きれいなお姫様の表紙ビジュアルに、油断してはいけない
蝶よ花よの生活から一転。 国を攻められ、家族は殺され、身を売られ、娼婦にならざるを得なかった、美しき王女。 母の言葉を胸に這い上がり、国一番の娼婦となり‥ 目を背けたくなるほど重たいストーリー。 その重たい内容に耐えられるほどの、きれいさと残酷さと狂気を兼ね備えた作画。 連載を開始したとき、これはすごい漫画がきたと思って、色んな人に薦めようとしたものの、こころの状態を疑われそうで薦めるのを諦めた漫画です。 あらすじ以上を書くと、ぜひとも読んでもらいたい第一話のネタバレになってしまうので、これ以上は書けません。 当初はガンガンのアプリのみでの掲載でしたが、今は第一話をWebからでも読めます。 コミックス発売前にぜひご一読を。そして、一緒にエビータ姫を応援しましょう。 https://www.ganganonline.com/title/1638
表紙や巻頭カラーの目を奪われるような美麗さ。
美しいだけではなく迫力溢れる緻密な絵によって紡がれる、厳酷で慈悲のない物語。
1話目を読んだ瞬間、これは凄まじい新作が登場したなと感じました。
中世の西洋的世界観の架空の諸国を舞台に、亡国の姫に襲い掛かる過酷な運命。国も家族も奪われて姫から家畜同然の存在へと堕とされた主人公が、娼婦として成り上がりある「作戦」を実現するための闘いの様子が描かれて行きます。
実際に歴史上で多々起こって来た戦勝国による略奪や陵辱行為。蓋されがちな側面を、ここまで良い意味で悪辣かつ美麗に描く作品は寡少です。
読んでいて息が詰まるような苦しさがある一方で、暗黒の中から生まれる背徳的なカタルシスも存在します。残酷な運命や世界と対峙する、鬼気迫る表情がそれをアクセラレートしており秀逸で必見です。
エログロが苦手な方にはお薦めしませんが、『狼の口 ヴォルフスムント』や『ブラッドハーレーの馬車』的な作品を好む方には非常にうってつけの物語です。
我妻幸さん、四季賞の「360°の思い出」の後はマンガよりイラストの方面でプロとして活躍されていたようですが、とてつもない画力である上に前作からの振り幅を考えると引き出しも多そうで、さまざまな物を生み出してくださりそうな期待が募ります。