がらくたストリート

全ての知識は等価である

がらくたストリート 山田穣
ナベテツ
ナベテツ

自分がまだ小学生の頃、母ちゃんが兄貴に買っていた旺文社の「高校合格」という雑誌に、恐ろしくひねくれたエッセイが掲載されていました。自らカットも描いていたのですが、そのページを書いていた男性は後にサンデー増刊で読み切り漫画を描いたりしたりもしていて、その名前はよく覚えていました。 それから10年後くらいにSPA!のコミック紹介のページで、自分の知らない「がらくたストリート」という作品が取り上げられていました(ライターがどなたかは失念してしまいました)。 かつて山田Xというペンネームで、という一文を読んで思わず目を疑いました。その後この作品を読んで、全て納得しました。 自分も基本おたくですが、中途半端であるという自覚は嫌になるくらいありますし、求道というのはまあ終わらんもんだとも思います。 この作品に関して、面白いけど説明出来ない、という評価をよくみます(まあ自分もよくそう言ってますが)。ギャグに関して「デペイズマン」という概念をエッセイで取り上げていたのは故・中島らもさんなんですが、「構図のズレ」によって産まれる笑いというのは、対象の間にどれくらいの距離があるのか理解出来るだけの知識が問われると思います。そしてこの作品には作者の培ってきたオタクとしての知識がふんだんに込められていますが、それが理解出来るかは突き詰めてしまうと読者次第ということになってしまいます。 おたくとオタクは恐らく違っていて、前者がクリエイターになって後者に受けるかどうかというある種の実験だったのかもしれないと、ふとこの文章を書いていて思ったりもしました。

江口寿史のお蔵出し

磨き上げたセンス

江口寿史のお蔵出し 江口寿史
(とりあえず)名無し
(とりあえず)名無し

マンバで江口寿史の作品一覧見たら、『パイレーツ』と『ひばりくん』と『キャラ者』と、この『お蔵出し』しか登録されていなくて驚いた。 ほとんどクチコミも書かれていない。 つい最近も、雑誌のillustration (イラストレーション)2019年3月号【特集:江口寿史】がよく売れて増刷されたとか聞いていたので、人気は衰えないなあ…と感心していたのだが、やはり漫画家としては、忘れられた存在になっているのだろうか…。 江口寿史って、むちゃくちゃ「センスの良い」漫画家です。 「センス」という曖昧な言葉が、なにを意味しているのかは、実は結構難しい問題なんですが、やっぱり江口寿史は、「センスが良い」としか言いようがない。 私見ですが、「センス」には二種類あると思ってます。 例えば、ジャンプで同時期に活躍した鳥山明みたいな、もう「生まれつき」としか言いようがないような才能を持った天才タイプのセンスの良さ。 もう一方は、自らの趣味性や嗜好を大切に捉まえて、その大きくはないかもしれないけれど堅固な才能を、多様な方法で一所懸命に磨いて磨いて、「センス」として花開かせた努力型のタイプ。江口寿史は後者だと思うのです。 漫画家としてもイラストレーターとしても、江口寿史は本当に磨き上げたセンスを持つ、優れた表現者です。 絵については、多くのかたが今も魅了されていて知られていると思うのですが、ホント、ギャグ漫画のセンスが良いんですよ。 テーマも演出もすごく考えられていて、読んでいてとても快適で、ちゃんと笑えて、読後こちらもセンスが良くなったように思える、風通しの良さがある。 もちろん、いろいろ「悪名高い」人ですから、未完の作品も多いですし漫画を描かなくなって長いので、作品世界の風物に少しアウト・オブ・デイトなところもありますが(ジャンプ系は特に)、彼のイラストは好きだけど漫画を読んだことがないというかたがもしいたら、とりあえず、この『お蔵出し』とかショー3部作(『寿五郎ショウ』『爆発ディナーショー』『なんとかなるでショ!』)あたりの短篇集で、そのセンスの良さに触れていただきたいです。

通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?

息子、いい子

通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか? 飯田ぽち。 冥茶 井中だちま
mampuku
mampuku

 くっさいしょーもないタイトルだなぁと思いつつも絵が好みだったのでつい読んでしまった……。  ちゃんと「ゲーム内世界」という舞台設定だったので安心しました。「異世界」でスキルとか属性とかやはり言われると少し萎えるので。。 ともあれ内容ですが、最序盤の第一印象としてはまぁ読みにくいったら。キャラ付けのためにか皆よく喋るのですがそれが冗長というか、無駄なセリフが多すぎてテンポよく読めない。絵も構図もそれほど上手いとはいえないですが、やはりそれ以上に言葉選びのイマイチさが目立ちます。  とはいえ「親同伴で冒険に出る」というのはアイデアの勝利だと思うし、ゲーム内世界という特殊な環境をメタな笑いに昇華してるのは上手いです。最初に出会った王様が「だってNPCじゃし…」と説明を面倒くさがるくだりの脱力感(笑) あの一言でこの作品がなにを狙っているのかがだいたいわかりました。異世界へ旅立ってからが本領発揮ですね。メタネタだけでなく、思春期の親子の微妙な距離感がほほえましく、単なる「バブみ」を売りにした漫画ではないんだなと良い意味で裏切られました。これは萌え漫画じゃなくてギャグ漫画なんだなと判ってからはとても楽しく読めています。