野原ひろし 昼メシの流儀

中年男性に響く安定した面白さ2

野原ひろし 昼メシの流儀 臼井儀人 塚原洋一
六文銭
六文銭

中年男性に響くといえば『1日外出録ハンチョウ』と2大巨頭だと思っている本作。 正直、言います。最初読んだ時 「野原ひろしである必要あるか?」 と思いましたし、最新刊読んだ今もその思いは変わらないです。 野原家の設定、必要あるのだろうか? しんちゃんも、ひまわりも、みさえも、シロも一切出てこないです。 セリフか、手とか体の一部しか出てこない。 そうなってくると、これはもう我々が知っている「野原ひろし」じゃない別の人間なんじゃないかと思えてくる。 というか、そう思えても、別に何の問題ないです。 有りていに言えば、おっさんが一人昼飯を食べるだけの漫画だからだ。 これが何故か面白い。 「孤独のグルメ」も、そうなのですが、ちょっとした料理の豆知識とともに、ひたすらおっさんが食べたいものを美味しそうに食べている。 ただ、それだけなのに不思議と面白い。 料理をどう食べていくかの順番を、思考で組み立てていく感じが読んでいて楽しいのか、いまいち言語化できないので、もう読んで欲しいとさえ思う。 孤独のグルメが好きなら、たぶん好きになると思います。 何も考えずに読めて気づけば全部終わっているという、するする読めて、そのわりに何度も読みたくなるクセになる作品です。

上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花

お酒は百合のおつまみです!

上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花 塀
ふな
ふな

京都ではビールと鮎が出会いものと呼ばれているようだが、百合とお酒もまた出会いものである。 二十歳の大学生・上伊那ぼたんが同じ寮に住む先輩たちと酔っ払いながらいちゃいちゃするガールズコメディ、『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』はそんなことを感じさせてくれる。     主人公の上伊那ぼたんは、これまでお酒を飲んだことはない。しかし寮長のいぶきがお酒を飲む姿がとても美味しそうだったことから興味を持ち、お酒を好きになっていく。いぶきを中心とした寮の先輩たちとお酒を飲みながら「近いちかい!」とというツッコミが野暮すぎて引っ込むくらいのいちゃいちゃを見せてくれる。     秘密を共有すると仲良くなると言うが、とある理由からいぶきはこれまで一人でお酒を飲んできた。しかし上伊那さんと秘密を共有してしまったことで、自然と上伊那さんと飲む回数が増えていく。 お酒は一人で飲んでも楽しい。でも二人ならもっと楽しい。     この漫画の大きな魅力の1つが、赤面する女性たちが非常に可愛いことだ。少し酔って頬をあからめた姿は可愛いし、その中でふいに漏れ出る好意にドギマギして赤面する姿はもっともっと可愛い。 お酒を飲むことで、甘えやすくなったり隙が多くなったり。そういう弱さみたいなのを見せ合うことで、どんどん縮まる距離にニヤニヤが止まらない。     ヒロインたちがいちゃいちゃする様を見ながら飲む、読者のお酒も美味しい。良いことばかり……なのは良いのだが。     **いつから百合は、お酒の「つまみ」だと思い込んでいたのだろう。** 中国の戦術で例えるならば、酒とつまみの関係性は酒が主攻でつまみが助攻だろう。しかし百合は、特にこの作品の百合は助攻なのだろうか。     **否、断じて否である。** もはや助攻である「つまみ」としての百合ではない。 「舌が欲しいなあ」とか「二人だけで来たいなあ……」とか、いぶきを赤面させる上伊那さんとのやりとりが、私にとってはむしろメインなのである。     お酒で少し緩んだ表情、こぼれやすくなる相手への気持ち。 (特にいぶきへの)破壊力抜群上伊那さんの天然小悪魔っぷり。 読者もお酒をつまみにすることで、よりそのいちゃラブ百合成分を最大限に楽しむことができる。 百合がお酒のつまみなのではない。お酒が百合のつまみなのだ。 **そう、我々はお酒をつまみに百合に酔っていたのだ!**     仕事終わりに、あるいは休日の昼下がりに。テキトーに買ったお酒を片手に、上伊那さんといぶきの楽しそうなやりとりに頬が崩れるくらいに酔う。 なんて素晴らしいんだ……(恍惚)     というわけで、この作品を読むとき、飲める人はぜひ好きなお酒を片手に読んでみて欲しい。 ビールと鮎に匹敵する出会いものがここにあることを、きっと実感できるはずだ。 お酒を飲みながら、彼女たちの赤面っぷりに酔いしれよう。読めば気分はプレミアムフライデー……。

ミスターズ~私の町のおじさんたち~

平均年齢50歳! おじさんだらけのモーニング新連載!

ミスターズ~私の町のおじさんたち~ 飛田漱
ななし
ななし

いや〜!!実はこれ本編を読む前からすでに、モーニング公式のツイートでカラー絵を見た瞬間一発で好きになっていた作品だったんですけど、ワクワクしながら雑誌(巻頭カラー)を読んだらストーリーもまあ最高でした!! 【第1話】 https://comic-days.com/episode/10834108156691507213 第1話は「大学進学を機に一人暮らしを始めるため新しい街にやってきた主人公・井ノ山春が、道すがら次々と個性的なおじさんたちとすれ違う」という話なのですが、たったそれだけなのにメチャクチャ面白い…! **「いや乙女ゲーかよ!!」と内心叫ぶくらい多種多様なおじさんたちが次々登場するのに、笑いを堪えられませんでした。** 乙女ゲーと書きましたが、若い女性が主人公でイケてるおじさんからゆるふわなおじさんまで出てくるにもかかわらず、**物語の雰囲気がしっかりと青年誌**なところが素晴らしかったです。1話の最後の日記に登場する「おじさん」の回数が多すぎるオチも最高でした。 **「陰キャ女子大生と平均年齢50オーバーのおじさんたちが織りなす、ゆるゆる町めぐりコメディ」**が、今後どう展開していくのかメチャクチャ楽しみです…!! 【モーニング】 https://morning.kodansha.co.jp/c/misters.html

1日外出録ハンチョウ

中年男性に響く安定した面白さ

1日外出録ハンチョウ 福本伸行 萩原天晴 上原求 新井和也
六文銭
六文銭

年齢のせいか、どんなに面白くても、3ヶ月後とか下手したら半年後の刊行速度についていけず脱落する漫画が多々ある私ですが(カイジも堕天録までのヘタレです。)本作だけは新刊を見落とさず購入してしまう謎の魅力がある。 内容は、カイジの破壊録で出てきた班長・大槻とその部下沼川と石和の3人の休日を描いた作品。 3人のおっさんの休日を描いただけ、と言われればそうなのですが、これが絶妙に面白い。 そもそも、破壊録を読むとわかるが、普段は債務者の集まり通称「地下牢獄」にいて、そこで3Kも裸足で逃げる過酷な重労働をしている3人。 そして、そこの制度で「1日外出券」というのがあるのだが、これが、べらぼうに高い値段で、安々と外には出れないようになっている。 だからこそ、この「休日の外出」というのは彼らにとって超がつくほど貴重なのだ。 貴重な外出を有意義に過ごすために、1食ですら手を抜かず試行錯誤し、 突き詰めて実行している様は、日々の生活にちょとした工夫で楽しくなるエッセンスが盛りだくさんだったりします。 ただの日常というよりは、おっさん世代が興味ありそうなもの(食とか大人の趣味とか)を中心に取り上げ、持論を展開してく様は興味深く読めます。大したことないテーマでも、熱量あれば面白い。 特に昔話など微妙に自分とかぶる話題があって、おっさんあるあるも個人的にはツボなんですよね。 (余談ですが、5巻にZoneの「secret base」を歌うシーンがあって、「君と夏の終り~ 将来の夢~ フンフフフフン ~」 とフンでごまかす姿は腹抱えて笑いました。昔、全く同じシーンを経験したので。皆そこ忘れるんだと。) ハンチョウだけでなく、平日労働している我々にとっても休日は重要なはずなんです。 これ読んで、もっと休日を、ひいては1日1日を大事にしようと思いました(大げさ)

うぶな27才とむくな11才

マンガ編集者(27)と担当作家の息子(11)の不思議な同居生活 #1巻応援

うぶな27才とむくな11才 瀬口たかひろ
sogor25
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この作品の主人公は「鬼の浄行寺」と呼ばれる漫画編集者浄行寺憂樹(じょうぎょうじ ゆき)さん。 彼女が担当の漫画家である小桜エイト先生の家でネームのチェックをしていたところ、先生の小学生の息子、茅(かや)くんが部屋に入ってきます。小桜先生がネームにボツを出されて「このままでは息子の学費すら払えない」と愚痴をこぼしたにの対して、浄行寺さんは「だったら息子を働かせればいいじゃないですか」「そういえば家事がおろそかになりがちでホームヘルパーを探してるんです」と半ば冗談で返します。 しかし、それを聞いた茅くんが「ボクのことまで気にかけてくれるなんて、浄行寺さんは天使だ」となぜか感激してしまい、その流れで本当に茅くんが浄行寺さんの家のホームヘルパーとして働くことになってしまいます。 この作品はそんな浄行寺さんと茅くんの不思議な同居生活の物語です。 浄行寺さんは仕事に関しては担当の漫画家に対してはもちろん、自分に対しても厳しく、私生活でも毎日のルーティンをきちんとこなしていく、そんな生活をしています。 そんな浄行寺さんなんですが、実は彼女は人付き合いを苦手にしていて、茅くんに対してもつい漫画家相手の時と同じように厳しく当たってしまい、彼にうまく接することができているかどうか内心ずっとモヤモヤしています。 一方の茅くんは絵に描いたように純粋無垢な少年で、浄行寺さんの厳しい言葉に対しても「自分のことを思って言ってくれてるんだ」と逆に張り切り、そして不意に浄行寺さんがちょっとした 優しさを見せた瞬間にはすごく感動したような素振りを見せます。 浄行寺さんはコミュニケーションに自信がなくてつい人を遠ざけるような発言をしてしまう、逆に茅くんは相手の発言を常にポジティブに受け止めて人との距離をガンガン近づけていく。 そんな真逆の意味で人との距離感が極端な二人が一緒に住み始めると、思っていた以上に距離感の近い茅くんに浄行寺さんは内心激しく動揺してしまいます。 なんとか上辺を取り繕うする浄行寺さんと、そんなことはお構いなしにまっすぐに浄行寺さんに接し続ける茅くん。 そんな二人の様子がとにかく微笑ましい作品になっています。 1巻まで読了

女の子が抱いちゃダメですか?

男女の"受け攻め逆転"ラブコメ!? #1巻応援

女の子が抱いちゃダメですか? ねじがなめた
sogor25
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主人公の24歳のOL、梶谷美月は有名商社勤めのエリートサラリーマン篠宮孝之さんと付き合っている。清楚な雰囲気の美月と爽やかで優しい孝之は傍からみると理想的なカップルに見えるが、美月には孝之に対して隠していることがありました。それは"男の人から積極的なアプローチを受けることが苦手だ"ということ。 例えば彼氏に頭をポンポンされたりだとか肩をぐっと抱き寄せられたりとか、そういう行為に対してすごくむず痒い思いをしてしまって気持ちが引いてしまう。そしてそのせいで今までの彼氏とは長続きせずにすぐに振られてしまう。そのことずっと悩んでいた。 孝之のことは本当に素敵だと思っていて、できれば長く付き合っていきたいと思っていた美月だったが、彼に愛想を尽かされないために隠そうとしていた彼女のこの性質が、本人も想像だにしなかった、彼からのアプローチではなく逆に自分から迫っていってしまう、という形で発露する。しかもそれが孝之さんと初めて一夜を共にするというタイミングで…という物語。 この作品、単行本の帯にも「男女逆転セックスラブコメディー」と書いてあるんですが、実は男女の”受けと攻め” が逆転したカップルというのを描いた作品です。 こう聞くとかなり特殊な設定の作品のように見えるんですけども、実はマンガ好きの方々には意外と受け入れられやすい設定なんじゃないかなと思います。 というのも、例えばBLマンガや百合マンガだと同性どうしで"攻めと受け"が描かれていて、つまりそこには "女性の攻め" 男性の受け" が存在しているわけです。そしてそれを読者はごく自然に受け入れているはずです。 ということは、男女カップルの中でも “女性の攻め"×"男性の受け” という組み合わせがあっても不思議ではなく、そう考えれば今作の設定もすんなり受け入れられるのではないでしょうか。 この作品は、美月と孝之、それぞれが相手との恋愛に悩む様子を描くことで、"女性の攻め" 男性の受け" という関係性をすごく自然に描いている作品です。1巻の段階では2人が思い描いていたいわゆる “普通の恋愛” とのギャップに悩む姿も描かれるんですが、2人が悩みながら試行錯誤した結果どのような関係を育んでいくのか、今後の展開が非常に楽しみな作品です。 また、漫画を楽しむという上でも、そして現実世界に当てはめたとしても、新しい価値観を得られる作品になってると思うので、恋愛漫画をよく読まれるという方はもちろん、BL や百合漫画が好きだとという方にも是非読んでみて欲しい作品です。 1巻まで読了

お姫様のお姫様

女子が好きな女子を好きな女子 #1巻応援

お姫様のお姫様 ホマレ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

女子が好きで、「運命の人」を探すために超巨大女子校に入学した南山ハイジと、そんな彼女が好きな北町さらら。ハイジのために「運命の人」探しを手伝うと宣言したのに、さららはハイジを諦めきれない。15万人の対象者から「運命の人」を探すのが先か、その前に二人は結ばれるのか......。 ♡♡♡♡♡ 序盤から驚かされるのは、「運命の人」探しが、割とあっさり成功しそうなところ。ハイジは庇護欲を唆るモテ体質。あっという間に周囲の注目を浴びる。 ......とは言ってもそう簡単にはいかず、とある理由から、ハイジとさららと、SNSでバズりたい陰キャの沼丘ていの、三人ぼっち行動が多くなる。 女の子を見てはキラキラしているハイジ、彼女のためにあたふた奔走するさらら、雑に扱われるていのコメディはテンポが良く、情緒のブレとツッコミのキレが強烈。「例のプール」「女子の情報を書き込んだノートの名前」など、細かなネタを随所にブチ込んできて、つい笑ってしまう。 ハイジも実はさららを大切に想っていることは随所に描かれていて、その度に「さっさとくっつけばいいのに......」と思いつつ「尊い!尊い!」とふぁぼを押したくなる自分がいる。 これは定期的に摂取したくなる百合コメディ!

ハコヅメ~交番女子の逆襲~

ギャグとシリアスが絶妙な警察漫画

ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 泰三子
六文銭
六文銭

元警察官が著者が描く、実録?警察漫画。 基本1話完結形式。 ぬるりとしたギャグ中心かと思えば、かなりシリアスな展開もあり、その配分が絶妙です。 警察官を見ると、何もしてなくても反応してしまいますよね。 警察手帳出されて 「・・・わかっているな?」 と言われれば、 「はい・・・申し訳ありません。」 と、誰だって言ってしまうと思うんです。(言わないか?) それくらい、権力というか存在感があると思うんです。 言ってしまえば「嫌われ役」を一手に担っている感じ。 そんな風に思っていましたが、本作を読んで、警察官が厳しく口うるさく取り締まる背景には、凄惨な事件の現場に立ち会ったことがあるんだと、痛感しました。 同じような事件を二度と起こしたくないし、我々市民に同じような経験をしてほしくないという強い思いがあるのだと。 取り締まられてグチグチ文句言われても、そんなことをおくびにも出さず対応していく様に格好良ささえ覚えました。 ちょっとした不注意が大事故になったり、ちょっとした見落としが大事件になったり。 解決したことよりも、解決できなかったことばかりマスコミに取り上げられたり。 労働基準法なんてあってないような労働環境だったり、だけど言うほど給料高いわけでもない。 読めば読むほど、警察官の実態がわかり、襟元正す思いでいっぱいです。 特に、ギャグを交えながら飄々とすすむので、説得力が増すんですよね。 「こんなに大変なんですよ」と言いまくるような感じがなく、説教臭くないところもグッときます。 あと、1・2巻の表紙が変わったように、どんどん絵もうまくなるし、どんどん面白くなってきます。 ドラマ化とかしたら映えそうだな。