あらすじ

義父グレッグの常軌を逸した行為にさいなまれ、ジェルミは追いつめられていた。誰にも自分の苦悩を打ち明けられない。抑圧された精神は極限状態に陥り、日常生活にも侵食し始める。やがてグレッグへの憎しみは、殺意へと変貌していく。たまりかねたジェルミは、精神科医・オーソンに救いを求める。病んだ心の回復には真の愛情が必要だと諭されたジェルミは、口のきけない少女・バレンタインやオルガニストのナディアの優しさにひとときの安らぎを見出した。
残酷な神が支配する 1巻

母とふたり、ボストンで暮らす15歳の少年ジェルミ。友達に恵まれ、ボランティアと勉強に励む幸せな生活を送っていた彼の日常は、ある男との出会いで一変する。母・サンドラの婚約者で大金持ちの英国紳士・グレッグ。絵に描いたような理想の義父の中には、恐るべき悪魔の顔が潜んでいた。サンドラの幸福を盾に、ジェルミに肉体関係を迫ったのだ。苦痛と苦悩に満ちた地獄の日々が始まった。愛と憎悪、喜びと悲しみ…綾なす複雑な人間の感情を、萩尾望都が熟練のペンで描き切った壮大なるヒューマン・ドラマ、開幕。

残酷な神が支配する 2巻

まるで蜘蛛の糸にからめとられるように、グレッグの獲物と化したジェルミ。逃げるように寄宿学校に転入したものの、帰宅する週末ごとに義父との悪夢のような時間が待っていた。回を重ねるごとにしだいにエスカレートする行為に、ジェルミは心身ともに激しく消耗していく。それでも、母の幸福のためにはグレッグの要求を受け入れるしかなかった。そんなある日、グレッグの先妻の姉・ナターシャが、ふたりの忌まわしい現場を目撃するが…!?

残酷な神が支配する 3巻

義父グレッグの常軌を逸した行為にさいなまれ、ジェルミは追いつめられていた。誰にも自分の苦悩を打ち明けられない。抑圧された精神は極限状態に陥り、日常生活にも侵食し始める。やがてグレッグへの憎しみは、殺意へと変貌していく。たまりかねたジェルミは、精神科医・オーソンに救いを求める。病んだ心の回復には真の愛情が必要だと諭されたジェルミは、口のきけない少女・バレンタインやオルガニストのナディアの優しさにひとときの安らぎを見出した。

残酷な神が支配する(4)

クリスマスを控えた冬休みのある日、ジェルミはついにグレッグ殺害計画を実行に移した。車のブレーキに細工し、交通事故を起こさせて彼を葬る。ジェルミのもくろみどおり車は事故に遭い、炎上する。すべては完璧だった。だたひとつ、その車にサンドラも同乗していたことを除けば…。自分がもたらした最愛の母の死。墓前に立ちつくすジェルミの呟きを耳にしたイアンは疑惑を抱く。まさか、ジェルミが?イアンは事故の真相を探るべく、ジェルミを追求し始める。

残酷な神が支配する(5)

ジェルミを疑い執拗に告白を迫ったイアンだが、ようやく彼が語りだした真実は、あまりにも衝撃的なものだった。信じていた父の姿が揺らいでいく不安とジェルミへの不信で苦悩するなか、イアンは二人の犯罪の確かな証拠を探し始める。ところが、直後に入った、父の事故は車の欠陥のせいであったとの知らせに、混乱したイアンはジェルミの告白を「否認」してしまう。ショックのあまり、アメリカへ帰国するジェルミ。そして、イアンはすべてを忘れようと決意する。

残酷な神が支配する(6)

アメリカへ帰国したジェルミは、ドラッグに溺れ体を売って暮らしていた。一方、とうとうグレッグの犯した罪を認めたイアンは、ジェルミを追ってボストンへと渡る。二度とおまえの痛みに目をつぶらない。そう誓ったイアンは、ジェルミをイギリスへと連れ帰り、カウンセラー・ペネローペの元へと通わせる。バレンタインの双子の兄・エリックや、ナディアの妹・マージョリーらと新たな人間関係を築き始めたジェルミだが、心はいまだ悪夢に囚われたままであった。

残酷な神が支配する(7)

更正を約束し、ハムステッドでイアンとの新生活を始めたジェルミ。しかしそれは、ドラッグと売春に溺れる生活に戻りそうになる危うい日々であった。そんなジェルミを救おうとするイアンは、逆に彼の心の闇に引きずられるようにして肉体関係を結んでしまう。金を払ってまで関係を続けようとする、この欲望は愛なのか…?嵐のようにおしよせる混乱と苦しみの中、イアンはナディアに別れを告げる。イアンとジェルミ、迷走する二人の感情は、ナディアを巻き込み、新たな苦悩を生み出そうとしていた。

残酷な神が支配する(8)

ジェルミへの愛を伝えたイアンと、イアンを愛していると言いながらも、彼の思いを拒絶するジェルミ。二人は失踪していたナターシャと、リン・フォレストの森で再会を果たす。ナターシャとの会話の中で、ジェルミだけでなく、自らの心にも深く暗い空洞があると知ったイアンは、過去の出来事の真の意味を探るため、再びジェルミにグレッグとの関係を語らせる。しかし、その先に光が見えると信じての対話は、マージョリーの突然の自殺未遂により、出口すらみえなくなっていく。

残酷な神が支配する(9)

苦しみながらも、過去を語り続けるジェルミ。ジェルミはかつてお互いに心の傷をかいま見たことのあるバレンタインに会うため、エリックとともにスエーデンを訪れる。エリックとの再会で、言葉を取り戻したバレンタイン。彼女の告白から、彼女が抱える罪と罰、そして勇気を知ったジェルミは、イアンに対する依存から脱却するため、復学の準備を始める。手の届かない場所で回復し、距離を置こうとするかのようなジェルミにイアンは…!?

残酷な神が支配する(10)

復学したジェルミが突然ハムステッドのイアンの元へ戻ってきた。それは、あの自動車事故からちょうど一年がたった日であった。悪夢の中で、遭難するかのような数日の後、ジェルミは己の罪を知る存在であるイアンが「必要だ」と告げる。傷つき戸惑うイアンを利用することで過去の記憶を封じ込めたジェルミ。だが、カウンセラー・ペネローペの言葉が呼び水となり、サンドラに対する思いが爆発してしまう。追憶の中に現れる、グレッグ、サンドラ、そしてジェルミとイアンの真の姿と愛とは…!?