漫画の世界に放たれた水墨画の白虎は、どことなく粗削りで不器用に映った。美しくて高貴なだけの存在ではなく、弱肉強食の理を必死で生き抜く只の動物だった。

この作品には台詞や吹き出しが一切なく、水墨画だけで物語が進められていく。
描かれている動物はどれも美しい。もふもふの毛並み、ギラギラ輝く瞳、鋭い牙や爪が緻密に繊細に描き込まれている。
そして、作者の画風なのか狙いなのか私の勘違いなのかわからないけれど、粗削りなのだ。どこを切り取っても掛け軸に収まりそうなほど美しいのに、衝動のままに描いたかのような荒々しさを感じる。
だからこそ、今にも動き出しそうなリアルさがあるし、残酷な場面も多いけれど動物達の可愛らしさや体温も感じられるように思う。

綺麗な水墨画を堪能しただけでは、漫画を読んだという感覚は得られない。
美しさだけではない絶妙な揺らぎ感が、この作品を漫画たらしめているのかもしれない。

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白虎 森の覇王へ

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韓国随一の筆力を持つ彩色水墨画家、ジョン・ソクホが挑む華麗で荘厳な大自然と野生の描写。極寒の大森林で繰り広げられる美しき白虎と巨大な羆との壮絶な格闘。従来の劇画を超えた最上級の動物格闘コミック!!

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