マンガ大賞2025はなんだと思う?
我妻幸
『作りたい女と食べたい女』ゆざきさかおみ
『冷たくて柔らか』ウオズミアミ
『つらねこ』熊倉隆敏
『天狗の台所』田中相
『天幕のジャードゥーガル』トマトスープ
『峠鬼』鶴淵けんじ
『同志少女よ、敵を撃て』鎌谷悠希、逢坂冬馬、速水螺旋人
『ドッグスレッド』野田サトル
『ドラゴン養ってください』東裏友希、牧瀬初雲
『泥の国』山田はまち
『南緯六〇度線の約束』うめ(小沢高広・妹尾朝子)
『ニセモノの錬金術師』うめ丸、杉浦次郎
『ニッターズハイ!』猫田ゆかり
『日本三國』松木いっか
『ニンゲンの飼い方』ぴえ太
『猫が4匹いる暮らし』カワサキカオリ
『ねずみの初恋』大瀬戸陸
『寝坊する男』阿黒巧熙
『の、ような。』麻生海
『のあ先輩はともだち。』あきやまえんま
『脳梁ドッグファイト』常盤魚
『バーサス』あずま京太郎、ONE、bose
『胚培養士ミズイロ~不妊治療のスペシャリスト~』おかざき真里
『ハヴィラ戦記』みのすけ、町健次郎、西村奈美子
『はかばなし』原克玄
『馬刺しが食べたい』桜井さよる
『8月31日のロングサマー』伊藤一角
『ぱちん娘。』若林稔弥
『バックホームブルース』長尾謙一郎
『はっちぽっちぱんち』嵯峨あき、カツラギゲンキ
『バッドベイビーは泣かない』鳥飼茜
『花四段といっしょ』増村十七
『薔薇村へようこそ』柴門ふみ
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表紙や巻頭カラーの目を奪われるような美麗さ。 美しいだけではなく迫力溢れる緻密な絵によって紡がれる、厳酷で慈悲のない物語。 1話目を読んだ瞬間、これは凄まじい新作が登場したなと感じました。 中世の西洋的世界観の架空の諸国を舞台に、亡国の姫に襲い掛かる過酷な運命。国も家族も奪われて姫から家畜同然の存在へと堕とされた主人公が、娼婦として成り上がりある「作戦」を実現するための闘いの様子が描かれて行きます。 実際に歴史上で多々起こって来た戦勝国による略奪や陵辱行為。蓋されがちな側面を、ここまで良い意味で悪辣かつ美麗に描く作品は寡少です。 読んでいて息が詰まるような苦しさがある一方で、暗黒の中から生まれる背徳的なカタルシスも存在します。残酷な運命や世界と対峙する、鬼気迫る表情がそれをアクセラレートしており秀逸で必見です。 エログロが苦手な方にはお薦めしませんが、『狼の口 ヴォルフスムント』や『ブラッドハーレーの馬車』的な作品を好む方には非常にうってつけの物語です。 我妻幸さん、四季賞の「360°の思い出」の後はマンガよりイラストの方面でプロとして活躍されていたようですが、とてつもない画力である上に前作からの振り幅を考えると引き出しも多そうで、さまざまな物を生み出してくださりそうな期待が募ります。