昨年で25周年を迎えた、「サイコロ給」などで有名な面白法人カヤック。そこで働くさまざまな人や事業を、『漫画 君たちはどう生きるか』の羽賀翔一さんや『左ききのエレン』のかっぴーさん、『半人前の恋人』の川田大智さんなど、さまざまな漫画家の方々が描いたマンガです。

15周年の際に公開されたものなど一部古いものも含まれていますが、内容としては今読んでも十分面白いです。

『ことばのパズル もじぴったん』や『冒険クイズキングダム』を作った後藤裕之さんの「存在感の作り方」では、後藤さんが円周率を42195桁暗唱して世界記録を樹立したり、夏休みの自由研究で人間が100時間寝ないとどうなるかの研究を自分の体を使って人体実験した話など、突き抜けたお話がまず面白いです。

マジカルラブリーの『スーパー野田ゲーPARTY』も後藤さんだったんですね。川田大智さんが描く「スーパー野田ゲーPARTYを作った男たち」も笑いながら読みました。(『野田ゲー』の中でも邪道バースは天才的だと思いましたし、全国大会も熱かったです)。

突飛なところはもちろんですが、地に足のついたビジネス的な部分の良さもあります。
「ゲームやサイトを作るだけがクリエイティブな仕事ではない」
「メールひとつにも思いと工夫をこめれば喜んでもらえる」
という、秘書を描いたエピソードなどは社会人にとって参考になる一節でしょう。

それを体現するかのように、別の話ではユーザーからのゲームへのお問い合わせに世界観を尊重し反映した回答をするという別の社員のエピソードが描かれており、「王が履いているパンツは何色か」という質問にも極めて真摯に答えていきます。

ゲーマーならお世話になったことがあるかもしれないLobiや、e-sportsの普及に向けての愛溢れるモチベーションなども読んでいて高まります。コロナ禍でオフラインの大会が消えても、オンラインで毎週大会を行い配信をして格ゲーコミュニティを熱くし続けたなどの近年のエピソードなども好きです。

総じて、楽しみながら仕事をするということの素晴らしさ・大切さを教えてくれる掌編が詰まっています。

現在多くの電子書店で無料で全編読めるので、この機会にぜひどうぞ。

読みたい
シャングリ=ラ

緻密に美麗に描かれる宇宙のディストピア #1巻応援

シャングリ=ラ
兎来栄寿
兎来栄寿

『テヅコミ』にも『メトロポリス』の二次創作を寄稿していたマチュー・バブレ氏が2016年に出版したディストピアSFです。先月に邦訳版が発売され、その電子版もこの度配信され始めました。 太陽が超新星爆発を観測しようとする青年からスタートするプロローグ。そこから100万年後のお話としてストーリーが始まるスケールの壮大さにまず惹かれます。 広大無辺の宇宙空間における、ちっぽけな人間にとってはあまりにも巨大すぎる現象も含めて、美しいヴィジュアルで物語られていきます。 バンドデシネらしい緻密な画風で、ほとんどのコマが背景までみっちり描き込まれているので物語への没入感を強く高めてくれます。コロニーの中の小さなユニットでの生活が見てとれるような描写など、好きです。 「音楽は? 文学 芸術…学問は? それは無から心の奥底から立ち現れる恩寵の輝き 人間は消費のみの存在ではない」 といったセリフに見て取れる言葉選びも好きです。 とある衝撃的なシーンと、そこで爆発する感情には大きく心を動かされました。どんな遥かな未来となりテクノロジーが進歩しようとも、人の人たる所以ら変わらないのはSFらしいテーゼを感じられるところです。 反物質、ホモ・ステラリス、アニマロイドなどさまざまなSF的単語が飛び交いながら、ドラスティックに進んでいくドラマに、気付くと夢中になってページを捲っていました。 ハードで骨太なSFを楽しみたい方にお薦めです。

それでも天使のままで 【単行本版】

仄暗い底で剥がされる心と魂の瘡蓋 #1巻応援

それでも天使のままで 【単行本版】
兎来栄寿
兎来栄寿

小骨トモさんの2冊目となる短編集です。 それぞれ発表時に話題になった「リカ先輩の夢をみる」、「それでも天使のままで」、「あの嫌いなバンドはネットのおもちゃ」の短編3作に加え、今回の単行本で先行収録となる「先生のクモのイト」の4篇が収められています。 「先生のクモのイト」は、「あの嫌いなバンドはネットのおもちゃ」に連なる作品となっています。 全体的な読み味としては、1作目の『神様お願い』と同様です。表紙絵のようにベースの絵柄は丸っこくてかわいらしいのに対して、剥き出しの″人間″が顕にされる中身の鋭利さたるや。 最初の「リカ先輩の夢を見る」からして、精神的に余裕があるときでないと食らいすぎるので読む時分とコンディションは選びたい作品です。果てしなく深い共感と、そこに隣接する絶望的な感情。読みながら魂が汗をかき血涙を零します。 1篇だけでも抉られるのに、1冊を通読したときの痛痒感といったら。 心の瘡蓋をガシガシと剥ぎ取られ、傷口をグリグリと穿られるような、そしてそれが痛みだけではなく何か他の感情をも催してくるような。 同じ経験をした訳ではないのに、どこか記憶の奥底にある罪悪感を喚起され撫ぜられるような部分もあります。 鋭敏なセンスが昏い輝きをもって溢れている短編集で、ダウナーな気分に浸りたい方やそうした作品が好きな方にお薦めです。

賭龍

52枚の札が見せる虚実 #1巻応援

賭龍
兎来栄寿
兎来栄寿

現在ラスベガスで世界最大のポーカー大会であるWorld Series of Poker(WSOP)が開催中です。毎年開かれているこの大会ですが、昨今は世界的なポーカー人気も高まっておりメインイベントの参加者も年々増加し、優勝賞金は今のレートだとおよそ16億円にもなります。 かくいう私もポーカーは好きで国内最大の大会でも好成績を残しており、その内WSOPにも挑戦しに行きたいと思っています。 そんなわけで、今までに描かれたポーカーマンガはほぼすべてチェックしており、新しいポーカーマンガが出たと知って喜び勇んで1話から楽しみに読んでいました。 山本神話さんは、前作の『グレイテストアンダードッグ』にもボクシングマンガでありながら数話にわたるテキサスホールデム回があり、またそれが面白かったので、今回新たにポーカーマンガを描くと聞いてとても納得感がありました。 何しろ、山本神話さんの描くキャラには色気があり、カッコいいし、美しいし、かわいいのです。鉄火場でのアツい駆け引きを描く際にも、クールなキャラたちが興奮を高めてくれます。 ポーカーはルールを知らなくても一瞬で覚えられる上に世界共通なのが長所で麻雀と違うところですが、本作もルールは解らなくてもまったく問題ないように作られています。 極端に言えば、ポーカーの駆け引きは「嘘」か「本当」かの二択。その緊張溢れるドキドキ感を読んでいてたっぷり味わえます。 解りやすく描かれているが故に、玄人からするとプレイラインなどは物足りなく感じる部分もあるかもしれませんが、それは現役の医師が医療マンガを読んで重箱のすみをつつくようなもので、大半の読者には問題ないでしょう。 個人的には、こうした作品がどんどん増えて行って、ポーカー文化が隆盛していくことで玄人も満足できる麻雀マンガにおける『ノーマーク爆牌党』のような作品もいずれ出てくることを期待しています。 この作品でポーカーに興味を持って始めてみようという方もきっといると思いますので、将来そういう方と楽しく卓を囲めたら良いなと思います。 なお、この作品に登場するCasino Live Tokyoは実在するお店で私も行ったことがあり、手軽に聖地巡礼もできるようになっています。興味があれば足を運んでみるのも良いでしょう。

アウターQ 弱小Webマガジンの事件簿【電子単行本】

面白いWeb記事のネタを求めて #1巻応援

アウターQ 弱小Webマガジンの事件簿
兎来栄寿
兎来栄寿

先日新たに「比嘉姉妹」としてカドコミでの連載も始まった『ぼぎわんが、来る』に端を発し映画化もされた「比嘉姉妹シリーズ」の澤村伊智さんによる小説を原作として、『十五魔女の最後の旅』や『レインコートキッズ』、また『宇宙よりも遠い場所』のコミカライズも担当した宵町めめさんが漫画を担当する作品です。 本作は、面白ければ何でもありのエンタメWebマガジン「アウターQ」でライターとして活動する駆け出しライターの湾澤陸男(わんざわりくお)が主人公。「新人ライターが食わず嫌いを克服する」シリーズを書き始めて3ヶ月経った彼が、新たにさまざまなネタを追っていく物語です。 私は原作は未読なのですが、あらゆることをテーマにすることができるこの設定がまず良いなと思いました。これが探偵などであれば、行く先々で事件が起きる体質が必要になります。しかし、Webライターなら自らさまざまなところに能動的に飛び込んでいける、しかもネタのためにどんな場所にでも行く必然性もある。如何ようにでもお話を膨らませることができて、各エピソードごとに違った味わいを生みながら楽しませることも可能で何とも美味しいなと。 Case.1の「笑う露死獣」では、都市伝説の正体に迫っていくことになるのですが、暗号を次々と解読していって真相に迫っていく展開にワクワクしました。読者も解読に挑戦できるようになっているのが面白いです。また、明かされる真実にも心動かされました。 そうかと思えば、Case.2の「歌うハンバーガー」ではまた違ったテイストで魅せてくれます。ナイフとフォークで食べる大きくて美味しいハンバーガーが食べたくなりました。綾辻行人さんにも絶賛されたホラーエンターテインメントの名手としての魅力が、本作にも溢れています。 一見カタギに見えないものの中身はとても良い人な編集長の八坂さんや、先輩ライターで顔も性格も良いものの会話においては指示代名詞連発でちょっと残念さを醸し出す井手さんなど脇を固めるキャラたちも魅力的です。陸男を初め、宵町めめさんのかわいくも少し影が見え隠れする画風とも絶妙にマッチしていると感じます。 個人的に特筆すべきはCase.3の「飛ぶストーカーと叫ぶアイドル」に登場する篠原亞叉梨さん。良き黒髪ロングストレートキャラです。ファンのことを「衆生」と呼称し、浄化・昇天させ極楽浄土へ送る仏教系アイドルグループ「ぱ☆GO!陀」、推せます。金剛杵型のペンライトとか振りたいですね。 今後もバラエティ豊かな調査対象に、いろいろな感情の揺さぶられ方をしそうで楽しみです。ホラー、ミステリー、オカルトなどが好きな方にお薦めです。

N

「N」へのカウントダウン #1巻応援

N
兎来栄寿
兎来栄寿

最初は中学生男子たちの肝試し。 その次は少女の授業参観。 暇を持て余したニートや、就活が終わった大学生など1話1話は独立していてありふれた日常から始まる、オムニバス形式で描かれた作品です。しかし、その日常はある瞬間から一変していきます。 すべてのお話に共通するのは、謎の存在「N」。バラバラの物語が、「N」に収斂していきます。 第1話「A」 第2話「B」 第3話「C」 と、アルファベット順に進行しながら、 第5話「E」 の次が 第7話「G」(7とGは鏡文字、目次でもこの部分だけ反転) で、その次が 第6話「F」 という構成で、その最後には 【第14話「N」まであと7話】 という死へのカウントダウンのような予告。 更には、単行本の最後に入っているおまけの部分も背筋が凍るようなものです。こうした演出も含めて、非常に良いミステリーホラーとなっています。 罪を犯したり禁忌に触れたりする瞬間の、胸の鼓動が早まり冷や汗をかくような心地が的確に描かれており、にことがめさんの作画も話に非常にマッチしていると感じます。 果たして、Nとは何なのか。 14話で一体何が起こるのか。 急激に夏感が出てきた最近ですが、こちらで涼を取ってみてはいかがでしょうか。

うちの母は今日も大安

素敵で前向きで偉大なお母様 #1巻応援

うちの母は今日も大安
兎来栄寿
兎来栄寿

私がありまさんを認識したのは、Twitterで公開されていたこの本のChapter1 第1話にある 「アメリカで事故ってハッピーバースデーを歌ったうちの母」 でした。 アメリカのスーパーの駐車場でバックしていたら、ショートカットしようとしたおじさんと衝突してしまい烈火の如く怒鳴り散らされたものの、「It′s my birthday」というフレーズを聴き取った筆者の母君が店員さんたちと一緒にバースデーソングを歌うと途端に機嫌が良くなり謝ってくれたというほっこりエピソードです。 本書は、そんな素敵な母君様の心温まるエピソードや人生を生きる上で大切にしたいことが詰まった1冊です。 夫の仕事の都合で行った慣れないアメリカで、言葉が解らないときにどうやって英語を覚えていったのか。 介護でしんどくなってしまったときにどう対処したのか。 子どもが元気がなくて学校を休んだときにはどうしたか。 さまざまな、身近にあるシチュエーションで輝く母君の言動に読んでいて心が解れ前向きになっていきます。 バイクの免許を取ったりフルマラソンを走ったり、いくつになっても新しいことに挑戦し続ける気概や、実家での本格的な擬似縁日開催を全力で楽しむ様子を見ていると「人生の達人」と呼ぶのが相応しい気がします。 私もどちらかというと全力で物事を楽しむ方で、そこに一緒になって楽しんでくれる人が集まってくれることが多くて感謝しきりなのですが、母君様には似た気質を感じて共感します。 他方で、 「好きなものをちゃんと持っておく」 「自分の人生を生きなきゃ」 「そもそも人に謝罪と感謝を求めてはなりません」 といった言葉は、心に留め置いて大事にしておきたいものです。 ありまさんが母君様の言葉や存在によってどれだけ助けられ感謝しているかも伝わってくる内容でした。 心を前向きに持っていきたい方にお薦めです。これを読んで、人生を大安にしていきましょう。

わたしって害悪ですか?~お花畑声優厨の場合~

推し活の光と闇の相転移 #1巻応援

わたしって害悪ですか?~お花畑声優厨の場合~
兎来栄寿
兎来栄寿

推しを推す。 それは、人の営みの中でもとりわけ尊いものです。しかし、何事も過ぎたるは及ばざるがごとし。その行為や付随する感情も、行き過ぎてしまうとむしろマイナスに働いてしまうことが往々にしてあります。 本作は、新米声優・土岐野カエデ(23)を推す会社員・美花(26)の推し活の物語です。 初めてアニメで主役を得たことで、露出が増えファンも増えていくフェーズにあるカエデ。しかし、そうなると必然的にアンチの声も目立ってきます。 本作ではSNSや配信コメント、現場などにおけるアンチの描写がかなりしっかりと描かれており、非常にリアルです。美花は大好きなカエデの活動に支障が出ないよう推し活の延長線上として、そうしたアンチに対する″駆除″活動を行っていきます。ファンは原義を辿ればfunではなくfanatic。光と闇は紙一重です。 ただ正直、美花の行為自体はやり過ぎであるとしても、そこで生じるモヤモヤとした気持ちには誰かや何かを強く推した経験がある人なら大なり小なり共感できるのではないでしょうか。 また、美花のそうした行為が生じている原因のひとつに会社のブラックさがあるのは現代社会の暗部だなと感じます。他の人より仕事が早いと待遇は変わらないのに労働量が多くなるので、生産性を下げることが最適解となる矛盾。昼休みまるまる使っても愚痴を言い足りない部長。そこで溜めたストレスが、推し活での快楽をより大きいものにして依存性を高めてしまう。 そんな美花の愚痴を嫌な顔ひとつせずに聞いてくれて、推し活の応援もしてくれて、抽選にも付き合ってくれる友人のゆずちゃんのような存在は大事にすべきです。主人公が幸せになるのは難しいかもしれませんが、ゆずちゃんには幸せになって欲しい……。 推す熱量の軽さの割に美味しいポジションを確保していてモヤっとするまりんちゃんや、同担で戦友感のある蘭之介さんなど、味のあるサブキャラクターも豊富で今後も楽しみです。 推しは推しても害悪にはなるな、という反面教師的な役割を担ってくれる作品です。

蝶と帝国

帝政ロシアに咲く血塗れの百合 #1巻応援

蝶と帝国
兎来栄寿
兎来栄寿

南木義隆さんが2022年に上梓した小説を、『病月』や『北の女に試されたい』の箕田海道さんがコミカライズした作品です。 赤の広場で演説するレーニンを主人公が暗殺しようとするところから始まる百合物語はなかなかないでしょう。 第1話は丸々カットバックとして使われます。恐らく1920年5月に行われた赤の広場でのレーニン演説の際。すべてを奪われた主人公キーラがその怒りを刃に込めながらも、それをどこに振り下ろすべきか迷いながらレーニンを標的にし、しかし秘密警察に防がれて未遂に終わり捕えられる寸前までが描かれます。1話では、まだキーラの名前も出ないのが特徴的です。まるで、歴史という大海の暗く深い部分で藻屑として消えていったことを象徴しているかのようです。 そして、第2話から舞台は1905年の7月、ウクライナ南部のオデーサ(元々は「オデッサ」と呼ばれていましたが、2022年3月31日から外務省によりウクライナ支援及び連帯を示すためロシア語ではなくウクライナ語に基づく読み方にするという方針で「キエフ」を「キーウ」、「チェルノブイリ」を「チョルノービリ」と呼ぶのと同様に「オデーサ」と呼ぶことに決められました)に場所を移して、本格的に物語が始まります。 美貌と輝かしい未来がありながら暗澹たる過去を抱えるお嬢様のエレナ。エレナの屋敷に仕える、捨て子で故郷も血縁者も持たない16歳のキーラ。世の不条理によって奪われ欠落した部分を互いに埋め合うように、情愛を交わし合う間柄のふたり。その破滅的で危うく、しかし艶やかな営みが狂おしく胸を焦がします。 16歳のころは誰かを憎んだり復讐の炎を燃やしたりといった感情もなかったキーラですが、やがて反ユダヤの機運が高まる中で横行したポグロムという悲劇が彼女を襲います。運命の皮肉と言うべきか、レーニンも実はユダヤ系の血を引く人間でしたが存命中はひた隠しにされていたという事実はキーラも知りえなかったでしょう。 きっと、そこに刃を突き立てられていたとしても本質は何も変わることはない。それでも、突き立てようとせずにはいられない。その身から血と共に溢れる衝動を止めることはでき得ない。人はみな大河の一滴であったとしても、その大きな流れに抗う。その切実な在り方に、強く引き付けられます。 この物語によくぞ箕田さんを抜擢したなと。この黯さと、それだけに止まらない情感の表現をするならば理想的だと感じました。あとがきを読んでも、非常に真摯にディティールにもこだわって描いていることが伝わってきますし、神は細部に宿っています。 今の情勢下であるからこそ、『戦争は女の顔をしていない』や『同志少女よ敵を撃て』などと併せて読んでおくべき作品であると感じます。

巻き添えで異世界に喚び出されたので、世界観無視して和菓子作ります

異世界で小豆を煮て生きていく #1巻応援

巻き添えで異世界に喚び出されたので、世界観無視して和菓子作ります
兎来栄寿
兎来栄寿

和菓子、好きですか? 私はケーキなどの洋菓子も好きですが、和菓子には和菓子の魅力がありますよね。これを書いている今日も、どら焼きを食べました。あんこは体に良い成分がたっぷりなのも嬉しいところです。 本作は、和菓子職人となり将来は自分のお店を持つことを夢見ていた24歳の小百合の物語。彼女は、異世界にもうひとりの「聖女」と共にイレギュラーで同時召喚されてしまい、一生をそこで暮らしていくことに。公爵家のセリウス・ラティオールに助けられながら、新たな世界での新生活を始めていきます。 一般的な中世RPG風の世界観ですが、魔物の血によって汚染された地には作物ができず世界的に食糧難になっているというのが本作の特徴です。 そんな状況下で、小百合は厳しい祖父に受けた教えを胸に、家名に恥じないよう自分にできることをなしていこうとします。小百合が基本的に素直で優しくて努力家という好感度の高い主人公で、推せます。 「異世界×和菓子」と聞いたら「1話から和菓子を作って異世界の人が気に入り感動〜」的なストーリーを想像しそうですが、本作ではそのような事情もあり、まずは元の世界での和菓子の材料に相当するものを探すところから始めていきます。そうした、地に足がついている丁寧な作劇に魅力を感じます。 食うに困っている民衆が多くいる世界で、甘い和菓子を頬張って幸せを噛み締める子供や老婆の姿には心が温まります。美味しいものをお腹いっぱい食べられるというのは、当たり前ではなく感謝すべき大いなる幸福なんですよね。 そして、本作のもうひとつの軸が、小百合とセリウスの関係です。こちらも一足飛びで男女の仲になるわけではなく、セリウスが自分にとって異性と関係を築く上で致命的であると思っていたポイントが、小百合にだけは当てはまらず特別な存在であることが解っていくなど少しずつ段階を経ていきます。 柔らかで優しいコミュニケーションを通して徐々に仲が深まっていく様子が何とも言えず微笑ましく、応援したい気持ちにさせられます。 大きな物語としては、クセのあるもうひとりの「聖女」の動向やおまけ扱いであった小百合に秘められたものなどもあり、お話の引きとなっています。 カバー下もとてもかわいく、和菓子好きとしては応援したくなる作品です。

ストアに行く
本棚に追加
本棚から外す
読みたい
積読
読んでる
読んだ
フォローする
メモを登録
メモ(非公開)
保存する
お気に入り度を登録
また読みたい
ハト部

ハト部

そもそもどんな活動をしているのか、名前以外はいっさい不明の謎の部活「ハト部」。ひょんなことから「ハト部」に入部した男子生徒が、個性豊かな部長先生や部員たちが巻き起こすドタバタ劇を通じて、パッとしない日常生活の大切さに気づいていく。「cakes」連載中から話題を呼んだ、漫画『君たちはどう生きるか』羽賀翔一の書き下ろしコミックが、待望の書籍化!

インチキ君

インチキ君

まじめな少年につけられたあだ名は「インチキ君」だった――。このクラスでは、全員があだ名を持っている。クラスのリーダー・根岸が彼にインチキ君というあだ名をつけたその日から、少年をとりまく空気は180°変わってしまった。インチキなんてしていないのに、インチキ呼ばわりされるインチキ君。表面的なイメージだけでものごとを見る危うさと、その裏にあるたしかなものを見る大切さを教えてくれる、羽賀翔一デビューのきっかけとなった一作。

ケシゴムライフ/羽賀翔一短篇集

ケシゴムライフ/羽賀翔一短篇集

マンガ家・羽賀翔一(はがしょういち)の短篇集。描きおろし作品「ZOOO」に加え、2011年に週刊モーニングで短期集中連載した「ケシゴムライフ」、『宇宙兄弟』の公式ムック「Weare宇宙兄弟」VOL.04~07に掲載した短編作品、2013年春に発表した面白法人カヤックをモデルに描いた「ならべカヤック」「追いぬきルーキー」を収録。

今日のコルク

今日のコルク

クリエイターのエージェント会社・コルクの日常を切り取ったマンガ、『今日のコルク』。コルクの漫画家・羽賀翔一がFacebookページで毎日更新している作品の、第1回~100回目までを収録しています。個性ゆたかなコルクの面々の、クスっと笑ってしまう日常をお楽しみください。

昼間のパパは光ってる

昼間のパパは光ってる

PRESIDENT NEXTにて2014/10~2016年5月『ダムの日』として連載していた作品。仕事とはなにか。“本当のヒーロー”になれるのか。“縁の下の力持ち”と称されることの多い土木業界で、仕事の意義を一つ一つ学んでいく若き主人公。働く喜びと苦悩、支える家族達への想いとは。ダム造りに取り込む若手技術者が葛藤を乗り越えながら成長していくビジネスドラマ。

漫画 君たちはどう生きるか

漫画 君たちはどう生きるか

人間としてあるべき姿を求め続けるコペル君とおじさんの物語。出版後80年経った今も輝き続ける歴史的名著が、初のマンガ化!1937年に出版されて以来、数多くの人に読み継がれてきた、吉野源三郎さんの名作「君たちはどう生きるか」。人間としてどう生きればいいのか、楽しく読んでいるうちに自然と考えるように書かれた本書は、子供はもちろん多くの大人たちにも共感をもって迎えられてきました。勇気、いじめ、貧困、格差、教養、、、昔も今も変わらない人生のテーマに真摯に向き合う主人公のコペル君と叔父さん。二人の姿勢には、生き方の指針となる言葉が数多く示されています。そんな時代を超えた名著が、原作の良さをそのままに、マンガの形で、今に蘇りました。初めて読む人はもちろん、何度か読んだことのある人も、一度手にとって、人生を見つめ直すきっかけにしてほしい一冊です。

半人前の恋人

半人前の恋人

【デジタル版限定!「少年ジャンプ+」掲載時のカラーページを完全収録!!】美術部員だからという理由で学校の備品作りを頼まれた進太郎。慣れない工具作業をしていると、すごく怖そうな女子がこちらを睨んでいる…! 彼女は進太郎のノコギリを取り上げると鮮やかな手つきで板を切り始めて…!? 職人女子×美術男子の青春グラフィティ!

まかろにスイッチ

まかろにスイッチ

ある日少年は目撃した。ゴツくてブスな“メガ澤”が究極の美少女に変身する瞬間を。メガネひとつでブスと美少女を行き来する女子高生を描く人気シリーズ「メガ澤」をはじめ、漫画ならではの手法で笑いと驚きをもたらす注目作、第1巻! 漫画誌・ハルタでデビュー後、即連載を勝ち取った新鋭・川田大智、これが初コミックス!

彼女はお義父さん

彼女はお義父さん

さえない普通の高校生・小野直之(おの・なおゆき)に2つの奇跡が起こる!ひとつは学内随一の美少女・佐倉詩織(さくら・しおり)と付き合い始めたこと。もうひとつは、彼女に触れると、彼女が頑固なお義父さんに変身してしまうこと。かわいい彼女と怖過ぎるお義父さんが、ひとつの身体に。触りたくても触れない、父娘フュージョンラブコメスタート!『まかろにスイッチ』収録の「メガ澤」シリーズで話題をさらった川田大智、初の長編連載!

夢見がちなジュピター

夢見がちなジュピター

仕事を理由に色んなことを後回しにしてきたOL・長内エイミ。自分に好意を寄せる後輩の澄田海に翻弄されっぱなし…。しかし、ふと見せる頼り甲斐のある彼の姿に、次第に意識しはじめる。社員旅行の宴会を抜け出した2人は、まさかの急展開に…!? 電子版でしか読めない、2人の出会いを描いた特別描き下ろしマンガも収録!

ブラパト! ブランドパトロール 本日も異常なし!

ブラパト! ブランドパトロール 本日も異常なし!

東京で働く黒子カナ。昔から憧れていたバッグ「フォーキン」を手にいれる!と一念発起しお店に向かうがそこで衝撃の事実を知ることに…!? 原作:かっぴー(『左ききのエレン』)、漫画:大久保ヒロミ(『人は見た目が100パーセント』)の最強タッグでおくる入手困難なバッグをめぐる、現代女性の欲望全開お買い物コメディ開幕!

試し読み
左ききのエレン外伝SICK

左ききのエレン外伝SICK

大手広告代理店の目黒広告社にて、腕は一流だが厳格で知られ、部下をはじめ周囲の人間から恐れられている孤高のクリエイティブ・ディレクター、柳一(やなぎはじめ)。その原点とは…? 『左ききのエレン』本編で描かれなかった過去の生い立ち、人間関係、そして表舞台から消えた謎が明らかに……。『左ききのエレン外伝SICK』1巻 ・1話「フォアグラ」 ・2話「ギンザ」 ・3話「ギョーカイ」 ・4話「ユウコ」 ・5話「アトリエ」 ・6話「ドウトンボリ1」 ・7話「ドウトンボリ2」 ・8話「ドウトンボリ3」 ■著者について 1985年神奈川県生まれ。株式会社なつやすみ代表。武蔵野美術大学でデザインを学んだ後、大手広告代理店に入社。アートディレクターを務め、WEB制作会社のプランナーに転職。趣味で描いた漫画「フェイスブックポリス」をnoteに掲載したところ一躍話題に。2016年に漫画家として独立。現在は『左ききのエレン-DOPE-』(note)『柳さん ごはんですよ』(集英社)『晴天のデルタブイ』(LINE マンガ/ebookjapan)の3作品を連載中。代表作の原作版『左ききのエレン』は、アニメ化も発表されている。

晴天のデルタブイ

晴天のデルタブイ

ロケットの街、北海道大樹町。大学生の天野天は就職活動終了を間近に控え、幼い頃からのロケットへの憧れを諦めかけていた。大学生活最後のペットボトルロケット打ち上げの日、ある男との出会いが天の運命を大きく変えていく。これは、実話に基づく物語である。原作:かっぴー ネーム:フウワイ 線画:かもとも 背景:スタジオアッツー 着色:ししゃも 制作:INCLUSIVE株式会社,株式会社ナンバーナイン 監修:インターステラテクノロジズ株式会社 協力:北海道大樹町,SPACE COTAN株式会社

原作版 左ききのエレン【合本版】

原作版 左ききのエレン【合本版】

天才になれなかったすべての人へ――。朝倉光一は、大手広告代理店に勤める駆け出しのデザイナー。いつか有名になることを夢みてがむしゃらに働く毎日だった……。もがき苦しむ日常の中で、高校時代に出会った天才・エレンのことを思い出していた。2015年、メディアプラットフォームnoteで公開されてすぐに話題を呼び、ウェブメディアcakes連載時から不動の人気を誇る「左ききのエレン」、待望の合本版が登場!「SNSポリス」「おしゃ家ソムリエおしゃ子!」で一躍話題になった「かっぴー」が手がける、初の長編ストーリーマンガ。■著者について 漫画家。株式会社なつやすみ代表取締役社長。武蔵野美術大学でデザインを学び、2009年卒業後は東急エージェンシーのクリエイティブ職に。アートディレクター・コピーライター・CMプランナーなど天職が見つからぬままアイデアを書き留めた絵コンテを量産する。2014年に面白法人カヤックへ転職。2015年9月、漫画を見た同僚に背中を押され、描いた漫画「フェイスブックポリス」をWEBサイトへ公開し、大きな反響を呼んでネットデビューを果たした。以降、「フェイスブックポリス」の続編「SNSポリス」をはじめ「おしゃ家ソムリエおしゃ子!」「左ききのエレン」「おしゃれキングビート!」「裸の王様VSアパレル店員」などWEBメディアでの多数の連載がはじまる。子どもの頃憧れた映画の脚本家やテレビ番組の構成作家など、自分が考えた物語を世に広める事を夢みて、2016年2月に株式会社なつやすみを設立した。社訓は「忙しく、遊ぶ。」。本書は通常盤3巻分を収録した合本版となります。『原作版 左ききのエレン』1~3巻を収録。

15分の少女たち ―アイドルのつくりかた―

15分の少女たち ―アイドルのつくりかた―

かつてないアイドル“ビジネス”コミック 主人公は、大手芸能事務所「ムーンライト」の新入社員・小林竜馬。ムーンライトが手掛ける新アイドルグループプロジェクトに配属された彼は、まずは進行中のオーディションでメイキング映像を取ることを命じられる。そこで小林は、「アイドルビジネスのリアル」を知ることになって!? **************************** 「誰もが15分だけ有名になれる」 アンディ・ウォーホルの言葉はインターネット時代の到来によって現実味を増し、幾度となく引用されたことだろう。それでは、何を捧げれば15分以降の世界に到達できるのか? **************************** 映像化もされた『左ききのエレン』の鬼才・かっぴーと新鋭・戸井理恵が紡ぎ出す、前代未聞の「アイドルプロデュース譚」、開幕!!

絶対信じない

絶対信じない

『左ききのエレン』『アイとアイザワ』『おしゃ家ソムリエおしゃ子!』のかっぴーが描く短編漫画が待望の電子コミック化! 売れない漫画家が出会ったのは盲目の天才だった。何を言っても絶対信じない彼女を説得する為に漫画家の奮闘が始まる。才能とは何か?売れるとは何か?これは『左ききのエレン』とはまた違う天才と凡人の物語。全ての表現者に捧ぐ物語。

新卒版 左ききのエレン

新卒版 左ききのエレン

天才になれなかった全ての人へ――。朝倉光一は大手広告代理店に勤める駆け出しのデザイナー。いつか有名になることを夢みてがむしゃらに働く毎日。これは「朝倉光一」という天才に憧れた一人の男が、「エレン」という才能と出会う物語。2015年、メディアプラットフォームnoteで公開されてすぐに話題を呼び、ウェブメディアcakes連載時も不動の人気を誇った「左ききのエレン」至極のエピソードの中から新卒向けのエピソードを抜粋した特別総集編になります。社会人になる前に是非読んで欲しい一冊。

サルヴァドール

サルヴァドール

バスケ漫画「ECHOES」で第7回『このマンガがすごい!』大賞 最優秀賞を受賞した著者、歩がデビュー前に初めて描いた短編作! ーーとある町のカフェで出会った1匹の看板猫と、その猫を愛した人たちの物語 「このカフェに来た人の数だけ、色んな物語がある」 大学生の潤が働くカフェは、町の常連客に愛され、日々賑わっていた。どこからか大雨の日に店にやってきた看板猫の「サルヴァドール」とともに、潤は今日も開店の支度をはじめるが、ある日を境にサルヴァドールの姿が見えなくなって... 人々との不思議で暖かな繋がりの物語を、水彩色鉛筆と透明水彩の鮮やかで優しい画で、著者ならではの世界観で表現。アナログ原稿の魅力をそのままに、フルカラー132Pリマスター版としてお届け! 【電子特典・豪華21P付き】 ●目次 ・あの町で、大雨の日に ・思い出さえあれば ・“短い夢”の続きをずっと ・【電子特典】カラー絵コンテ、キャラクターラフ案など 【著者:歩】 1988年生まれ、北海道旭川市出身。「サルヴァドール」を描いた翌年の2016年、バスケ漫画「ECHOES」で第7回『このマンガがすごい!』大賞 最優秀賞を受賞し 漫画家デビュー。現在は同作の長編版である「BREAK THE BORDER」を描いている。バスケットボールやスポーツ関連を中心としたイラストレーターとしても活動中。ネコ科猛獣とゼルダの伝説が好き。

BREAK THE BORDER

BREAK THE BORDER

中学最後の試合で友人を怪我させてしまった青は、大好きなバスケをやめるつもりでいた。そんなある日、青はたまたま見かけた新緑高校の練習試合で、孤高のエース・飛鳥のプレーに心奪われ、人目もはばからず涙を流す。青はその日の飛鳥のプレーが、バスケットボールが忘れられず、新緑女子バスケ部への入部を決意。そこで青を待ち受けていたのは、フクザツな事情を抱えたチームメイトたちだった。「チームって、フクザツで、めんどくさくて、愛おしい──」仲間たちとの絆、そして飛鳥への想いは、いったいどこへ向かうのか…?

タチバナ君は王子になりたい

タチバナ君は王子になりたい

【特別描き下ろしのおまけ付き!】タチバナ君は女子のあこがれ、男子も認める学園の王子様…のはずだった。すべてを見透かしたような保健室の先生・逢沢が現れてから調子が狂いだして──!?※本作品は「タチバナ君は王子になりたい 【分冊版】1~7」と同内容を収録しています。重複購入にご注意ください。

口の悪い男子校マネージャーのサポート力が凄すぎる

口の悪い男子校マネージャーのサポート力が凄すぎる

【Xで累計5000万人が読んだ! 敏腕マネージャーの学園部活コメディ!】 「はあ? 寝不足? 舐めてんのかザコ。そんなもん……お前らの顔見りゃ一発でわかるんだよ!」 とある男子校のラグビー部には、「鬼」マネージャーがいるらしい。だけど、どうも部員たちはみんな、楽しく部活をしているようで…… 一体その真相は!? 「寝不足で体調が!」「栄養不足でふらふら…」「なんか服が破けた!」 部員たちが持ち込んでくる数々のトラブルを、辣腕マネージャーが厳しくも優しく捌いていく、学園部活コメディ。【「私のマネージャーになってほしい…」とSNSでも話題沸騰!】 ・このシリーズ大好き! ・最高!こんなマネージャー欲しい! ・一瞬本当に罵倒されてる気持ちになってたまらなかった ・アニメ化してほしい! 声まで再生される! etc... ※この作品は、えのがXで更新中の「口の悪い男子校マネージャーのサポート力が凄すぎる」まとめ本です。未公開のカットや初期ラフなどもあり。

カヤックで楽しく働く面白く熱い人々 #1巻応援にコメントする