名無し

昔に好きだったバイク漫画(の多い)先生がいました。
その先生があるインタビューで
「かつてバイク漫画を描いて漫画編集部に持ち込んでも
 ああ雰囲気漫画ね、で終わらされてしまってばかりだった」
みたいなことを言っていました。
先生御自身では自分の漫画を雰囲気漫画とは
思っていなかったようでしたし、雰囲気漫画というものを
あまり肯定しない考えのようでした。
雰囲気漫画とは何か、の定義も難しいのですが・・
ですが、私自身はその先生の作品を
雰囲気がいい漫画、と思って好んで読んでいたので、
その記事を読んで微妙な気分になったことを覚えています。

その先生は楠みちはる先生ではないのですが、
楠先生は良い雰囲気の漫画を描く先生であり、
あいつとララバイ」はその典型であり、
後の「シャコタン★ブギ」「湾岸ミッドナイト
に続く雰囲気漫画の先駆けではないかと思っています。

あいつとララバイは話の流れに色々なバイク関係の話が
絡んできますが、わりと細かい部分は雰囲気で作られています。
論理的だとかメカニックな根拠があると言い切れるほどの
話の展開は少なく、あえていうなら
「それでも面白い」「そのほうが楽しい」
と思わせる感じでストーリーが走っていきます。
研二君が超絶テクニックでパトカーを躱すシーンとか、
具体的な描写はありません。
けれど1コマづつやページ全体の流れとかを上手く描いて
なんだかおもしろい流れを見せてくれて、読んでる側としては
その流れに乗って楽しめて納得しちゃうんです。
まさにその漫画の雰囲気に乗ったモン勝ちの世界。
リアリティを超えてバイクに思い入れが深まってしまう。
良い意味の雰囲気漫画を読ませてくれました。
そしてララバイにしろシャコタンにしろミッドナイトにしろ、
そういう雰囲気に乗ったことを読者に後々までけして
後悔させないだけの面白さがあると思います。
今になって思えば、ララバイの時代ですらすでに
旧車になりつつあったZⅡが最新バイクよりも
速く走る姿を描きながら読者を納得させていました。
そう思わせる雰囲気がそこにありました。

その手法をそのまんま湾岸ミッドナイトでも踏襲し、
それでいて飽きさせぬ色畔ぬ漫画を描いているのですから
楠先生は凄いですね。

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