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普通のOLだった主人公が、母親の病死による悲しみのせいで、心のコントロールが利かなくなり、通勤中に横入りの男に無意識に肘鉄をくらわしトラブルに。完全に平常心を失っていた自分に驚き、こうも簡単に壊れてしまう「人の心」興味を持つように。そして仕事を辞め、看護師の資格を取り、「精神科」で働くことを決意。しかし身体のケガや病気のように目で見て明らかではない精神の病を抱える患者たちとの日々は想像以上に大変で忍耐力のいることだった。──私がそうだったように、誰だって平常心でいられない時もある。”おかしい”と”おかしくない”の境界線はいったいどこにあるのか。──実際の病院、看護師さんへの取材に基づき描く、初の精神科ナースコミックエッセイ。
精神科って、身体の怪我や病気でかかる一般的な病院とは違い、特殊な部分が多くあるなとこういう漫画を読むと思う。本作を読んで、精神科で働くということに興味を持つ人はいるかも知れないけど、最後まで読んだ上でも尚、心からやりたいと思う人はどれくらい居るだろうか。これはただの想像だけど、この漫画の作者のように自分自身が患者側になりそうになった、もしくはなった人が「あの心の状態って何だったんだろう」「他の人はどうなんだろう」という興味から心の病についてもっと知りたいと思った人がなるケースがあるのではと思った。
たぶん、患者に対してこの人は病気で自分は違うとはっきり境界線を引くような人にはできない仕事なんじゃないか。かといって、患者さんに影響されて自分を保てないならそれも難しい。誰もが探り探りの毎日。何年かけて世話をしても一瞬で裏切られることもある。辛抱強さが全てと言っても良いかもしれない。この漫画の主題である"ナース"はとくに。
印象的だったのは、自傷や加害行為をする人に対してただ「それはやってはいけないからやめろ」と言うのではなく「その行為に及ぶときの気持ちに注目する」ということ。自傷行為によって怪我をしても大したことがなければ自分で手当させるだけ、大事に至れば救急車を呼ぶだけ。そして落ち着いた時にどういう気持でやったのかを問うというのを繰り返したら、自傷行為が減ったという話。
身を削るほどの丁寧なケアは必要だけど、何があっても相手は自分とおなじ人間であるという当たり前のことを忘れないことが、この仕事には必要なんだと思う。