らんま1/2 〔新装版〕

人魚の変奏

らんま1/2 〔新装版〕 高橋留美子
影絵が趣味
影絵が趣味

今でこそ、もう珍しくはないのかもしれないが、高橋留美子といえば女性の漫画家としてイチ早く少年漫画の分野を開拓したひとでしょう。そんな性別の垣根を越えて活躍した漫画家が『らんま1/2』という水と湯をかぶるだけで男性女性の垣根をいとも簡単に越えてしまうマンガを描いている事実はたいへん興味深いことだと思います。 1/2という言葉のとおり、主人公の早乙女乱馬は男性とも女性ともつかない実に中途半端な存在として私たち読者の前に姿をあらわします。そして、まさしく、この中途半端な有様こそが高橋留美子という漫画家の特異な作家性だと思うのです。 あるいは地球を侵略しにやって来たはずなのに、そのまま居着いてしまった宇宙人は中途半端な存在ではなかったか(うる星やつら)。あるいはうら若い未亡人のアパート管理人と、大学浪人から就職浪人までしてしまうアパートの住人は、どちらとも中途半端な存在ではなかったか(めぞん一刻)。あるいは妖怪と人間とのあいだに生まれた半妖の少年は中途半端な存在ではなかったか(犬夜叉)。あるいはあの世でもこの世でもない境界に連れて行かれた過去をもつ少女と、人間と死神との混血の少年はどちらとも中途半端な存在ではなかったか(境界のRINNE)。 高橋留美子のマンガには、このようにして、どちらともつかない中途半端な存在がまず必ずといっていいほど見られるのです。それはあたかも女性漫画家の身でありながら少年漫画の分野に進出した作者自身のように。そして手塚治虫の『火の鳥』のように高橋留美子のライフワークであるように思われる『人魚シリーズ』、人魚とはまさしく中途半端な存在の代表格でしょう。古来よりどちらともつかない中途半端な存在としてよく知られる人魚は、高橋留美子の特異性にもっとも相応しいアイコンだったのではないでしょうか。

ぶっカフェ!

どんな失敗も受け止めてくれるやさしい世界「ぶっカフェ!」

ぶっカフェ! 小林ロク
たか
たか

表紙を見て「なんだ、イケメンたちにちやほやされる逆ハーものか」と思った人、ちょっと待ってください!! 微塵もハーレムじゃないです!! 3人ともお坊さんなんで! 壊滅的ドジのルリは、数々のバイトをクビになったすえ寺カフェ「喫茶去(きっさこ)」にたどり着きますが、またそこでもドジの連続。 想像を超えるドジに驚くお坊さんたち。 でも彼らはルリを見捨てません、お坊さんなんで! ドジなルリを見ていると多少苛立つかもしれませんが、むしろ逆。 こんな底抜けにおドジな子ですら包容してくれる優しい世界を知ることで、自分の心も癒やされていくんです。 またルリの恋についてですが、ルリはアルバイトを通じて仏教の世界への理解を深めていき、いつも優しく教えてくれるコウさんのことがだんだん気になりだします。なおコウさんはびっくりするほど女性に奥手でラブの進展は驚くほど遅い、そこがイイ…! 登場人物はみんなステキな人ばかりなので、嫌な気持ちになったり落ち込んだりする必要全くなし! ルリの成長&ピュアな2人のラブを見守っていると、いつのまにか仏様への理解も深まり心はまさにラブ&ピース。 優しさに包まれたい時におすすめです。 https://sai-zen-sen.jp/comics/twi4/buddhacafe/

アルキメデスのお風呂 単行本版

ありそうでなさそう?(いやないかなw)素粒子研究所内ラブコメ

アルキメデスのお風呂 単行本版 ニコ・ニコルソン
鳥人間
鳥人間

アルキメデスのお風呂ってあれか、黄金の王冠の逸話かな。 東海村のJ-PARCが監修しているということで、興味を湧いて読んでみた。 弁当屋店員でぽっちゃり女子の原陽子は仕事でもプライベートでもボロボロになり、駅のホームで自殺を図るという、いきなりなんとも重い話からスタートする。 しかし、そのとき助けた人物が(ちょっとおかしな)王子様のような理系男子。二人には意外な接点があり……といった感じでラブコメ展開へとつながっていく。 作中の舞台となるA-PARCは実質、実在のJ-PARCなのだろう。たぶん。筑波のKEKへは一般公開日に何度か行ったことがあるので、そういうときに見聞きしていたので存在は知っていたけど、さすがにこちらは行ったことがない。その内情が見て取れるというのは面白い。 ラブコメ要素には正直あんまり興味がない(笑)が、素粒子の基礎研究という何に役に立つんだかわからない研究と、暗中模索な恋愛模様を交錯させて描く様はなかなか面白い。それに各キャラクターがなかなか個性的で面白いし、1巻時点では各キャラクターの背景に何やら色々抱えていることがありそうで、この先が気になることは確か。おそらく今後登場するであろうエミィも曲者であってほしいなー。

魔都精兵のスレイブ

「アカメが斬る!」原作者がジャンプ+で新連載

魔都精兵のスレイブ タカヒロ 竹村洋平
mampuku
mampuku

「パパ聞き」コミカライズ版の竹村洋平と、「アカメが斬る!」のタカヒロによるバトル漫画。女性にしか発現しない異能力により女だらけとなった軍隊に、成り行きで入ることとなった少年主人公という「インフィニット・ストラトス」みたいな話ですね。 ヒロインが能力で主人公を使役する代償としてご褒美の○○をしてしまう、というのは一見ありがちな能力バトルのお約束なようで、使役相手の内なる欲求を満足させてあげるというのは少し斬新です。「女社会に放り込まれる」「美少女の奴隷にされる」というストーリー上のドM要素だけでなく、性癖を見抜かれて満足させられてしまうというあらゆる意味でのドM仕様の美少女漫画となっています。 肝心の絵のほうも流石のクオリティですが、美少女的な可愛さに関してはむしろ前作よりも腕を上げているように見えます。しかしながら、矢吹健太朗や赤松健、「五等分」の春場ねぎに「天野めぐみ」のねこぐちなど少年漫画のお色気美少女業界めちゃくちゃハイレベル競争なので、竹村先生にはさらなるパワーアップとスケールアップを期待したいです。