できたて家族の人間模様にコメントする
ビューティフル・エブリデイ
こじれた家族の人間関係をそれぞれの視点で描く上手さ
ビューティフル・エブリデイ 志村貴子
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
志村貴子節出てるなーという感じで好き。 女子高生の主人公のエロ漫画家の父が亡くなり、再婚した相手方には年の近い兄妹がいて、兄はセクハラ気味で接してくるし、妹はブラコンだから嫉妬してきて当たり強いし、父は幽霊になって見守っていて~、というそれぞれの人間関係がこじれた矢印になている感じ、そしてそれぞれに視点が移ってそれぞれに思うところあってみんな生きているという感じ。 好きですねー。 そもそも僕は放浪息子がめちゃくちゃ好きで感情移入以上のなにかを持って読んでいたのですが、淡々としつつ感情の機微を描いていて、デリカシーのないあいつにも自分とは人生や家族があって、みんな違うなりに人と人の間でしたたかに生きていく感じがたまらんのです。 何なんでしょう、志村貴子さんのこの達観した感じ。 他人は他人、自分は自分。 実は人って他人にそこまで興味持たないよね、といいつつ固執したり、みたいなこのバランス感覚。 何か傷つくことを言われても何も感じてませんよーみたいな顔しつつしっかりダメージあったり、その顔とか絵が単純に好きです。 外には外の顔、考えていることはまた別、みたいな、漫画らしい過剰な演出してない感じも好きですねー。 世の中、漫画みたいに感情の起伏を表に出すような人ばかりでもないし、出したところで取りあってもらえないし、構ってちゃんみたいに思われても嫌だし、そんなことごちゃごちゃ考えてしまうような人ととは仲良くなれる気がするし、志村貴子さんとの相性もいいでしょう。 でもなんでだろう、自分の中で放浪息子ほどハマれないのは。
変声
誠実に向き合うことの大切さを物語る短編集 #1巻応援
変声
兎来栄寿
兎来栄寿
『銀のくに』と、この『変声』はやしわかさんの初単行本が2冊同時発売となりました。 こちらは、表題作の「変声」と、それに連なる「変声~それから~」「変声~蕾(つぼみ)」、そして「モダンにめしませ」の4編を収録した短編集です。 表題作の「変声」については、以前に↓で書きましたのでご参照ください。 https://manba.co.jp/topics/43263 「変声~それから~」を読むと、サブキャラクターたちの掘り下げによって「変声」の魅力がさらに立体的になります。 「変声~蕾(つぼみ)」は、「変声」本編を読んだ人へのご褒美のように感じます。 「モダンにめしませ」は、恋する隼人くんがバイトをする古着屋で買ったコートに宿ったモダンガールの幻霊に戸惑う、20歳の女の子・陽奈の物語。 自分に自信のない陽奈でしたが、可愛くない女の子なんていないと鼓舞してくれるモダンガールの影響で、陽奈は少しずつ変化を遂げていきます。 モダンガールが語る ″己を知らずに合わないことや興味のないことを 無理にやってもダメよ 彼の好みの中で自分の好きを見つけなさい それはこの恋に限らず今後のアンタの武器にもなるわ″ というのは、すごく良いアティテュードだなと思いました。たとえ恋が実らなかったとしても、確実に自分は成長できる。10代初期かその前に知っておきたい言葉です。 恋をすることでより自分に向き合い、今まで知らなかった自分も知っていくところは「変声」の終盤に最後にラジオで語られた誠実な言葉とも重なりました。 『銀のくに』もそうですが、蟠るものもありながらそれを真っ当に乗り越えていく姿を見て心に風が通ります。 総じて「誠実に向き合う」ということの大切さ・尊さを語ってくれる短編集です。はやしわかさんは今後もますます活躍していくであろう方なので、今からぜひ注目してみてください。
年齢制限付き乙女ゲーの悪役令嬢ですが、堅物騎士様が優秀過ぎてRイベントが一切おきない
あんなヤンデレ男たちに妹をやれるか!
年齢制限付き乙女ゲーの悪役令嬢ですが、堅物騎士様が優秀過ぎてRイベントが一切おきない
ゆゆゆ
ゆゆゆ
それから、ヤンデレ男たちに殺されてたまるか!! あと自分の推しはかっこいい!!! 行動パターンが上述の主人公。 ひょんなことから、R指定乙女ゲームの世界へ転生してしまったことに気づいてしまう。 攻略対象者たち、表の顔はさわやかなのに、あいつもこいつも裏の顔はヤンデル。 R指定乙女ゲーのため、ゲームのヒロインは攻略対象者と18禁のあんなこと、こんなことを… おまけに、ヒロインが誰を攻略対象者として選んでも、自分は死ぬことがほぼ確定していることにも気づいた。 つまるところ、悪役令嬢役。 そしてさらに思い出してみると、ゲームのヒロインはかわいいかわいい実の妹! ゲーム通り進んだら、妹はヤンデレと18禁展開の上に自分は殺される。 八方塞がりのような状況の中、妹かわいい!推しが好き!!の思いで、次々と困難に立ち向かっていく。 主人公の推しが、ゲーム内では顔が怖いとものすごく恐れられているキャラクターで、でも実直で優秀。 ヤンデレだらけのなか、差し込む光。 結果、闇のようなRイベントは、推しによって叩き潰されてしまう。 すごく頼りになる。 年齢制限付きゲームへ転生した話だけど、年齢制限要素は少ない。 主人公は生き残れるのか、はたまた推しと結ばれるのか。 妹はヤンデレに食われてヤンデレ化してしまうのか。 乞うご期待。
ソイ・ストーリー まんが家はタイの小路をゆく【タテスク】
まだまだ溢れるタイの魅力 #1巻応援
ソイ・ストーリー まんが家はタイの小路をゆく【タテスク】
兎来栄寿
兎来栄寿
『タイのひとびと』、『タイランドクエスト』の小林眞理子さんが、新たにタテスクコミックにて描くタイの実録エッセイマンガです。 前作までの魅力はそのままに、また新たににさまざまなタイの魅力を描いて届けてくれます。 小林眞理子さんのマンガは、読みやすいすっきりした絵柄でありながらも、異国の地であるタイの街並みや食べ物などは情報量濃く絵でしっかり描きこまれている絶妙なバランスが良いです。 1話で言えば水上バスが走る運河の様子であったり、夥しい電線の上を闊歩するリスであったり。同じアジアでも、景色の全然違うタイのありようはとても興味深いです。 iPadとApple Pencil片手に、そんな異国で悠々自適に執筆活動をしているさまを見ると「良いなぁ〜!」と思わされます。最近は円安で東南アジアから日本の方が物価が安いと遊びに来る話も聞きますが、タイやベトナムなどはまだ日本人的な感覚からするとリーズナブルに満喫できる場所で良いですよね。 私は東南アジアは行ったことがないですが、興味はあるので一度1〜2週間くらいゆっくり滞在してみたいです。そしてこの作品の中でたびたび描かれているような、タイの人々の温かさや大らかさに直に触れてみたいですね。 現在は単話ごとの購入ですが、5話の内3話までは無料で読めるのでそちらだけでも読んでみてください。タイにそこまで興味がないという方でも、単純なマンガの上手さと面白さで楽しめるのではないかと思います。
特装版「女が叫ぶとき~戦争という地獄を見た~」
「ヒロシマのおばちゃん」を読みたくて購入
特装版「女が叫ぶとき~戦争という地獄を見た~」
ひさぴよ
ひさぴよ
https://www.shogakukan-cr.co.jp/book/b110795.html 『漫画が語る戦争 焦土の鎮魂歌』(小学館クリエイティブ)で読んだ曽根富美子の短編「ヒロシマのおばちゃん」が衝撃的だったので、もう一度読みたいと思って電子書籍版を探してたら、この短編集に収録されていた。 「ヒロシマのおばちゃん」以外の短編は、戦争の話というよりちょっと昼ドラっぽい話が多いものの、それでも表題作を読むためだけに買っても損はないと思う。 作品の詳しい時期は分かってないのだが、状況からして1990年代頃の設定と思われる。広島での戦争体験を語り継ぐの”一人のおばちゃん”を通して、戦時中の自身の半生を振り返るところから物語は始まる。巧みな語り口と、曽根先生お得意の、不幸で陰湿な心理描写にグイグイと引き込まれてゆく。そしておばちゃんは不幸のドン底と同時に、原爆の日を迎えるのだが…。 変わり果てた広島の街を、怨念そのものとも言える鬼気迫るタッチで描き出し、一度目にしたら忘れられないような光景がこの漫画にはある。おばちゃんは最後に「あれは地獄だったよ」とだけ語る。と同時に、この出来事が教科書の中のたった数行に収まってほしくない、と願うのだった。 個人的には「はだしのゲン」と同じく、ぜひ読み継がれてほしい戦争漫画の一つだ。
びゅーてぃふるえぶりでい
ビューティフル・エブリデイ(1)【電子限定特典付】
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