人間の生死の危うさと霊峰富士の底知れなさ
電車の運転手たちの間には「天気が良くて富士山がはっきり綺麗に見える日には人身事故が起きる」という迷信があり、実際にそんな日に運転していたところ今にも飛び込んできそうな女がホームいたが、飛び込んできたのは女ではなく隣にいた男だった。しかし実は女にも死にたい理由があって…。人間の生死の危うさと霊峰富士の底知れなさが不思議とマッチしていて、今までに読んだことがないような感覚になりました。どの話も奥深いんですが、個人的には人身事故が起きてしまった運転手さんはどんな気持ちになるんだろうと常々思っていたので、一話目が印象に残りました。
生きてるから素晴らしい、死ぬから悲しい、みたいな単純な話ではないんだよなと思える(いや勿論素晴らしいし悲しいんだけど)。富士山は象徴的に描かれていて、実物よりもかなり傾斜がきつい。この違和感によって、自分の中の富士山のイメージが浮き彫りになる。
二話の最後に出てきた「殺意にも似た元気」てのが気に入った。