ネタバレ

精神科って、身体の怪我や病気でかかる一般的な病院とは違い、特殊な部分が多くあるなとこういう漫画を読むと思う。本作を読んで、精神科で働くということに興味を持つ人はいるかも知れないけど、最後まで読んだ上でも尚、心からやりたいと思う人はどれくらい居るだろうか。これはただの想像だけど、この漫画の作者のように自分自身が患者側になりそうになった、もしくはなった人が「あの心の状態って何だったんだろう」「他の人はどうなんだろう」という興味から心の病についてもっと知りたいと思った人がなるケースがあるのではと思った。
たぶん、患者に対してこの人は病気で自分は違うとはっきり境界線を引くような人にはできない仕事なんじゃないか。かといって、患者さんに影響されて自分を保てないならそれも難しい。誰もが探り探りの毎日。何年かけて世話をしても一瞬で裏切られることもある。辛抱強さが全てと言っても良いかもしれない。この漫画の主題である"ナース"はとくに。

印象的だったのは、自傷や加害行為をする人に対してただ「それはやってはいけないからやめろ」と言うのではなく「その行為に及ぶときの気持ちに注目する」ということ。自傷行為によって怪我をしても大したことがなければ自分で手当させるだけ、大事に至れば救急車を呼ぶだけ。そして落ち着いた時にどういう気持でやったのかを問うというのを繰り返したら、自傷行為が減ったという話。

身を削るほどの丁寧なケアは必要だけど、何があっても相手は自分とおなじ人間であるという当たり前のことを忘れないことが、この仕事には必要なんだと思う。

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