トマトスープ先生の可愛さと残酷さ
ダンピア〜も読んでて素晴らしく可愛かったし、何よりこの時代(というか文明)の野蛮さに現実が見える。 そんな中でも崇高であれ、尊さを知ろうとする彼女らはとても魅力的で、今はとても恵まれているなとも思いつつ、文明なんてなくても幸せだった気がしてくる。
後宮では賢さこそが美しさ。13世紀、地上最強の大帝国「モンゴル帝国」の捕虜となり、後宮に仕えることになった女・ファーティマは、当時世界最高レベルの医療技術や科学知識を誇るイランの出身。その知識と知恵を持ち、自分の才能を発揮できる世界を求めていたファーティマは、第2代皇帝・オゴタイの第6夫人でモンゴル帝国に複雑な思いを抱く女・ドレゲネと出会い、そして……!? 大帝国を揺るがす女ふたりのモンゴル後宮譚!
屈辱の中で少女は、溢れる怒りを抑えて笑う。その時彼女は歴史物語の主人公として、闇の魅力を放つ。
虐げられた者の歴史を、強烈に印象付ける。イランで学者家系の家に奴隷として連れてこられた少女は、そこを失いモンゴルに送られ、王子の妻に仕える。いつも大切な基盤を奪われながら、移動先で厚遇されてしまう彼女の尊厳は、複雑に引き裂かれている。
悲しみ、強い怒り、嫉妬。そんな彼女の暗さを押し込めたしたたかな笑顔に、心臓を掴まれる。
彼女を支えるのは学問。それは人生の指針でもあり、出世の道具でもあり、知らない世界への好奇心。数学や科学をモンゴルに持ち込む彼女が何を起こすのか……揺れるモンゴル帝国で彼女の心も、かなり大きく揺れ動きそうな予感がある。