グラフィックノベルの常識をくつがえす挑戦的作品!
グラフィックノベル初ブッカー賞ノミネート!早川書房が発行!と話題の多い本作! ある日突然サブリナという名の一人の女性が失踪する。彼女の恋人とその友人、そしてサブリナの妹を中心に物語は進んでいく。 驚くべきは、一部のコマを除き、登場人物たちの顔が、表情筋がないかのような、点と線というシンプルな描線で描かれていること。 その表情は、たとえシビアで悲痛な場面であっても、あたかもアルカイックスマイルのような微笑みを浮かべているようにさえ見えるのだ。 視覚的要素と内容とがチグハグな印象を与え、この作品に言いようもない不気味さを加えている。そして失踪事件にまつわる顛末をいっそう衝撃的なものへと導いている。 グラフィックノベルの常識をくつがえす、グラフィックノベルの新たな境地を追求する、挑戦的な作品です!
あらすじの文言はセンセーショナルだけど、内容はひたすら坦々としている。この時間の刻み方、間の取り方はグラフィックノベルならではの表現で、非常に素晴らしい。
誰かが失踪する話というと、解決に向けて登場人物が頑張るのが物語の推進力になりそうなもの。ところが本作は事件そのものというよりは、事件の周りで起きることを細かく描写しており、それによって事件が落とした影を際立たせている。
とんでもないことが起きてもご飯は食べないといけないし、仕事もあるし、人は勝手なことばかり言う。
この制御不能な状態にいつ転げ落ちるか分からない(既に転げ落ちてるかもしれない)恐怖が、読んでいてじわじわと襲ってくる。しかし絶望するだけでなく、大きなアクションを起こすでもなく、恐怖と共に日々を過ごしていく感じが、すごく現代的でリアル。