「残酷な神が支配する」読んでみた
※ネタバレを含むクチコミです。
母とふたり、ボストンで暮らす15歳の少年ジェルミ。友達に恵まれ、ボランティアと勉強に励む幸せな生活を送っていた彼の日常は、ある男との出会いで一変する。母・サンドラの婚約者で大金持ちの英国紳士・グレッグ。絵に描いたような理想の義父の中には、恐るべき悪魔の顔が潜んでいた。サンドラの幸福を盾に、ジェルミに肉体関係を迫ったのだ。苦痛と苦悩に満ちた地獄の日々が始まった。愛と憎悪、喜びと悲しみ…綾なす複雑な人間の感情を、萩尾望都が熟練のペンで描き切った壮大なるヒューマン・ドラマ、開幕。
個人的にクリスマスシーズンに読みたいマンガNo.1。タイトルに偽りなしの残酷な物語です。
主人公・ジェルミ視点から始まる物語が、ジェルミの受難・告白のあとに時が巻き戻り義兄・イアン視点から見た物語に変わる構成が良い。
同じ生活空間にいて1つの出来事が起きたのに、2人の目に映っていた世界は信じられないほど異なっていたと明らかになったときの絶望は、読んでいる自分も心に穴が空いたと感じるくらい辛い…。
あまりにも残酷な事実というものは、人のひとりの心と体では受け止めることができない。でも到底立ち直れないほど自分が壊れてしまっても、人は寄り添うことで辛うじて前を向くことができる。
ジェルミとイアン。2人がそれぞれ受け入れがたい地獄のような事実を抱えて、なんとか生きていく姿が儚くて、強くて、美しい。
(画像は『残酷な神が支配する』萩尾望都 第1巻より)