僕の妻は発達障害

とある夫婦の"普通の日常" #1巻応援

僕の妻は発達障害 ナナトエリ 亀山聡
sogor25
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この作品は漫画家のアシスタントで夫の悟さんと発達障害を抱える妻の知花さんという夫婦の生活を描いた作品です。 タイトルを見ると少し固い内容をイメージされるかもしれませんが、表紙の絵を見ていただければわかるように、優しい絵柄で夫婦の日常を描いた、とても読みやすい作品になっています。 物語は主に夫の悟さんの視点で描かれておりますが、悟さんは夢である漫画家になかなかなれないことから自らを「ちゃんと生きられていない」という風に形容していて、そんな理由もあってか、発達障害を抱える知花さんに対してとてもフラットに接している印象を受けます。 知花さんと会話しているときや作品の中で起こるトラブルに対して悩んでいるときなどに悟さんは「発達障害」という言葉を使わずに言葉を紡いでおり、このことからも彼が「発達障害」そのものとは関係なく、知花さんという1人の女性に対して寄り添って生きていることが感じられる作品です これはあくまで私の個人的な感想なんですが、この作品は「発達障害」について描いている作品ではないんじゃないかと思っています。 「発達障害」は厚生労働省のホームページでも、病気ではなく生まれつきの特性で、そして個人差がとても大きいという特徴があると説明されています。 この作品も「知花さん=発達障害」という構図ではなく、知花さんの人物像を表現する根拠として「発達障害」を用いているように感じられ、悟さんも「知花さんが発達障害だから」ではなく、知花さんがどういう人物で、トラブルを解決するためにどうすればよいか、というのを一生懸命に悩んでいるように見えます。 つまり、悟さんが「発達障害について知る様子」ではなく、「愛する相手のことを理解していく様子」を描いている作品なのではないかと思っています。だからこそ「発達障害」自体が特別なものではなく、相手のことを知ることで理解し合える存在に感じられ、今まで発達障害と関わりがなかった方にも強く共感できる作品になっているのではないかなと思います。 他にも『アスペル・カノジョ』や『リエゾン ーこどものこころ診療所ー』、『見えない違い 私はアスペルガー』など、発達障害を取り扱った作品はいくつかあり、そんな作品と併せて読んでもらいたい作品です。 1巻まで読了

私はただものじゃない

只者の証明

私はただものじゃない 桐島いつみ
野愛
野愛

ただものかただものじゃないかって、なんの差なんでしょう。ただものだって誰かにとってはただものじゃないのかもしれません。 ごく普通の女の子・川田は転校先の学校で、生徒会長・澤田に「君はただもんじゃないね」と言われます。 その一言がきっかけで川田は「ただものではない」と学校中の噂になります。 スポーツも勉強もそんなに得意じゃない川田なのに、天才少女に違いないという周囲の思い込みからドタバタトラブルが起こり出します。 某芸人さんのすれ違いコントとかズレ漫才みたいに本来の意味とは違う捉えられ方をして、天才少女どころか宇宙人だの忍者だのと話が膨らんでいくのがめちゃくちゃ面白いです。噂が事実として膨れ上がっていく様が滑稽だけど怖さもあって、それがまたシュールな笑いに繋がってるのかもしれません。 とは言え、平和な事件しか起きない&オモシロの権化桐島先生だからこういう仕上がりになってるだけで結構怖い話よね…とは思います。 噂ってすぐ広まるけど払拭するのはめちゃくちゃ難しいですからね、ということで川田がただものであることを証明するためにとった行動にも注目です。 結局青春してんじゃねえか!っていうオチも含めてよかったです!

百合好きの男子高校生の話

もっと早く教えてほしかった百合好きコメディ…!

百合好きの男子高校生の話 あさがお
天沢聖司
天沢聖司

全然存じ上げなかったんですけどこちらの作品はTwitter発でバズりまくってたんですね。 https://twitter.com/asa_gao45/status/1090825080307777536?s=20 アマゾンで見かけて「ほーん、百合好きくんと百合好き好きくん的なやつか?」と思って買って読んでみたら想像以上にキレの良い百合好き男子高校生コメディで最高でした…! 読み終わってから評価2件しかついてないの嘘だろ…!? ってビビリました。 物語はヤンキーの杉川がオタクの須原に絡んだところ、まさかの推し百合絵師だったと判明し力関係が崩壊するところから始まります。そりゃクラスメイトが神絵師だったらもう拝むしかないじゃない…! 杉川は元々ヤンキーとして振る舞っていただけに最初は須原とその友人・吉田とちょっとギクシャクするのですが、途中から開き直ってただの百合好きとして仲良くなっていくところがホント好きです。高校生っぽい…! 絵師・須原のことを「先生」って呼んじゃうところとか、百合作品の良さを噛みしめるときに顔覆っちゃって語彙力フニャフニャになっちゃうとことか。ヤンキーのくせに中身完全にオタクな杉川がものすごく可愛い!! 良い百合小説を書くのにPixivアカウントを持っていないという吉田に杉川がバチギレするとこが最高でした。その気持ち痛いほどわかる。 スーパーヒロインボーイ、神絵師JKとOL腐女子が好きな人には特にオススメです…! 【追記】 あさがお先生について調べたら、『ジンガイさんとニンゲンくん』の人じゃないですかやだ〜〜!! いつも読んでます大好きです…! https://twic.jp/books/kLYh6kczFQoVZskEd8Qq/1 (↓自分の好きなアニメについてツイートしたら推し絵師が二次創作絵を描いてくれたの図。お金払いたいのわかりすぎる)

押して駄目なら押してみろ!

君が一番美味しいラブコメディー! #1巻応援

押して駄目なら押してみろ! 廣瀬アユム
ふな
ふな

令和2年でイチオシしたくなるような、読めば絶対ニヤニヤしちゃう魅力を本作は持っている! 人間は恋愛対象外、蛇にしか恋愛感情を頂けないことを隠しながら生きてきた学園のアイドル的女子高生・財部つくしが、なぜか新任教師の加賀美肇に恋してしまうというラブコメディ。     ファーストコンタクトで人が恋に落ちる瞬間を読者が目撃してしまうのけれど、なぜ好きになってしまうのか……というのはもちろん読んでいけば分かる。異種間ラブコメと謳っていることから、色々と察して欲しい。 ただ一言、**ヒロインの嗅覚が凄すぎる……(笑)**     自分の感情を確かめるために、先生をグイグイ押していくヒロインの姿は可愛いし、自分の感情の理由を自覚してからはさらに推していくヒロインの可愛さは無限大。 フェチズム全開で頬ずりしようとするわ、嬉々として舐められようとするわ、タイトル通りで押しまくり。 駄目でも引かない、前進あるのみ!     ファーストインプレッションでヒロインに抱いた優等生的なイメージが、読み進めていくうちに崩れていく。 **学園で被っていた仮面など、「好き」というエネルギーの前にはあっさりと剥がされてしまうのだ。**     舐めるという行為が、実は教師の加賀美に取っては大事な行為なのだけれど、JKを舐めるというあまりにも非日常的な光景(というか普通なら教育委員会案件)が、時にえっちな雰囲気があったり、邪魔できないような尊い雰囲気が漂っていたり。     先生はペロリスト(舐める人)として照れを持つ稀有な存在だし、つくしちゃんはペロラレリスト(舐められる人)として反応が完璧。 舐めたい人と舐められたい人で、需要と供給が見事に満たされている!WinWinの関係性なのが素晴らしい(!?) 舐めるという行為にこんなに魅了されるのは、かつてアフタヌーンで連載していた『謎の彼女X』以来と言っても過言ではない(これもヒロインのよだれを舐める良い漫画なんだ) **ヒロインが作った手料理よりも、ヒロイン自身が一番美味しいというから、先生も読者も困ってしまうんだよなあ!!!(笑顔)**     まさにタイトルに書いた、「君が1番美味しいラブコメディー」が嘘ではないことが、読んでもらえれば絶対に分かる。 読み終わった頃には、すっかり胃袋を掴まれてしまっているはずだ。読者はつくしちゃんを舐められないので、熟読して胃袋を満たすしかない!   **つくしちゃんが美味しく食べられる様(嫌らしい意味ではなく)を、ぜひ楽しんで欲しい。**     また、めちゃくちゃ押しまくるつくしちゃんだけど、実は赤面シーンが多いのも大きな魅力。 赤面しているヒロインは人類の文化遺産なのだ。押して押して押しまくりながら赤面するつくしちゃんを、みんなで堪能しよう!     **訳アリ高校教師✕訳アリ女子高生=ニヤニヤ必須のラブコメディ**   令和2年以降の人類史では上記方程式が成り立つということを、漫画好きの全ての人間に、ぜひ提唱させて頂きたい……! 電撃マオウ2020年6月号の表紙のつくしちゃんも最高に可愛いことを、最後に報告してこの文を終える。

響子と父さん

「ネムルバカ」(石黒正数)のアナザーストーリー

響子と父さん 石黒正数
六文銭
六文銭

本作を読む前にぜひ「ネムルバカ」を読むことをオススメします。 「ネムルバカ」は1巻完結となっておりますが、自分的には本作とセットで2巻とみなして欲しいッ…とさえ思っております。 小生「石黒正数」作品が好きなのですが、なかでも「ネムルバカ」は名作だと思っておる勢です。 本作は「ネムルバカ」の主人公の一人だった春香の「家族」を描いた作品。 「ネムルバカ」のアナザーストーリーともいえる位置づけ。 ネムルバカの衝撃的なラストで気持ちがロスした人は、この1冊を読めばなんとも救われた感じになるかと思います。 内容としては、春香の姉響子と父との日常を描いた物語。 突飛な行動をした父に響子が振り回される形で進んでいきます。 日常のちょっとした疑問や不思議を織り交ぜて面白くする様は、いつもの石黒節とも言える雰囲気です。 とにかく父が良い味を出しているんですよ。 破天荒な春香によく似た父で、頑固でシニカル、ぶっとんだ発想が「THE・昭和の親父」臭がしてたまらないです。 親父にだって何かと苦労があるのですが、誰もわかってくれない空回り具合と、それでも自分の価値観を曲げずに生きている様は不思議と勇気づけられます。 春香の過去や、ちょっとですが現状の春香も登場します。 あのラストで心配だった「ネムルバカ」ファンの人は一見の価値があると思います。 テーマとしては「家族」的なものなのでしょうが、 家族の暖かさだけでなく、身内故にままならない部分もあって、酸いも甘いも表現されているのが個人的に好きなポイントです。 「ネムルバカ」が思春期の衝動と葛藤的なものだとしたら、こちらの「響子とお父さん」は一歩引いた大人の味なのかもしれません。

結婚するって、本当ですか

青年漫画の偽装結婚ものは珍しい?#1巻応援

結婚するって、本当ですか 若木民喜
六文銭
六文銭

少女・女性漫画では、一大ジャンルになっていると思う「偽装結婚」ものだが、青年誌では珍しいなと思い読んでみた。 私、ドツボです。 「モブ子の恋」もそうなんですが、こういう恋愛に対して地味めなカップルが恋愛を意識していく過程みるの好きなんですよ。 それが例え、偽装でも。 特に、恋愛以外に強い価値観があって、それを中心とした生活に満足しているようなカップルーいわゆる恋愛脳ではないので、そこからどうやって発展していくのかが興味津々なのです。 本作も、そんな感じ。 主人公大原は、他人よりもワンテンポ遅れているようなのんびりした性格で、猫と暮らすことに生きがいを感じている。 ヒロインの本城寺は、人をみつめる癖があるのに無表情・無口なため職場で異様な怖さを出しているが、家で一人地図を眺めるのが好き。 二人共、家で過ごすことに喜びと生きがいを感じている。 そんな中、二人の勤務先の旅行会社で海外に出張しなければならない(しかも、ロシア)人員の選抜がはじまる。 候補は独身者。 充実したシングルライフを守るため、大原と本城寺は結婚して(厳密には結婚したことにして)、この選抜から逃れようという流れ。 自分のメリットがなければ結婚しないという、なんとも現代的な価値観だが、納得感のある感じ。 職場の人間に結婚を報告し、祝福されるのを二人が一生懸命取り繕っていく過程で、少しづつお互いの価値観を共有・理解していきます。 まだ1巻なんですが、最後に少し意識しはじめる描写があり、これからの展開に期待しかないです。 続刊楽しみすぎる。 余談ですが、本城寺さんが死ぬほど可愛いです。 年上だからと張り切る姿も、結果空回りして反省するところも、何より1人部屋でスウェットみたいなの着てニコニコ地図を眺める姿・・・普段、無表情だからか、そのギャップにやられてしまいました。 ベタですが、いいものです。