多くを語らないが故に心を動かされる
土田世紀の遺作で、家族をテーマにしたショート短編集。 特に心動かされるのは2話のドライブする親子の話と、0話の「父ちゃんの関越道」の2編。主人公は子供視点ということもあり、言葉数は少なく、説明らしい説明もない。にも関わらず、そこに描かれているものすべてが物語っていて、そこには描かれてない部分にも、また感動してしまう… 試し読みで 0話「父ちゃんの関越道」は全部読めるのでぜひ読んでみてほしい。
土田世紀がその死の間際まで描き続けた、珠玉のオムニバスショートストーリー。それぞれの「家族」の在り方を、情感豊かなタッチで描いた本作は、とても短編とは思えないほどの感動と余韻を残してくれる。2012年4月24日、氏の急逝によって終了した『かぞく』だが、ここに奇跡の単行本化。天才の最後の仕事を見届けて欲しい。
前作「現金を燃やす会」はバラエティに富んだ短編集だったので「かぞく」というシンプルなテーマにギャップを感じました。とはいえ幸せな家族は一つもないのが土田世紀らしいです。個人的には0話に泣きそうになりました。テーマもそうだけど絵もとにかくシンプルなので、もしかしてアシスタント無しで描いたのかな?と思いました。絵のタッチが荒れてる話もあるんですけど、父親の借金が原因で夜逃げした中学生のマコトが主人公の8・9話になると急に全盛期の頃のようにギラギラするんですよね。ここで未完になってしまったことが本当に悔やまれます。でも映像化をきっかけに重版して単行本を手にすることが出来て嬉しいです。土田世紀は読み継がれていくべき漫画家だと改めて思いました。