素朴で安心する手触りの短編集
マトグロッソで連載していた物に、表題作の描き下ろしを1つ加えたスズキスズヒロさんの短編集。 とりわけ個人的に好きなのは、「銃声を削り出す」。ヤクザになり下手を打ってしまったかつての悪友のために、昔馴染みの友人たちがそれぞれの得意分野を生かして拳銃を拵える話なのですが、友情や人生を感じられる味わい深い物語となっています。銃を作る過程の工具の説明の専門性よ高さにも惹かれます。 また、全編を通してスズキさんのマンガは勿論、解説文にも惹かれます。後書きも含め、きっと長い文章を書いても面白いのだろうな、と。 仙台に住む高校生がカメラのオフ会で東京に行って、webで交流していた綺麗なお姉さん含む同好の士に逢う「TRAINSTOTTING」の後書きで、筆者自身が高校生の時に夜行バスで初めて東京に行った際に、あらゆる不安が新宿に着いた瞬間に「手塚治虫の人間昆虫記に出てきた所だ!」という興奮に変わる所など大きな共感を得ました。 絵柄も優しく、穏やかなハウスミュージックを聴いてコーヒーを飲んでいる午後のような気持ちになる一冊です。
文化庁メディア芸術祭受賞作品ということで気になっていました。「トレインスポッティング」「タクシードライバー」「キッズリターン」の有名映画タイトルから着想を得て描かれた短編シリーズがどれも面白かったです。単行本の表紙で女の子が映画館にいるのはそういう理由だったのか!これはかっこいい!