小説が好きな女の子と、音楽が好きな男の子の物語にコメントする
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花と頬

丁寧に描かれた関係性に浸れる漫画

花と頬 イトイ圭
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

柴田ヨクサル先生が帯に書いた「切れば血の出る漫画。」の通り、全編通して丁寧な人物描写で、読後はぼんやりと彼らがこの世界に存在しているような気がしてくるくらいキャラに血が通った漫画。 知っている人は知っているくらいのミュージシャン「花と頬」を父親にもつ父子家庭の女子高生が学校で父の仕事のことを知る同級生の男子と知り合い、仲を深めていく夏。 他クラスだが同じ図書委員で私語禁止の図書室で密かにノートで会話を進めていく様子がとてもいい。 多くを語らない登場人物が多いのに、息遣いや体温まで伝わってきそうなくらい親しみを持ててしまう彼らのいる世界に読後はしばらく浸っていたい。 良質の邦画を見たときと似たような読後感なのは、場にある空気や時間の流れ、会話の運びのテンポの良さをうまくコマ運びで表現できているからなのかも。 登場人物たちのなにげない日常がなにげなく過ぎ、彼らの中で決定的に何かが変わったかといえばそうでもないし、でも確実に何かは変わっている。それでも彼らの日常は続くし心持ち前向きにハッピーな感じ。 そんな爽やかさと、少し時の流れの残酷さと、人の温かみと鼻がツンとするような切なさもちょっぴりある、ガールミーツボーイなひと夏の出来事。 読んでいて気持ちが良いのは、キャラクターが説明的すぎないところだ。 ハッキリ明言されてはないけどこれってそういうことか、という場面がいくつかある。 そういった、みなまで言わずに言外で想像させる程度の物言いがとても現実的でよく馴染む。 主人公が等身大の女子高生らしくとてもナイーブで不安定で、自分の立ち位置を見失いがちなところもとてもいいし、父親がそっけないようで優しいのが感じ良い。 不穏なことが過去にあったような雰囲気を匂わせつつしっかりとは登場させない。登場人物に刻まれている表情で何かあったことを語りだす。 全体的に本当にいい雰囲気だった。 分かりやすい売るための要素(大仰な喜怒哀楽や、波のある起承転結など)がないから載せられない、といくつかの出版社で言われてしまったようだけど、こういう作品を出してくれる会社が世の中にあるのは救いだ。 届きました。ありがとうございます。

野球で話せ

漫画で話せ

野球で話せ
かしこ
かしこ

何を隠そう私も自分の描いた漫画を第11回青年漫画賞に応募していたのです。とはいえ私は記念受験のようなものなので箸にも棒にもかからないのですが…それでも言わせて下さい、私のライバルって中原とほるだったのかよ!!と。いや〜でもこれは完敗です。だって全編を通して「漫画を描くのが楽しい」って感じだったじゃないですか。働きながら漫画を描くのは大変です。やりたいことがあるのは幸せだけど、休みの日なんかに一人で引きこもってコツコツ描いてると「誰にも求められてないものをこんなに一生懸命やって何になる?」と虚しくなります。それよりも情けないのは描きたいから描くのではなく「漫画家になりたいから描いている」という気持ちのブレが起きてしまうことです。それでは本末転倒なのです。だからこそ作中で叔父さんが言っていた『表現を続けなさい』というセリフに胸を打たれて勇気づけられました。それは連載デビューを経験された後も医師として働きながら投稿を続けられたご自身に対しての言葉なのかもしれませんが、私もこんな風に漫画と向き合いたいと思わされる姿でした。いつか私の漫画を中原さんに読んでもらいたい。漫画で話したいです!

はなとほほ
花と頬
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