ある日突然透明人間になってしまう漫画の中でも、少なくとも自分が読んだ中では当事者とそのパートナーの心情を表現するものとしていちばんリアルなんじゃないかと思えました。透明になると、自分で自分の存在意義をも見失ってしまいそうになること。彼がほんとうの意味で消えないために、頼れるものは周りの人間の記憶しかない。逆に言えば覚えている人がそばに居続ければ、彼は生き続けられる(はず)。

それはそれとして超超超待望の短編集が出ると知りめちゃハッピーです

読みたい
きみが透明になる前に

生活の中のささやかな美しさに気づくのは失った時かもしれない

きみが透明になる前に 大白小蟹
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

本当に良い読切を読みました。 そっと涙が溢れてきました。 https://to-ti.in/product/oshiro ある日、夫が事故に遭い、透明人間になってしまった。 透明になった夫との暮らしは見えないだけで不思議で面白く、特に変わらないものかと思ったらそんなことはなく…。 夫が目の前にいるはずなのに表情が見えない生活の中の描写を通して、少しずつ事態を飲み込めていくんですが、その様子が切なくて、どうしようもなくやりきれなくて、喉がギュッとなりました…。 構成も素晴らしくて、何気ない描写に、視線の愛を感じました。 見るということ、見られるということ。 あったはずのものを失うということ。 視力を失うことは一人から世界に対して能動的に見ることができなくなるけど、透明人間になるということは一人が世界から受動的に見られることができなくなる。 受動的なのに、できなくなることって世の中になかなかないんじゃないでしょうか。 「認識できなくなる」という、このフィクションが到達できた哀しみが、手に取るようにありありと伝わってきて、二人と一緒に泣いてしまいました。 抱き締めたい。 本当に素晴らしい読切でした。 11月25日、『うみべのストーブ 大白小蟹短編集』として発売されるそうで楽しみです。 他の短編も好きなので絶対に買います。

きみがとうめいになるまえに
きみが透明になる前に
本棚に追加
本棚から外す
読みたい
積読
読んでる
読んだ
フォローする
メモを登録
メモ(非公開)
保存する
お気に入り度を登録
また読みたい
周回するわたしたち

周回するわたしたち

『うみべのストーブ 大白小蟹短編集』や、ウェブメディア「路草」で連載中の『みどりちゃんあのね』などで知られる話題の漫画家・大白小蟹がCINRAでSNSをテーマに連載をスタート。 「人生って、グラウンドみたいな形なのかなって」 高校の同級生であるサエと真珠子。かつては一緒に慣れない楽器を弾いて将来を語り合っていたが、時が経つにつれ疎遠に。SNSでお互いの近況を知る程度になっていた。「誰かの意見」の洪水に疲れたあなたに送りたい、全7話の物語。

試し読み
うみべのストーブ 大白小蟹短編集

うみべのストーブ 大白小蟹短編集

俵 万智 「小蟹さんの澄んだ心の目。そのまなざしを借りて私たちは、忘れそうなほど小さくて、でもとても大切な何かを見つめなおす。たしかに降ってきたけれど、とっておけない雪のように。」 雪のように静か。冬の朝のように新鮮。自分の気持ちに触れることができるのは、こんな時かもしれない。[収録作品] ●「うみべのストーブ」 運命のように出会ったえっちゃんとスミオにも、ある日訪れた別れ。傷心のスミオを海に連れ出したのは、隣で彼を見守り続けていたストーブだった…。「ふたりが…お互いに、好きだったこと 私はちゃんと覚えてる 何度だって思い出すよ」 連載時のカラーを再現し、2色刷で収録。●「雪子の夏」 トラックドライバーの千夏が雪の日に出会った、雪女の雪子。夏のあいだは消えてしまうという雪子に夏を見せてあげたい。忘れられない夏の物語。「誰もあたしのことを 思い出してくれなくなったら こんなぼんやりしたまま 永遠に消えちゃうの?」 ●「きみが透明になる前に」 ある日事故で透明になってしまった夫。彼の姿が見えないことにほっとしている自分はもう、彼を愛していないのだろうか…。見えないものに触れる、夫婦の絆のかたち。「ねえ泉 ありがとう 僕を見つけてくれて」 ●「雪を抱く」 パートナーとの間の妊娠を知り、複雑な気持ちの若葉。大雪で家に帰れなくなったある日、偶然出会ったコウコと朝までの時間を過ごす。女性の身体をめぐる物語。「わたしの身体が わたしひとりだけのものだったことなど 一度でもあっただろうか」 ●「海の底から」 仕事で忙しい毎日を送る深谷桃は、かつてのように小説を書くことができない。いまの自分はまるで海の底から上を見上げているようで…。創作に向き合うことができないでいる生活者の苦悩の物語。「悔しい 書かなくても幸せでいられるのが」 ●「雪の街」 はなれていた親友の突然の死をきっかけに訪れた、昔住んでいた町。思い出のファミレスで出会った森田という男と、死んでしまったスーちゃんのことを思い出しながら、雪道を歩いていく。夜の黒さと雪の白さは、彼らの弔いを静かに描き出す。「鈴木さんがどこかで 元気でいてくれるといいなって ずっと思ってました」 ●「たいせつなしごと」 単調な仕事に明け暮れる毎日のなかで、いつのまにか自分の心は動かなくなっていた。いつかどこかのゲートが開いて、別の世界へ行けたなら…。暮らしのなかにある光を見つける小さな物語。

もしも透明人間になったらにコメントする
※ご自身のコメントに返信しようとしていますが、よろしいですか?最近、自作自演行為に関する報告が増えておりますため、訂正や補足コメントを除き、そのような行為はお控えいただくようお願いしております。
※コミュニティ運営およびシステム負荷の制限のため、1日の投稿数を制限しております。ご理解とご協力をお願いいたします。また、複数の環境からの制限以上の投稿も禁止しており、確認次第ブロック対応を行いますので、ご了承ください。