久しぶりに漫画家漫画でアツイ!と思えた作品でした。
デビュー前の奮闘をリアリティたっぷりに描いたとかではなく、ひょんなことで、メジャー作家とアシスタントの肉体が入れ替わってしまう、ちょっとファンタジーが入った作品。

これがまず面白い。

そのアシスタント・深山忍は「カメレオン」の異名のとおり「模倣」が得意。
だから、入れ替わったとしても、元々の作家と近しいものができてくる。
なのでメジャー作家と入れ替わったとしても、ソツなくこなしていく。

かたや、メジャー作家・花神臥龍は、無名の漫画家に成り「下がって」しまい、知名度も実績も失った中から這い上がっていくしかない状況。
ここで大抵の凡人なら意気消沈しそうですが、
自分のヒット作に挑戦できる、そして、それ以上のヒットをつくる
と燃える姿が、純粋にアツイです。

また、編集者もカッコよい。
カメレオンが、入れ替わってから再デビューしようとしている花神臥龍を同じ雑誌に掲載させないよう、いわゆる「潰し」を働こうとしたとき、いつもの展開だと、大御所作家の言い分に編集がコビうる感じになりそうだが、

「作品を活かすことが編集の仕事」

と、休載や他誌への移籍をちらつかされようとも屈しないシーンがめっちゃカッコよかったです。

漫画を読んだ時の感動の脚色とか、わかりやすい敵対構図、底抜けに明るい主人公が、THE少年漫画という感じで、自分にとって斬新でした。
(漫画家漫画って、どちらかというと人生の酸いも甘いも表現できる青年漫画が多い印象なので)

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龍とカメレオン 石山諒
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iメンター すべては遺伝子に支配された
遺伝子とAIに支配された世界
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六文銭
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グリーンボックス【合冊版】
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グリーンボックス【合冊版】
六文銭
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気がつくと謎の部屋「グリーンボックス」に閉じ込められた主人公。 その部屋には 「欲しいものを思い浮かべながら滅ぼしたい国を選べ 当たりなら開放」 の文字と世界地図。 最初はテレビの企画か何かと疑い何もせずにいるが、徐々に我慢の限界になり試しに1つの国のボタンを押し自分のスマホと交換。 スマホからニュースを確認すると、それが現実であることを知る。 自身の命(というか食欲などの欲)と一国を天秤にかけるという設定が秀逸で、その後タカが外れたように国を滅ぼすことに抵抗がなくなっていく主人公の心理が面白い。 ボタン1つで国が滅びるというのが実感がなく、また人ひとりではなく、国単位なのも想像しにくいからより葛藤がないのだろう。 また自身もこの部屋に閉じ込められたという被害者意識から自らの欲を優先していく様が、生々しい。 当然、各国もだまっていなくて対策を講じるも、根本的な解決にならない。 このボックスの正体も徐々に明らかになっていくが、ジリジリとしたストーリー展開ですごい先が気になるつくり。 とにかくヒキがうまい。 どうオチがつくのか最後まで見届けたい作品です。
武士沢レシーブ
謎に読み返したくなる
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六文銭
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