ブラックサッド

マンガ家にファンが多い(気がする)海外マンガ

ブラックサッド 大西愛子 ファン・ディアス・カナレス フアンホ・ガルニド
ANAGUMA
ANAGUMA

メビウスとかマイク・ミニョーラみたいになんとなく「日本のマンガ家のあいだで名前が通っている海外マンガ(家)」ってのがあると勝手に思ってるんですけど『ブラックサッド』はその中ではまだまだ知られていないとさらに勝手に思っています。なので今日このクチコミを読んで知ってほしい。 マンガ家に人気の理由の一端はページを開いてすぐわかるんですけど、作者は元ディズニーのアニメーターでとにかくべらぼうに絵がうまいです。 その絵のうまさも、正確な形を描き出すデッサン力、演出に合わせた色彩感覚、決まりまくった画面構成(レイアウト)…と、もう絵を描く人だったら喉から手が出るくらい欲しい物が全部網羅されています。 まず動物擬人化ものって技術がないとどうしてもコミカルにやりがちというか、生き物の構造を無視した描き方に逃げちゃうことが多いというか…写実とデフォルメのバランスが難しいジャンルだと思うのですが、本作の場合は動物がきちんと描けるひとなんだなというのが一瞬で理解できます。 海外マンガに慣れてない人が敬遠しがちなフルカラーも色合いが水彩ぽくてソフトですし、各場面に合わせた演出としてコントロールされているので違和感なく読めるんじゃないかなと思います。「マンガを読む」という行為を邪魔しない、むしろ上手に手助けするような色使いがされています。 色合いとダブルで効いているのがパキパキとしたカメラアングル。作品のハードボイルドなテイストにすごく合っていて、この辺りも映像畑出身の方の上手さだな…と舌を巻いてしまいます。 …とダラダラと書いてきましたがひとまず試し読みで見てほしい作品です。海外マンガ、「百聞は一見にしかず」タイプの作品が多いですが、そのなかでも『ブラックサッド』は特に「見たらわかる!」度が高いマンガだと思うので…。

馬なり1ハロン劇場

日本競馬漫画界のこち亀

馬なり1ハロン劇場 よしだみほ
ピサ朗
ピサ朗

もはやそう言っても差し支えない長期連載ギャグ漫画。 基本は擬人化された競走馬たちやホースマンをネタにしてレースやドラマをギャグ仕立てで描いていくショートギャグなのだが、連載年数が30年以上という長さ、そしてネタにするのが競馬だけあってその当時の血統地図、観客目線で感じられたドラマ、万馬券、馬に対する印象などなど、非常に広範囲。 基本はギャグ漫画とはいえ馬やホースマンを題材にするだけあり、茶化してはいけない話題には手を出さないようにしているが、牧場見学のマナーや当時の問題点(ストライキ、税制)なども触れており、コレを読むだけで浅いながらもかなりの広範囲、それこそこち亀で現代日本の通俗史を学ぶ程度には競馬史を学べる。 連載開始がオグリキャップブームを追い風にしてのことなので、必然的にそれ以降の年代が主要なネタ元になっているのだが、天の采配か、オグリキャップの引退=サンデーサイレンスの導入という日本競馬史の一大転機が重なっている事も有り、連載年数の長さも手伝い当時から現代に繋がる競馬事情を少なからず感じられるだろう。 ギャグ漫画としてはやはり競馬ネタがある程度分かった方が更に楽しめるが、クスリと笑わせてくるネタが多く爆笑と言った風情では無い。 ただし競馬知識不要なネタも多く、擬人化された動物漫画でもある事、ライトな話題が殆どなだけに競馬を知ったばかりの方、知らない方でも全く問題なく読める。

猫が西向きゃ

もう一つの世界があったら別の自分に会ってみたい!

猫が西向きゃ 漆原友紀
干し芋
干し芋

すべての物質は、絶えずゆらゆらとごく細かにゆれていて安定せずにあるものでそれは時にバランスを崩して形を変える。不完全であいまいな世界。これが、フローを呼ばれる現象が起こる世界。 と、現在私たちが住んでいる、世界。 この二つの世界にそれぞれ同じ人が同時代に住んでいる。 もちろん、職業も違うし、生活環境ちょっとづつ違う。 フロー現象は、人のこうだったらいいなぁとという思いで出てきてしまう、人起因と場所起因のものがある。 例えば、神経質な彼と付き合っていた片付け下手な彼女が、机の角にピッタリとリモコンを置く彼を見て自分のゴミ屋敷を見られては嫌だという思いから、町中から角が無くなり、すべての角が丸くなったり、お隣同士の同じ苗字の田中さん。表面上は、とても上手くいっているが、若い田中さんは、心の中で年配の田中さんを下に見ていた。そこで、現れたフローは、その格差分隣同士の高低が付き階段の多い街に変わってしまったり。 人の心のもやもやによって霧が発生し、フロー現象が起き、その心のもやもやが収まると元の状態に戻る。 この現象がいつ頃戻るのか?何が原因なのか?を現地に駆け付け解決していくのが、主人公のフロー処理業者のヒロタ。 そして、そこで、アルバイトをしているのが、フロー現象で35歳から12歳になってしまったコナンのような女子、ちまちゃん。 さらにフロー現象を感じ取ることのできるしゃちょうと言う名の猫。 テンポよくお話が進んでいくし、画もとても素敵なので面白く読めます。 爽やかな読後感で、私は、大好きな作品になりました。

今度は殺されたくないアザラシさん

"前世が視える"女性が遭遇したのは"前世での天敵"!? #1巻応援

今度は殺されたくないアザラシさん 魚住ユキコ さんかく。
sogor25
sogor25

24歳のOL・海野まひるには"人の前世が視える"という特殊能力がありました。 ちなみに彼女の前世は「北極に住んでいたアザラシ」。 そんな彼女の職場に新人が配属されてくるのですが、その新人・北村律の前世は「まひるの前世であるアザラシを食い殺したシロクマ」だったのです。 この作品はそんな2人と周囲の人々が繰り広げるオフィスラブコメです。 登場人物の前世が見えているのはもちろん主人公のまひるだけなんですが、前世の習性が現世にも影響を及ぼしているようで、「凶暴なシロクマ」が前世の律のことをまひるは異常なまでに警戒しています。 一方、前世のことなど全く知らない律はむしろまひるに好意を抱いていて、積極的にアプローチを仕掛けていきます。 その2人の世代を越えたすれ違いのやり取りが見ていてとても楽しい作品です。 また、登場人物の背後に時々その人物の前世が描かれているのですが、そのキャラが登場人物以上に濃い表情を見せることもあり、特にまひるの前世であるアザラシが見せる表情の可愛らしさもとても魅力的な作品です。 1巻まで読了