これぞジャパニーズSF
今だとサイバーパンクと言われるものが流行った時代、大友克洋「AKIRA」や「幻魔大戦」などを代表としたジャパニーズアニメがSFで少年たちの夢を拡げていた頃の素晴らしいアートのような作品。 もちろんマンガとしてストーリーも面白いし絵も構図もキャラクターも坂口尚らしくてとても素晴らしい。 「石の花」と並ぶ坂口尚の傑作。
近未来を舞台に、超高性能バイオチップ「我素」(がそ)をめぐって巻き起こる人類の攻防を描くSFアクション。「学習」「記憶」を繰り返し「自己増殖」、そして「自我」を持ち「変態」までをも始めた新型バイオチップ「我素」。しかし増殖過程で人間に有害な物質を放射することが分かり、政府から永久凍結を命じられる。ところがプロジェクトメンバーの日暮月光博士が「我素」を持ち出し行方をくらましてしまった。その後、世界各地ではデータバンクがハッキングされ、「VERSION」というメッセージが残される事件が相次ぐ。日暮博士を尊敬する元研究員の大沢木四郎は私立探偵・八方塞(はっぽうみつる)に博士の捜索を依頼するのだが……!?
魂の詩人こと坂口尚のおくるSF冒険活劇。
短編では漫画で詩を描くという前代未聞の試みを大成功させ一躍孤高の人になり、これがもうほんとうに凄まじい、色のない白と黒の漫画から色彩がほとばしり、部屋で読んでいながらそよ風がふわりとよせて、しかも草の匂いまでただよってくるという……。
そんな魂の詩人が長編を描いたらどうなったかといえば、哲学になった。詩と哲学はコインの裏表とよく言われるけれど、その言葉に反せず、白と黒のコマの連続がグイグイと真理に迫っていく。詩に書かれたものとは真理そのものであり、哲学とは真理に至る過程である。描かれた人物や風景はほとんどその意味を失って白と黒とに回帰していき、しかし、そのギリギリのところでかろうじて物語がすすんでゆく。