みました。結論を先に書くとめちゃくちゃよくできておる…。 出来れば前情報無しで触れてほしいと感じる作品なので、ストーリーについてはここでは特に触れませんが、マンガ版は適度に省略をはさみつつ、主人公のサトミの心情やシオンの思考にフォーカスされるシーンが細かく追加されていて、映画を見て好きになった人こそ嬉しくなる仕上がりだと感じました。 絵も本当にスゴくて、特にミュージカルシーンはシオンの衣装や歌詞の表現などアニメではできない描き方がされているので鑑賞済みの方は「おお…!」となるのではないでしょうか(なりました)。 個人的には映画を見てからマンガ版で良さを再度噛み締める…という楽しみ方がいいのかなと思いましたが、ちらっと読むだけでも劇場でもシオンの歌声を浴びたくなってしまう、そんなパワーを持ったコミカライズだと思います。 劇場公開中のこの機会にぜひ映画・マンガ両方とも楽しんでほしいです。

魔女ノ結婚

きっとあなたも百合好きドラゴンになってしまうことでしょう #1巻応援

魔女ノ結婚 studio HEADLINE
異世界スキー

魔女同士が親密になると魔力が向上する→じゃあふたりで同居したらいいじゃんそういう仕組みを作ればいいじゃん名前は「魔女ノ結婚」で!という「あ、これ天才の方が考えましたよね?」と言わざるを得ない設定が魅力の本作。 クールでデキ女のメリッサと頑張り屋の見習いターニャのふたりの魔女が「結婚」して日夜絆を育むようすに頬がゆるみっぱなしです。 ふたりのようすがいかに微笑ましいかは読んでいただければ“瞬”でわかると思うので今回は個人的に一番好きだった魔女の試練を司るドラゴンの話をしたいと思います。 魔女ふたりに互いの秘密を告白させてそれでも相手のことが好きかどうかを試すという試練。を司ってるドラゴンなんですけど、魔女ふたりが秘密をもじもじ打ち明けあうようすを拝むのが趣味ってマジでいいご身分のドラゴンじゃないですか? このドラゴン、披露する秘密の規模が小さいと「真実の絆炎(イグニス)の前でそんな子供だましが通用するとでも?」つってそれっぽく圧をかけてくるんですけど内実は「そういうんじゃないんだよな〜。もうちょいキュンな感じのエピソードあるでしょ?もっとちょうだいよ!」ってことじゃん!バラエティ番組のディレクターか!?っていうかどんだけ威厳がある感じを出してもお前は所詮もじもじする女と女を見たいだけのトカゲやろがい!!!!! ハァ…ハァ…すみません、熱くなりました。でも私という存在も突き詰めればこのドラゴンと同じようなものなのかもしれませんね…ただ尊い百合が見たいだけの……『魔女ノ結婚』を読めばあなたもきっと百合スキードラゴン(勝手にそのように名付けた)になってしまうはずです。みんなもドラゴンになっちゃおうよ。

2DK、Gペン、アフタータイム。 大沢やよい短編集

黒髪が強い社会人百合短編集 #1巻応援

2DK、Gペン、アフタータイム。 大沢やよい短編集 大沢やよい
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

①『2DK、Gペン、アフタータイム』 『2DK、Gペン、目覚まし時計。』のメインカップル・かえちゃんと奈々美ちゃんの後日譚。甘々な二人が嬉しい冒頭からの…… ②『その日、ナイトデートなので』 そつなくこなすWebデザイナーは、クライアントである観光課の女性に村の星空を見に誘われる。懸命な人に押されて新しい世界を知る……その時隣にいる人に、惹かれない訳がない! ③『テイクアウトできますか?』 配達先のカフェで、店員の女の子と出会う。作業着姿の自分を女の子扱いしてくる可愛い彼女に惹かれる一方、振り回されて翻弄される。振り回す子の理由のカワイさ、とても分かる。 ④『ぐらぐらプラトニック』 ノンケの女性をオトすためにレズ風俗嬢にレクチャーを受けたい女性。真面目な彼女はどこか不憫。ある意味良いキャストに出会ったよなぁ……救われちゃいなよ、と言ってあげたくなる。 ⑤『キャンパスにトラップ』 口うるさい大学の講師に、バイト先で出会う。私はレズ風俗のキャスト、講師は客。なかなかエロに行かないおかしさ。講師の動機、分裂する心がもどかしい。 ⑥『オフィス、先輩、キライな私。』 特に楽しい事もない仕事、人生。そんな私には、同じ派遣の谷原先輩があんなにキラキラしている理由が分からない……お察しの通り、『2DK』の登場人物、ルー子さんのお話。ルー子さんがこんなにポジティブに、人をエンパワーメントする人物としてクリエイトされるとはアメイジング!(ルー子さんリスペクト) ☆☆☆☆☆ 全作品で黒髪女子が、物語をドライブする存在として描かれるのが特徴的。それが最終話の、やる気の無い黒髪短髪女子にどう繋がっていくのか……考えてみるのも楽しいかも。