社会マンガの感想・レビュー5042件<<155156157158159>>もっと読んでいたかったあしあと探偵 園田ゆりstarstarstarstarstar吉川きっちょむ(芸人)※ネタバレを含むクチコミです。朝日新聞連載『ののちゃん』のスピンアウト作品女には向かない職業 いしいひさいち名無しいしいひさいち先生といえば、『となりの山田くん』や『ののちゃん』を描いた、押しも押されね四コマ漫画界の大看板。新聞4コマで見かけることが多いので、「ほんわかする作品ばかり描いているのだな」と思われていると思いますが、それは誤解です。時事問題から哲学者4コマまで、ハイブロウ向けな作品もたくさん発表しているのです。また、もう一つの特徴として、ごくたまに、難解というにはあまりに理解不能な作品を発表し、読者を混乱に陥れたりもします。未確認のネットの情報ですが、どうやらいしいひさいち先生自身も、「自分でも意味がわからない」ことが多々あるそうで。もう、ニントモカントモ。 『女には向かない職業』は、朝日新聞に連載されている『ののちゃん』(旧:となりのやまだ君)のスピンアウト作品。ののちゃんの担任の藤原先生が学校をやめ、推理小説作家になった後が描かれています。『女には向かない職業』では新聞4コマでは潜めていた毒がすべて藤原センセイに集約されている素敵な4コマとなっています。 この作品が素敵である一番の理由は、藤原先生が正しくダメ人間だからです。酒癖は悪く、出版社の飲み会では大暴れし、ペコちゃん・ケロヨンを持ち帰り、書評家からは作品についてではなく「酒量を減らせ」と書かれます。部屋は本当に足の置き場もなく、限界を越えたところで引越しをし、すべてをチャラにします。ただ、締め切りに関しては、担当者からの「まだか まだか まだか まだか ……」のクレイジーなFAXが届くぐらいなので、一般的な作家と変わらないレベルに収まっているようです。 4コマまんがの常として、なにかが起きていく話ではありません。ただ、小説家・藤原瞳の自堕落な日常が描かれているだけなのです。なのになぜ、私がこんなにもこの作品が好きなのか、それはいまだにわからないのです。見守りたい短期集中新連載海の境目 桃山アカネstarstarstarstarstar吉川きっちょむ(芸人)『豪雨』http://www.moae.jp/comic/morningzero_gouu 『固定編成』http://www.moae.jp/comic/chibasho_koteihensei 桃山アカネの短期集中新連載。 過去2作の読切はどちらも考えさせられる素晴らしい読切で、絵も漫画の描き方もどんどん上手くなっている。 今回の『海の境目』は前作の『固定編成』の状況をや取り巻く環境を少し変えつつ掘り下げる形、もしくは前日譚的な立ち位置になっていると思う。 事後そして解決をロードムービー的に描く『固定編成』に対して、そこに至るまでも描く『海の境目』。 読切を読んだときも感じたのは、こんな作品を20歳、21歳で描けるのはとんでもないなということ。 ゴロッとした自分の中で処理しきれないような感情、どうしようもなく忘れたい記憶、逃げ出したくてもその糸口さえ見えない日常、どこまでいってもつきまとう血縁、家族ということ、親ということ、無力な子供ということ。 誰にも言えない、理解されえない、逃げられない「孤独」。 登場人物の息苦しさや生きづらさが生々しく表現されているのは今作にも共通する。 ふと、松本剛を思い出した。 短期集中連載のまだ1話目。 これから冒頭で明かされた結末へ向けて物語はどう進むのか。 どうか、由美子にも時田にも救いがあってほしい。 終わっている家族に何を想うか。 怖いもの見たさで楽しみだ。みんな兄でみんな弟柚木さんちの四兄弟。 藤沢志月ぱにゃにゃんだー2年前に両親がともに他界してしまい、新米教師の長男(23)と年子の中1男子2人に、小学1年生の4人兄弟で支えあって生活していくファミリーほのぼのコメディ(コメディかはわからないけど楽しいのでざっくりコメディ枠にしてます) 親と子の関係は、家庭における役割や大人というステータスが固定化しやすい一方で、兄弟となると、シーンによっては年齢的に下の立場でも大人と感じることが現実にもあり、その関係の流動性が各キャラクターの内面を様々な形で引き出しているのが、この作品の面白さかなと思います。また、末っ子の岳くんがやたら大人っぽくて、キャラ作りもその流動性に貢献してるかなと感じます。 大筋において楽しく明るく元気がいいので晴れやかな気持ちになれます。なんにせよ、仲が良いのは美しいかな。言葉選びや心理描写が絶妙ぷらせぼくらぶ 奥田亜紀子hysysk※ネタバレを含むクチコミです。ライバルは花屋に居着く幽霊夏雪ランデブー 河内遙お茶花屋でアルバイトをしている青年・葉月くんは店長の六花に片思い中。 あるとき彼女の家に訪れると、知らない男が居た。 突然の失恋にショックを受けるが、その男は六花の亡くなった夫・篤であることが判明。しかもその姿は葉月にしか見えない。 夫の死後、恋愛から遠ざかっていた六花と、葉月を六花に近づけまいとここぞとばかりに邪魔をしてくる篤。篤の存在を尊重しながらもどうにか六花を振り向かせたい葉月くんとの少しオカルトな三角関係! 最初の方はわりとコミカルに話が進んでゆくけれど、篤が葉月の体を乗っ取ったり、もしかしてこの恋って命がけ?というような展開に。 というコミカルとシリアスが絶妙なさじ加減で描かれてます。4巻で終わるのでぜひこの夏に読んで欲しい… 自分は河内遙先生の描く三白眼男子が大好物なので、それだけでも読む価値があると思いました。美大生に憧れてたモディリアーニにお願い 相澤いくえさいろく物語について。 才能のあるなしって本当に重要なのかなとか、見えるとこまで行った頃にもし自分に才能ないってわかったらすごいツラいんじゃないかとか、そういうのがそのまま描かれててすごいツラいし、いい話もあってイイハナシダナーってなるし、色がないのに(トーンもない?かも?)すごい色が見えるような手書き感が堪らなく好き。 自分の語彙力のなさが悔やまれる。 ↓雑記として。 カッコいいと思ってたから美大に行きたいと真面目に考えてた時期があって あの頃は絵とか芸術とかちょっと好きだから他人より芸術家向きですごい才能があるんじゃないかとか勘違いしていて ムサビとかタマビとかの学園祭とか行ってみたりもした。 そして本当にこういう感じの人たちがいっぱいいた。 表現者というか、卵感があるけどどういう考えでそういうものが作れるのかと感心した。 相澤いくえ先生がすごいと私が思うのは、そういう感じたものみたいな見えないものを「当時の若い私目線でも感じていたであろう感覚」をマンガに描いて人に伝わる形にしているところ。 実際の感覚なんて形ないんだからわからないんだけど。 4巻も好きだった。よかった。可愛いあの子が情熱を注いでいるのは…あそこではたらくムスブさん モリタイシnyae湘南ゴム工業株式会社に勤める主人公の砂上(さがみ)くんが異動したのは、総合開発部の営業企画室。 彼は研究・開発担当の近藤結(こんどうむすぶ)という女性に片思いをしてます。 そんな彼女は日々真面目に「コンドーム」に向き合い、研究をしているのでした。 ムスブさんとどうにか親しくなりたい砂上くんですが、相手もいないのに結さんから試作品を手渡され、感想を求めてられてしまいます。 結さんは、厳しいお父さんの影響で自宅から片道3時間かけて通っており飲み会にもほとんど出席できないので、じっくりお話することもままならない。 コンドームを可愛い女の子が作っている、というだけだといやらしい印象になりがちですが、あくまで彼女は研究者として、使用する人(特に女性)の気持ちを一番に考えて一生懸命です。 そんな彼女に応えるように、砂上くんも少しづつ才能を開花していきます。 しっかり取材して描かれているのがわかるので、コンドームの知識も身につくし、面白いです。 まだ2人の距離は遠いですが、だんだん結さんも砂上くんに興味が出てきている感じがします。ただ、仮に思いが通じ合ったとしても「厳しいお父さん」というハードル絶対立ちはだかるじゃんという。 1巻のあとがきで、ラジエーションハウスとの掛け持ちがつらいという話があって、無理しないでください…と思いつつ続きは早く読みたい。笑斬新だけどリアルヒヤマケンタロウの妊娠 坂井恵理nyaeありえない設定だけど、こういう風になってもいいなと思えるどこかリアルな描写が印象的。 「男の妊娠」をテーマに各話の主人公が変わるオムニバス形式で、このヒヤマケンタロウが妊娠したことで、いかに妊婦・子どもを持つ親に優しくない社会であるかを身を持って知り、社会を変えるために考え、動くというところがすべての話の軸になってます。 ヒヤマケンタロウ、思いやりのあるしっかり者かと思いきや、妊娠前は結婚する気もなく妊婦や子連れに優しくしてこなかった人間で、しかも子供の母親が誰かもわからない(遊び程度の女性が複数人いる)。中絶手術の入院のために仕事を休めないので仕方なく生むことにしたしょうもない奴です。 それでも、こうすべきと思った方向へ主体的に動ける人は強いですね。 今度BELOVEで育児編の連載が始まるとのことで、気になって読んでみましたが、もっと話題になってもいいと思います。色んな人に読んでほしい。展開が早くて助かるあせとせっけん 山田金鉄名無し化粧品&バス用品メーカーの経理部に所属する麻子と、商品開発部の名取のオフィスラブ・コメディ。 ピュアラブのつもりで読み始めたら、あらら展開早くてびっくり。どエロじゃないですか(褒めてる)。 第一話は読切で、そのまま連載が決まったらしいのでなるほどという感じ。 麻子の匂いが嗅げなくてシオシオになっちゃてる名取くんがいい。うんまーーーー!ぽちゃこい ムラタコウジnyae主人公の杏ちゃんが美味しいものを食べた時「うんまーーーー!」というのが可愛い。杏ちゃんは太っているのもあるけど、あまりにもまわりと等身が違うのが面白すぎる。 同じ作者の高嶺のハナさんを読んでからコチラを読んだのだけど、男2と女2の四角関係の構図が同じ。笑 杏ちゃんの想い人の沢谷くんは普通の爽やかイケメン男子というところが最大の違いだろうか。 恋の行方が気になるというよりは杏ちゃんが美味しいものを美味しそうに食べてる姿がこの漫画の一番の見所かと。 ダイエットあるあるもたくさん出てくるので、杏ちゃんに対する共感指数も高いと思います!犬猫は可愛いだけじゃないしっぽの声 ちくやまきよし 夏緑 杉本彩名無し表紙で可愛い犬猫漫画だと思って手に取ったらちょっと違った。 飼育崩壊の現場に突入して犬猫を助ける獣医師と保護団体の話! 可愛い表紙につられて手に取り、読んでて少しショックを受けました。 勉強になります! 「クリスマスの雰囲気に流されて飼える状況でないのに飼ってしまう」とか 「生かすことだけが愛情なのか?」とか、すごく現実的な話と踏み込んだ話多いです。 犬猫飼う前に教科書代わりに。。。これからに期待!僕らの色彩 田亀源五郎大トロ同性愛がテーマの爽やかな漫画です!最高の癒しチーズスイートホーム こなみかなたいい漫画読みよつばとの次に最高の癒し本だと思ってる漫画 チーが可愛いしデフォルメ具合がちょうどいい 癒しで優しい気持ちになれるので病院の待合室とか歯医者とかに置いててほしい。 ずっと「チーズ」だと思ってたが「チーの」って意味だった。誰かの人生の一部となっている不思議なお話むかしこっぷり おくやまゆかnyae著者のおくやまゆかさんが身近な人達に取材し、その人がむかし経験した少し不思議な話を集めた短編集です。 本書の冒頭に 「私のよく知るあなたは 私の知らない たくさんの時間によって あなたになった」 という文が載っているのですが、最初に読んだときはとくになにも思わなかったのに、一冊読み終わってもう一度読むと、びっくりするぐらい心に響きます。 そういえばそんな事もあったな、くらいの些細な出来事でも、今の自分をつくった時間の一部だったことには変わりは無いんだと考えると、妙に愛おしい出来事のように感じられます。 こうして誰かの些細な出来事を漫画で残しておくという作業には、とても意味があると思いました。劇画・長谷川 伸シリーズ劇画・長谷川 伸シリーズ 小林まこと 長谷川伸名無し長野県伊那市には「伊那の勘太郎」というヒーローがいます。地元のヒーローがどんなものか、調べてみたら、戦中の大ヒット映画『伊那節仁義』の主人公で、いわゆる「股旅もの」の「侠客」とのこと。いわゆる……といわれても、「股旅」も「侠客」も現代っ子の私にはよくわかりません。果たして侠客とはなんなのか?ヤクザものとは違うのか?どのあたりがヒーローなのか?時代劇素養の全くない私にも「侠客」のカッコ良さを教えてくれたのがこの「劇画・長谷川 伸シリーズ」です。 長谷川伸の書いた戯作を素材に小林まことが漫画として構成したこのシリーズは、『関の弥太っぺ』『一本刀土俵入り』『沓掛時次郎』『瞼の母』の4作品があります。『関の弥太っぺ』『瞼の母』の名前ぐらいは、アーリーゆとりの私でも聞いたことがありましたが、中身は当然、知りませんでした。 読み終わって、なぜ「股旅もの」があんなにも人々の心を掴めたのか、わかったような気がします。どの作品テーマとして描かれるのは、男と女、親と子、男と男の、損得や欲望を越えた情です。 『沓掛時次郎』の主人公・沓掛の時次郎は流れ者です。一宿一飯の恩義のために、見も知らぬ男・六ツ田の三蔵を斬ることになります。一騎打ちの末、なんとか三蔵を倒した時次郎は、今際の際の三蔵から、妻おきぬと子・太郎吉のその後を託され、雇い主を裏切り逃走劇がはじまります…。 追っ手から逃げ続ける辛い旅のなかで、段々とおきぬに心惹かれていく時次郎ですが、それを言葉にすることはありません。自分が斬った男の妻と思い、気を使いながら旅を続けます。おきぬも時次郎の気持ちに気づいていますが、気を使う時次郎のことを思い、口に出せません。そんな微妙な関係がとてもよいのです。そんな二人の関係にも、やがて変化の時が訪れます。三蔵を斬ってしまった自分に踏ん切りをつけるために刀を捨てていた時次郎は、身重のおきぬのために再び刀を手にするのですが…。ベタといえばベタな展開ですが、最後の最後まで心を揺さぶられっぱなしです。 話もそうですが、絵も本当に素晴らしい。どのコマも躍動感あふれているのですが、特に殺陣は本当にかっこいい。腰を下ろすヤクザものの構えから白刃が何度も交わされ、そして一瞬の決着へと繋がる…本当に動画を見ているような気持ちになります。個人的には合羽をバサッと跳ね上げるシーンも好きですね。ただそれだけの動作で主人公たちのカッコ良さが際立つのです。義を胸に生き、自分のした事が受け入れられなくともかまわない、そんな男たちの背筋がはっきりと出ているのです。“カッコイイ”とはこういうことだ。そんな気持ちになりました。偉人たちのちょっとお茶目な一面と、非モテ男子の気持ちを同時に味わえる決してマネしないでください。 蛇蔵名無しクリスマス前後になると、僕の心は千々に乱れてしまいます。どこから沸いてくるのか、街中にあふれるカップルを避けるように、錦糸町や赤羽や巣鴨といった素敵なオトナの街を歩いていると、なんだか日本海の黒い海を見たくなってしまうのです。そういうときこそ、モテなかった偉人の伝記を読むことにしています。どんなに立派でも、いや、立派だからこそ、彼女のいない人間はいるんだ…。Yesニーチェ、no啄木の精神が僕を救ってくれるのです。 偉人たちのちょっとお茶目な一面と、非モテ男子の気持ちを同時に味わえるのが『決してマネをしないでください。』『決してマネしないでください。』は、圧倒的に女性がすくないことで有名な、大学の物理学科が舞台の漫画です(物理学科は就職が厳しいことでも有名ですね)。 物理学科の学生で、女に全く免疫の無い掛田が学食のおばさんである飯島さんに恋をしたことから物語は始まります。掛田君は、好きなモノが、物理、関数電卓、そして素数の17という、かなり限られた人としか心の交流を持てないタイプです。掛田君の初恋を追いながら、それらの事象に関係する様々な科学者のエピソードが紹介されていくのです。エピソードはどれも、人間味が溢れすぎていたり、想像以上にド変態だったり、極度に愚痴っぽかったり、偉大というにはあまりにもトンデモなくて、新鮮な気持ちになれます。 例えば、手の洗浄を訴えるも、皆に無視されて精神病院で死んでしまったゼンメルヴァイス、エジソンにいじめられ、鳩が恋人とのたまうニコラ・テスラのエピソードを読んでいると、偉人も「同じ人間なんだ」という気持ちと「やっぱり奇人」なんだという気持ちが同時に押し寄せてくるのです。 なかでも一番のド変態はジョン・ハンター。彼は実験のため、わざと梅毒に感染したほどの猛者。また、心温める名作シリーズ『ドリトル先生』のモデルであり、人間の二面性を鋭くえぐり出したサスペンス・ホラー『ジギルとハイド』のモデルでもあったという、なにがなんだかよくわからない人間です。そうなったハンダーの人間性を象徴するエピソードの数々は、なんといったらわからなくなるほど素敵です。 これら、とんでもない科学者を引き合いに出されながら、掛田氏の恋は明後日の方向に突き進んでいくのです。飯島さんのためなら、素数唯一の偶数2の魅力を認めてもいいと言う掛田氏の恋は実るのでしょうか?そしてこれから、どんな科学者の珍エピソードが紹介されるのか、気になってしょうがないのです。教育と洗脳の違いとは何なのか…鈴木先生 武富健治名無しドラマ化も映画化もされた『鈴木先生』の連載中から今でも、先輩と飲む度に鈴木先生の教育論を「鈴木メソード」と呼んで、あーでもないこーでもないと盛り上がっています。先生が主人公の漫画は枚挙にいとまがないですが、その中でも『鈴木先生』は異色だったからです。これまでの先生漫画は、生徒が非行→先生が説教→改心というパターンや、生徒がヤクザと援交→先生がヤクザを殴る→改心という、ざっくりとしたイメージがありました。生徒に対する“愛”を叩きこめばなんでも治るというアナログ電化製品に対するかのような発想、たいへんおおらかな時代でしたね。けれど、『鈴木先生』は違います。「いくら強く言われても、自分で納得していないことを人は修正できない」という当たり前だけど難しい現実に鈴木先生は挑戦します。生徒本人が納得し、自分自身でよく考え、行動できるようになることが目標なのは、現実と変わりませんが、そこに至る物語は険しいものばかり。物語の始めでは生徒一人が相手だったのが、やがて保護者も交えてのものになり、最後には学校全体へと鈴木先生の“教育”の場は広がっていきます。鈴木先生は加害者、被害者、保護者、同僚の先生という考え方の違う人々が、思うままに自分の考えを述べる中で、流れを作って教育をするという離れ業をするのです。注目を集めるためにときに声を荒げることもしますし、生徒にわざと殴られることもしますが、それも手段でしか無い。情動的な行動すらも全てコントロールしながら、生徒指導という複数の勢力が拮抗し、リアルタイムに変化する戦場で、鈴木先生は最善手を探し続けるのです。面白いのは、鈴木先生に教えられ、自分で考えることが出来るようになった生徒たちは「鈴木メソード」の尖兵として、その後の鈴木先生の“戦い”の重要な役割をになっていくようになることです。つまりミニ鈴木先生として、他の生徒を誘導するのです。この感化された生徒の役割によって、鈴木先生は学校全体を巻き込むような大きな舞台でも戦うことができるようになるのですが、はたして教育と洗脳の違いとは何なのか…考えさせられます。『鈴木先生』には他にも謎や考察すべき点がたくさんあります。鈴木先生の評判が上がるごろに壊れていってしまう周囲の先生…。鈴木先生お気に入りの小川という生徒の存在…。「鈴木裁判」と“鈴木先生”の完成などなど、読む度に新しいことに気づき、疑問がわきます。今の私の疑問は『「鈴木メソード」から、鈴木先生の想像を上回る生徒が誕生するのだろうか』というもの。まだまだ呑み屋で盛り上がれそうです。なのな フォト ゴローなのな フォト ゴロー 森下裕美名無し昔から、いろんな漫画のキャラクターによく似ていると言われます(悪い意味で)。特に、カラスヤサトシさんの自画像そっくりとは長いこと言われてきました。最近では『ギャングース』のカズキ(デブ、メガネ、手足短い)とか『バキ外伝 疵面 -スカーフェイス-』のグランド・マスター(チビ、アゴなし、オカマ)なんて言われて、歯噛みしてますが『なのな フォト ゴロー』の主人公・ゴローには、見た目や動きをふくめて強い親近感を感じています。 谷師悟郎はいつもオドオドして、人にあやまってばかりいる30歳。務めている製菓工場とアパートを行き来するだけの毎日で、工場でも軽く邪魔者扱いされています。帰りのバスでは「明日も嫌なコトしか起こらないだろう」と絶望したりします。 そんなゴローにも生きがいはあります。それは飼い猫のフォト。世界一かわいいこの猫だけがゴローの支えなのです。そんな、なんとなく孤独で、なんとなく未来が見えないゴローは、なのなという女の子とフォトを通じて出会います。 なのなは町で偶然フォトに出会い一目惚れ。思わず連れて帰ろうとし、そこでゴローと出会います。なのなは街の小さな雑貨店で働いていますが、やっぱりなんとなく孤独だったり悩みがあったりします。 ただ、なのなは落ち込んだりしても外には出さないタイプなので、「ボクなんか毎日嫌なコトしかないしずっと落ち込んでる」と簡単に口にするゴローにイライラしてしまうのです。 この二人と、フォトを中心に、大きな悩みはないけれどなんとなく閉塞感がある人たちの日常が描かれていきます。 ゴローのただ流れるだけの人生は、なのなとの出会いで少しずつ広がっていきます。なのなの人生も同じように少しずつ広がっていくのです。 この『なのな フォト ゴロー』とてもゆったりとして、可愛らしい作品なのですが、僕にとっては切実です。このゴローが幸せになれるのかが、ボクの人生が幸せになるかどうかの瀬戸際な気がしてならないのです。ちゃんとゴローに普通の幸せが訪れて欲しいと、切に願っています。 とはいえ、見た目も性格も自分にそっくりなゴローが幸せな目にあうと、それはそれで嫉妬を感じるものですね。綿密な取材で構成されたパーツショップの内情マンガパーツのぱ 藤堂あきと名無し当たり前ですが、漫画は漫画雑誌にだけ掲載されているものではございません。一般誌や女性誌のなかには漫画が連載されてるものも多いですし、モデルガンやカードゲームなど趣味性の強い雑誌でももちろん掲載されています。囲碁の雑誌や昆虫の雑誌でも連載漫画をみたことがあります。今は大分少なくなってきていますが、パソコン雑誌が大量に発刊されていたころ、やっぱりさまざまな漫画が連載されていて、そんなにパソコン雑誌を読む方ではなかったのですが、『PCコマンド ボブ&キース』(なにげに単行本が三冊もでていた)という、アメコミ調の漫画がいろんな意味でぶっ飛んでいてよく読んでいました。 この『パーツのぱ』もパソコン雑誌の「週刊アスキー」で連載されている作品です。専門誌で掲載されている漫画は、その性質上、ルポものが多いのですが、『パーツのぱ』は完全なストーリー漫画。秋葉原のパーツショップ「こんぱそ」に勤める魅力的なキャラクターが織りなす日常が描かれております。 パソコンパーツに詳しいベテランで年齢不詳ツインテールの本楽、平凡な青年で特徴といえばドジをやらかすことの入輝、あまりパソコンパーツに詳しくないけど大きくて美しい天戸、仕入れなどの裏方作業を完璧にこなすアフロの手木崎など魅力的なキャラクターが、短いページ数で少しずつ少しずつ浸透していき、ゆっくりと世界が広がっていきます。 とはいえ、綿密な取材で構成されているらしくパーツショップの内情が詳しく描かれています。他店の価格を知るためにあれやこれや画策したり、万引きをあの手この手で捕まえたり、社員の着服が問題になったり…。暗い面もきちんと描かれているのも魅力の一つです。 『パーツのぱ』は、1話が2~4pと、週刊連載漫画の通常である16pに比べると圧倒的に少ないページ数の作品です。だからといって、内容がスカスカなわけでも説明不足なわけでもなく、ゆるく前後の展開とつながりつつも一話ごとに導入うと盛り上がりがあるので、不思議な読後感があります。なんとなくですが、NHKの朝の連ドラに近いような、連綿とつづきながらも飽きがこずに、ずっと読んでしまう感じ。これは、きっと普通の漫画雑誌では生まれてこない読後感なのでしょう。戦争という極限状況で、何よりも大事な物資を手配する兵站を描いた作品大砲とスタンプ 速水螺旋人名無し学生の頃、友達の家にものすごいヨレヨレのエロ本の切れ端が置いてありました。あまりにも使用感丸出しで、若干引きながらも聞いてみると、「ひと夏の思い出なんだ」と彼は遠い目をしながら言うのでした。後からわかったのですが、それは山岳部の一月続く縦走の際に持っていたものとのこと。危険な山では、水と食料が最優先。一冊まるごとエロ本を持っていくことができないので、お気に入りのページを切り取って隙間に詰め込んでいたとのことです。なんだか、エロ本の切れ端が崇高なものにみえてくるではないですか!普段の生活で、我々はすぐ物が手に入る状況にいるのだなあと思い知った経験です。 戦争という極限状況で、何よりも大事な物資を手配する兵站を描いたのが『大砲とスタンプ』という作品です。この作品を読むと、補給線の大事さと、正論をタテに物事をうまく進める方法が同時に身につきます。 兵站軍は、輸送や補給を主な任務とし、直接戦闘に参加することはそう多くありません。ひたすらデスクワークの連続で他の部隊からは「紙の兵隊」と揶揄されています。 主人公はマルチナ・M・マヤコフスカヤ。アゲゾコ要塞補給廠管理部第二中隊に配属された女性少尉です。 戦場ではしばしば、現地の状況とかけ離れた命令を、少しの不正で上手く回らせていたりもしますが、彼女はそれを許しません。たとえ食糧が尽きた非常事態だろうが、奇襲をうけた戦闘状態だろうが「責任問題ですよ!」といってかき回していく四角四面の女。実際にいればかなりイヤなタイプです。 彼女のその並外れたクソ真面目さと融通のきかなさが騒動の素となり、時には武器になっていくのです。 あるとき、憲兵隊に睨まれた第二中隊は、ついに彼女に本気をださせることにします。「手を抜かず存分にやれ」といわれた彼女は、書類のつづりの間違い、書式の違い、ハンコの薄さなど、ありとあらゆる普通の人はどうでもいいことを指摘し伝票を突っ返し続けます。マルチナの言うことは言い返すことのできない正論。やがて憲兵隊の仕事はマヒしてしまうのです。ついに憲兵隊から「あの女は悪魔です!」と呼ばれるマルチナには悪意はなにもないのです。ただルールを守ることが彼女にとっての正しさなのです。 伝わっているいるはずの話が伝わってないとか、現場でいつのまにか独自ルールができていたりとか、やたら官僚的な人間によって引っ掻き回されてしまうとか、組織である以上、軍隊も会社となにもかわりません。ガタガタしながらもなんとなく組織が機能してしまうんですね。 戦場という極限状況でも、今の我々と変わらず命令ひとつで右往左往してしまう、そんな滑稽さがこの漫画にはあるのです。実はすごい漫画なのではあせとせっけん 山田金鉄名無し体臭で引き合うってほぼ人間の本能なので、ベストマッチなカップルに違いないですね。 そしてエロい! 陸より空の方がいいような気がしてきた前略 雲の上より 竹本真 猪乙くろ 竹本真名無し電車や新幹線も好きだけど、空港など巨大な施設も昔から好きで、飛行機に乗るたびにワクワクしていた。 けどこの漫画を読んで自分は空港の魅力をほとんど知らずにいたことを知った。 パーキングエリアみたいに、飛行機には乗らずに空港で遊ぶだけでもアリな気がする。 ただ、課長がめんどくせ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!精神疾患を患った子供たちをもつ親「子供を殺してください」という親たち 鈴木マサカズ 押川剛地獄の田中ショッキングなタイトルだが実話をもとにした深刻な話。精神疾患を患った子供を持つ親からの相談を受けて、子供を病院などの医療と結びつける仕事を請け負うトキワ精神保健事務所の話。 統合失調症やアルコール中毒が家庭を壊していく姿は真に迫っていてとても恐ろしい。ただ、「恐ろしい子供達」として子供を加害者、親を被害者と一方的な関係にしてしまうのではなく、子供が精神疾患を患った経緯にきちんと目を向けている点が素晴らしい。 登場する押川さんは原作者であり、トキワ精神保健事務所を立ち上げ活動している本人でもある。<<155156157158159>>
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