登場人物は、基本的に主人公だけ。
基本、というのは、メールとか電話などで、友人や想いをよせる人(植村さん)は出てくるのだが、姿としては一切出てこないから。
主人公以外は文字だけの存在になっています。
部屋の人形が語りかけてくるが、たぶん主人公の妄想でしょう。

舞台も、主人公が暮らしている「部屋」の中のみ。
これまた、外出シーンは一切出てこない。

そう、まさにタイトルどおり「吾輩の部屋」なのである。

こんな困難な設定でよく描けたな、すごいなーと。
思ってしまうのですが、それ以上に
「誰もが経験する平凡な日常を面白く描ける」
という点が作者の力だと思います。
普通の人なら見落としてしまう点も、独自の着眼点で見つけてふくらませる。日常系マンガの面白さの分水嶺はここだと思うんですよね。

ともすれば、全部なんてことないことばかりなんです。
台所の吸盤がやたら落ちるとか、絨毯の端がめくれるとか、雨で洗濯ものが乾かないとか、好きな人からメールがこないとか、逆に怪文が送られて悩むとか。

それを、主人公が悪戦苦闘しながら、一話完結方式でオチまでもっていく展開が不思議とクセになるのです。

主人公は大学院の修士課程で専門的な研究をしているからなのか、個々の問題の本質を探り、そして深く悩み、時に本格的かつ凝った対応をします。
ロジカルに、テクニカルに。ぶつぶつと垂れ流しの独り言をしながら。
・・・まぁ、一人しかいなんでね、思考がさまよいますね。

スキマスキマでずっと読んでいられる、そんな作品だったのですが、なんと6巻で終わってしまい悲しい限りです。
でもまぁ、この設定で6巻も続いたのが奇跡でしょうかね。

また、ドラマ化もしたようです。
この設定なら、きっと低予算ですんだんだろうなぁとか勘ぐってしまいます。

最後に、私、上記で嘘を言いました。
主人公しか出てこないといいましたが、最終巻最終話には、そのルール破って「ある人」がでてきます。
そこも要チェックですよ。

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