音楽少年たちの過酷な青春
恋愛要素がほとんどない正統派の音楽モノ。 扱う楽器がチェロというあたりが渋い。 突然現れた天才チェロ少年に対し、劣等感を募らせながらもコツコツ努力する主人公には好感が持てる。 そのライバル関係に重きを置いて描かれているため、コンプレックス描写が重苦しく辛いが、徐々にそこから解き放たれていく姿がいい。
海難事故に遭い、暗い海原を漂い、死の淵にあった郁未。彼を岸まで導いたのは、鉄雄が弾くチェロの“音色”だった――。鉄雄の家で暮らすようになった郁未に、鉄雄がチェロを教え始めたことで、少年たちの未来が大きく動き始めた――!!
これまで最高でも3巻までで作品を完結させていた穂積さん。初めて4巻に達したこの作品だけど、3巻までは1冊毎に結構大きく物語が動いてる感じがあったのに明らかに4巻はスローペース。これは完全に長期連載でじっくり鉄雄たちの成長を描く構えだ。
思えばこれまでは物語全体に大きな仕掛けを構えて、それを短~中編で綺麗にまとめ上げるという作風だった。今作でも仕掛け自体はあるけども、その仕掛けとそれぞれのキャラの関係性や心情変化がその仕掛けと強くは結びついてなくて、純粋な人物の表現をメインに勝負されている印象がある。もしかしたら新しい方向への挑戦をしている作品なのかもしれない。
4巻まで読了。