職人の凄み
登場する職人それぞれもちろんそうなんですが、作品全体を貫く静かな熱量というか、凄みを感じました。淡々とひたむきに自分の仕事を突き詰めんとする姿勢に心が動きます。このマンガそのものが職人の仕事って雰囲気です。 個々の登場人物で言えば、自分の打った刀が不本意な使われ方をしたときの刀鍛冶職人の静かな抗議や、100年後を想像した仕事をする佐官職人。目の前のタスクをこなすことに躍起になりがちな普段の自分の姿が恥ずかしくなるほどです。 みなさん言うように絵も本当にすごい。熱した刀身を水につけた時の泡の感じが特に印象に残っています。 個人的には、静かな環境で紙で読みたいマンガです。おすすめです。
先日『今村翔吾×山崎怜奈の言って聞かせて』というラジオ番組に出演させていただいたのですが、その際にパーソナリティのお二方が共に歴史好きということで、まだ単行本は出ていないものの是非ともお薦めしたいと思っていた作品がこちらです(なお本番ではバトルマンガや知識になるマンガを求められたため紹介できず終いでした)。
2020年の末に行われたマンガプレゼン大会では、作者である坂上暁仁さんの『火消しの鳶』を紹介された方がいました。
どうも、クチコミとランキングでいいマンガが秒で見つかるサービス『マンバ』です! 昨年末に開催された「オンラインマンガプレゼン大会」みなさん見ていただけましたでしょうか!? ▼配信アーカイブ▼ 「今、私が一番推しているマンガ」をテーマにマンガ好きの発表者6名が集結した大変...
プレゼン者に「ボクはこの見開きに惚れて今この場に立っています」と言わしめるほど、圧倒的に精緻な絵で描かれた打ち壊される家屋の見開きが視聴者の中でも話題となりました。その描き込み力は本作でも存分に、いえますます魅力的に発揮されています。
描かれるのは、タイトル通り江戸の街で活躍する職人たちの業と、それによって生み出される品々。
出来上がった品は現代でもその辺で意識せずに見られるようなものが多いのですが、染め物をする工程の荘厳さであったり、木桶のひとつひとつの木目や刀の凍えるような美しさであったり、その製作過程や出来栄えの圧巻のヴィジュアルに呑まれ、見惚れます。職人芸の美しさを、絵で語ってくれる一冊です。
他方で、「畳刺し」の話のような人間味溢れるエピソードもまた良い味わいを醸し出しています。読んでいると、まるで賑やかな江戸の地の喧騒の中にタイムスリップするような錯覚に陥らせてくれます。
ある種、アートブックのようにも楽しみめる作品です。森薫さんのような、微細で美麗な描きこみが好きな方には強くお薦めしたい作品です。
百聞は一見に如かずで、まず1話だけでも試し読みしてみてください。余談ですが、海外に持って行ったら日本の3倍以上の値段でも喜んで買う方がたくさんいるのではないでしょうか。