この、今からちょうど半世紀前に描かれた作品の、背景描写やコマ割り・画面構成を見ると、そのあまりの強烈さに茫然とする。 石森(石ノ森)章太郎の凄さというのは、現代の読者にはあまりよく分からないと思うけれど(いや、自分もそうです。特に晩年の「HOTEL」とかを読んでも、別になーんにも感じません)、彼が、手塚治虫が驚愕し嫉妬するほどの途轍もない才能であったことを、まざまざと見せつけてくる。 (いや、『仮面ライダー』や『ロボット刑事』の漫画版導入部とかも、酔っ払っちゃうくらいカッコイイですが) とにかく、同時期に描かれた他の漫画作品と比べてみると良い。まったくクオリティーが違う。 『リュウの道』は、劇画の興亡や『AKIRA』の衝撃を経てデジタル作画全盛になった今の目で見ても、少なくとも「画」的には、まったく「古く」なっていない。充分に刺激的だ。 50年前ですよ、50年前。 凄いとしか言えない。 以下、余談を。 この『リュウの道』の大ゴマ使いは、当時の同業者から「手抜きだ!」と言われていたと聞いたことがある。 その意見もまた、時代の中で正しいものかもしれない。あくまで今の目で見て刺激的ってことかもしれないですから。 でも、先進性ってのは、そういうことでもあるんですよね。 石森章太郎の絵的な天才性を知りたい人は、『オバケのQ太郎』の初めのほうを読むのが、一番簡単です。 オバQは「藤子FがQ太郎、藤子Ⓐが正太、北見けんいちが背景、石ノ森章太郎とつのだじろうがその他の人物を描いていた」(Wikipediaより)というのは、なに気に有名なのですが、石森の描くモブっぽいキャラだけ、本当にケタ違いに柔らかで活き活きとしているのが、はっきり分かります。メインキャラを描いている藤子ふたりとベーシックな作画能力が違いすぎるのが、なんとも言えない気分になります。 (藤子おふたりも、後にもちろんそれぞれ異なった形で素晴らしい進化を遂げるのですが)
@(とりあえず)名無し

上に描いたオバQについては、このマンバの『オバケのQ太郎』ページ「1巻を試し読み」を見てみるだけで充分ですよ。

例えば、ド頭、第1話「Qちゃん誕生」のP1、1コマ目のQ太郎や正太の絵の硬さと、3コマ目の上からスルスル降りてくる忍者軍団の滑らかさの違い!
それ以降も、ずっとモブ的キャラクターの柔らかで艶やかな「動き」が際立っているのが、一目瞭然です。

正に手塚治虫の後継として、若き石森章太郎の天才性が当時いかに同世代の「後の巨匠たち」を圧倒していたか、残酷なほどクリアに分かると思います。

身の毛もよだつ先進性にコメントする
私の女神が今日も推せる ~これからも、いつまでも~
絡み合い重なり合う群像百合 #1巻応援
私の女神が今日も推せる ~これからも、いつまでも~
兎来栄寿
兎来栄寿
昨年、電子書籍のみで発刊された百合オムニバスがこの度新装版となり再構成されて紙・電子で発売となりました。 1話だけ切り取ってみても相当に満足度の高い百合短編が、相互に絡み合う群像劇として連作短編で読めるこの幸福感。 嘉神さんへの好意がクラスメイトにバレてしまい本人にまで伝わって困惑する大宮さん。 隣の席にいる多賀さんが逆隣にいる諏訪さんに向ける強い視線に気づいている、大宮さんの友人の匙本さん。 同じ塾に通う1位と2位で、それぞれの学校では1位の「最強」を目指す澄海(すみ)と尊(みこと)。 おのおの異なるさまざまな関係性から生じるストーリーは、それぞれに魅力的で胸を高鳴らせてくれます。 個人的には傍観者としても当事者になった瞬間も完璧な匙本さん、好きです。 西大路かれんさんはもっと好きです。 最初は高校生同士として出逢って絆を育みだした彼女たちの、その先の物語が描かれるのも味わい深いところです。共に過ごした時が積み重なるからこそ生まれる酸いや甘い。感情や、振る舞いに凝縮されたものが百合好きを幸せにしてくれます。 帯を缶乃さんが書かれているのもむべなるかな。百合好きの方はマストバイです。
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