漫画版『子供の情景』には小さな痛み
一年前に母を亡くした藤沢家。小五の兄・杳(はるか)と妹の小一・清(さや)は、隣に越してきた原田家の一人娘・小五の佐保を見て驚く。 「お母さんの、子供の頃の写真とそっくり……」 ◉◉◉◉◉ 男女なのに似ている杳と佐保。佐保に親しみを感じる清。杳と似た雰囲気を持つ杳の幼馴染の綾瀬ことみ。不思議な縁で繋がる彼らには、取り立てて大きな事件もドラマも無い。優しいタッチと植物の装飾で描かれる「夢と現」の日常は、明るさも切なさも子供らしい下ネタすら可愛らしく包摂して、ただ其処にある。 彼らの日々を綴りながら、子供の感性について、子供・大人双方の視点から描かれる。幼い清の空想世界を楽しむ大人。少し遠くを見る杳の詩情に魅せられる佐保。人の心に寄り添う佐保の優しさ。子供を見守りつつ自らの心を見つめる大人達……そこにある感性は豊かだ。 楽しい事ばかりでは無い。折々に亡き母を思う兄妹は、時に感情の処し方に迷い、それでも日常を、悲しみ切なさと共に笑って生きる。その在り方は、何があっても「生きていかなければいけない」私達の心の処方箋でもある。 シューマンの楽曲よりは、心が「痛む」感覚のある『子供の情景』と言いたい。
私自身は子育て経験ないですけど、やけに親側に感情移入して読んでしまいました。お父さんとリカコちゃんがよく子どものことで言い合いをしますが、どっちの言い分もわかるんですよね。子育てに正解はないってそういうことなんだろうと思いましたし、漫画の中でも正解を示そうとしないのが良かったです。
いやー、紺野キタ作品ハマりそうです。他作品をこれから読むのが楽しみです。こちらこそありがとうございます!