異星人の描き方がスゴイ!
未知の文明を築いてきた異星の住人の思考を上手に描いている。一番にすごいのは表向きの建前の思考と、裏側の種族としての思考をうまく書き分けていた点。 あからさまな侵略者と戦うといったよく見る展開にならなかったのもよい。素晴らしいSFマンガ
野辺山雄一は仕事ひとすじの会社人間。だが、出世が決まった矢先、息子の翔太が地球外文明への親善大使「メッセンジャー」であることが判明、宇宙へ行かなければならなくなった!危険な旅に幼い翔太ひとりで行かせるわけにはいかないが、自分も行けば出世の道は閉ざされる…。悩んだ末に、一度は残ると決めた雄一だったが…!?
年末年始に実家の田舎に帰りました。夜中に友人と二年参りがてら深夜徘徊をしましたが、いや、とにかく星がキレイでした。実家にいた頃には気づきませんでしたが、夜でも明るい東京とは比べ物になりません。ああ、宇宙へ逃避したい…。齢30にして逃避願望は第二宇宙速度をついに超えました。
私にとって宇宙物の漫画といえば手塚治虫の『火の鳥』の宇宙編や望郷編、藤子・F・不二雄の「一千年後の再会」など、果てない宇宙の冷たさが強調された作品ばかりを思い出してしまいます。けれど今回紹介する『宇宙家族ノベヤマ』は少し違う。宇宙を旅する地球の一家族のお話です。
それは、地球の天文台が地球外文明から発信された電波を受信したことからはじまります。そこには宇宙へ飛び出すための技術と、文明がある他星系へ渡ることができるスターゲイトの座標が記されていました。電波を解読した地球人は、そこにただ一つの条件があることを知ります。その条件とは「メッセンジャー遺伝子と呼ばれる特定の遺伝子配列をもった人間を使者にせよ」というもの。日本では、まだ8歳の野辺山翔太がメッセンジャー遺伝子を持つものとして発見され、家族と一緒に5年に及ぶ宇宙旅行へ飛び立つことになります。
しかし、この作品の主人公は野辺山翔太ではありません。彼の父親、野辺山雄一です。雄一が仕事ばかりに熱中していたために、野辺山一家は崩壊寸前。家族との絆をとりもどすのも旅の目的の一つです。
旅をしていくなかで、地球よりはるかに進んだ文明を持つ異星人とノベヤマ一家と出会います。
群を抜いた科学力を持ち、公平な判断と高潔な精神で指導者となっているルゴウフ人。性はなく、雌雄同体で子供を育てるホルン人。精神的退廃を防ぐために紛争の種を残し続けるチクチルン人。異形な宇宙人を前に大人が尻込みする中、翔太だけは天真爛漫にコミュニケーションをとっていきます。 先進宇宙文明との数々の邂逅から、メッセンジャー遺伝子の意味に雄一は気付き始めます。なぜメッセンジャー遺伝子を持つ宇宙人は皆、友好的なのか?姿形の違う宇宙人に感じる共感の正体はなにか?
それは、DNAにとってどのような意味があるのか?
その答えを知っていくくだりは圧巻です。遠く宇宙へ旅立って得た答えを胸に、ノベヤマ家はまた地球に戻ります。自分で得た答えと与えられた宿題を胸に、雄一はどのような行動をとるのでしょうか?
火の鳥を読んだ時のような、宇宙と自分が一体化するような本当に壮大作品ですよ!これは!