「月光」感想
なかなか攻めた題材を取り上げているにも関わらず、このやけに清々しい読後感は一体何なんだろう(笑) 今回ウチヤマ作品を初めて読んだが、話の構成が上手い作家さんだなぁと思った。思いがけず良き一冊!
ヘルプデスクに9時・5時で勤める一見普通の青年・坂本。彼の自宅はひっそりとした郊外の一戸建て。そこには厳重に施錠された地下室があり、ワケあり少女との奇妙な共同生活が営まれていた。『松濤一家殺人事件』、『闇サイト』、『誘拐』、『筆談』──キーワードが導く異常な真実とは? コミティアで活動を続けてきた新鋭ウチヤマユージが、誰にも似ていないタッチで描く“日常系クライム・サスペンス”。
イントロダクションで読者に与えられる情報から、何やら不穏な空気が漂う物語だと最初は思ったりもしました。ただ、読後感は爽やかな物であり、作者のストーリーテラーとしての手腕の鮮やかさを称えたくなるのではないかと思います。
実際、作者の他の作品を読んでも、ストーリーのフックの掛け方であったり、伏線の回収の方法であったり、上手いなあと感心します。
些か古い言い方だとは思いますが、「社会派」と呼ばれるような作品だと思います。前向き過ぎないポジティブさを感じる作品であり、ここ最近のこの社会の風潮とか出来事に疲れているなあともし感じている方に読んでもらえたら、なんてことを考えたりもします。