エッセイマンガの感想・レビュー1007件<<2425262728>>今こそ考えたい人種差別問題ある奴隷少女に起こった出来事 あらい・まりこ ハリエット・A・ジェイコブズ兎来栄寿元来、奴隷問題に関する歴史的な資料や記述は大半が奴隷を扱う側の視点に立ったものでした。そもそも奴隷はまともな教育も受けられないことが多いため当然です。そうした意味で稀有なのが、この『ある奴隷少女に起こった出来事』です。 本書は元々1861年に刊行され、当時はあくまで白人著者が書いたフィクションとして受け止められていました。しかし、1987年になって歴史学者により筆者ハリエット・アン・ジェイコブズの直筆の手紙が発見され、その文章の相似から『ある奴隷少女に起こった出来事』はフィクションではなく、実際に黒人奴隷だった筆者が書いたものであることが証明されました。 「歴史とは勝者によって作られる」といわれますが、本書は弱者の立場から書かれた極めて貴重な記録なのです。 そうして100年以上の時を経て本書はベストセラーとなり、日本では2013年にハードカバー版が、2017年に文庫版が発刊されました。そして2020年8月になって、このコミカライズ版が刊行されたのです。 本作では、フリント家の「所有物」となった筆者や同様の境遇にいる人たちが人間としての尊厳を踏みにじられ続ける様が描かれます。その過酷さは筆舌に尽くし難いものです。 現代の日本人が当たり前に享受しているものが、人類史においては極めて稀有で得難いものであるということを私たちは往々にして忘れてしまいがちです。しかし、中世などではなくほんの最近まで人類はこうしたことをしてきたということは忘れてはならないでしょう。 『ある奴隷少女に起こった出来事』は日本人に読まれ始めてからの歴史はまだ浅いですが、『アンネの日記』や『夜と霧』のように読み継がれていくであろう、いくべき名著です。コロナ禍に伴って人種差別問題が取り沙汰されることが増えた今こそ読まれるべきです。 先人の偉大な努力によって築かれたこの恵まれた環境にもっと感謝しながら日々を大事に、より良いものにするべく生きていきたいと襟を正したくなる、社会的意義が非常に大きい作品です。レバ刺しマンガとしか言えないさよなら、レバ刺し~禁止までの438日間 谷口菜津子マンガトリツカレ男なんか絵の感じが違うなと思ったら昔の作品を最近電子書籍にしたのか。まあレバ刺しが禁止されたのもだいぶ前だからそりゃそうだよな思いながら読んだ。レバ刺し自体好きか嫌いかと言われたらそんなに好きというほどでもないがこのマンガを読んだせいでむちゃくちゃ食いたくなった。後半に登場するポストレバ刺しの店は行ったことがあるが全く同じ感想だった。蠍はまじで表現できない味だった。 読んでて思ったけどこれ「鉄鍋のジャン」を読んでいるとより楽しめるかも。「ドリアンと酒」や「カエルの湯卵管」ネタが登場していた捨ててしまえ!夫を捨てたい。 いくたはなポコニャン※ネタバレを含むクチコミです。作者に起こったトンデモトラブルをコミカルに語るきょうも厄日です 山本さほ名無し作者の絵柄がかわいく、コマ割りや演出も読んでいて楽しいです。なんと、最後のエピソードでまんがの図書館ガリレオが登場!女性の店長さんも出てきます。不意打ちでびっくりした! 家族について考えさせられるママの推しは教祖様 ~家族が新興宗教にハマってハチャメチャになったお話~ しまだナベテツこの作品を知ったきっかけは、劇作家の鴻上尚史さんの連載エッセイ「ドン・キホーテのピアス」で取り上げられていたからでした。 興味を持って書店で購入して、読み終えて溜め息が出ました。 この作品の「ママ」のような人物は、多分世の中に沢山いると思います(何にはまるかは、人それぞれですが)。 現代社会において、何かに依存しないで生きていくことは恐らく無理なのだろうと思います(比較的依存の薄いと思う自分も、恐らく何かに頼っていることでしょう)。 その依存を矯正するためには、大袈裟ではなく自分の人生を投げ出さなければならないでしょうし、それを出来る人間に出会うことは恐らく人生において物凄く低い確率なのだろうと思います。そして、それは家族であっても不可能だろうし、そのために人生を投げ出すことを強いることも出来ないだろうと。 自分が悪くなくても苦しめられるのが家族であるとしたら、そんな場所からは離れて欲しい。単身者はそんな風に願ってやみません。男の作法は万人に通ずる男の作法 池波正太郎 なかじまもりお名無し池波正太郎の「男の作法」を漫画化したもの。『男の』とはいうものの万人に通ずる「粋」を学ぶことができる。台詞回しや空気感が独特でいいどちらかというと将棋をやってる人柄の話将棋の渡辺くん 伊奈めぐみむ将棋をやってる人生の話!みたいな漫画はちとストイックで重かったりしますが(3月のライオンとか)これは将棋のプロの人柄の話! どの業界でもその職を極めた人はちょっと変わっている気がします。 棋士なんて特に変わってて面白い人が多いのでは? 生活、行動、全てが将棋に向いているのでそれ以外のことはどこかおぼつかない感じのお人柄に思えました。 逆にここまで貫いている人は漫画になるくらい面白い! 藤井聡太棋聖フィーバーの影響もあり、将棋気になるな〜って私のようなにわかにも楽しんで読める一冊。 フォーク浮いてるナポリタン最近見ないねカフェイン・ガール 飯塚めり野愛昔ながらの喫茶店って心ときめきますよね。コーヒーが飲めなかった子どもの頃から、パフェやクリームソーダやフォークが浮いたナポリタンが並ぶガラスケースを見てワクワクドキドキしたのを覚えています。 大人になった今でも、喫茶店でコーヒー飲みつつ小説読みつつなんて時間を過ごすととても贅沢な気持ちになります。 そんな気持ちを無邪気に肯定してくれるのがこの漫画。 カフェインを摂取すると猫のお友達が見えるファンタジックガール・メルちゃんが、素敵な喫茶店とその過ごし方を教えてくれます。 カフェイン摂取してピッキーン!となって猫があらわれる…なんて言うと現代社会の闇的なものを感じますが、そんなお話ではないのでご安心ください。 淡い色合いのかわいい絵でほんわか心癒されます。 厚切りのトーストや昔ながらのプリンなど喫茶店ならではのメニューが食欲をそそり、するはずのないコーヒーの香りが漂うようなあったかくてかわいい作品です。兄の存在感が強すぎる実録あだち充物語 あだち勉名無しあだち充先生の初期の絵柄が今と全然違ったのがびっくりです。それは当時の流行とかを取り入れて反映していたからと書いてあり、巨匠作家にもいわゆる下積み(というのか?)時代があったんだな、と。 あだち充物語と謳っていながらお兄さんの存在感の強さ半端じゃないですよ。もはや主役。実際にこの人無しでは今のあだち充は生まれてないんでしょう。きっと。おもしろスキルに全振りした人おしりのふた 桐島いつみ野愛死ぬほど下品でバカバカしくて面白いです。 全話通して一切ブレずに下品で清々しいです。 痔になったとか尻や股や体毛やオナラの話を終始してます。自分の旦那がトイレのタオルで尻を拭く話とかしてます。 作り話とか読者の話ならまだしも、ずっと自分の恥ずかしいお話をしているのでもはや感動すら覚えます。 この人はおもしろの悪魔に魂を売ってしまったんだなあと思いました。 紹介される旦那さんのエピソードがマジキチの激ヤバだったので、今でも結婚生活が続いているか気になって調べてみようと思ったんですが…桐島いつみ先生の現在の動向がわからず…。 HPも動いていないしツイッターも2011年くらいで止まってる…! こんなに面白い方なので新しい漫画を読みたいのですがどうしておられるのでしょう。 とりあえず過去作をどんどん読んでいきたいと思います。 原点にして頂点の酒漫画酒のほそ道 ラズウェル細木野愛原点にして頂点という言葉をこの漫画に捧げたい!! 現代的なアイテムや背景が登場すればするほど、時代感のアップデートされなさが浮き彫りになっていく酒のほそ道。 楽しく美味しく呑めればいいじゃないかと言いながらもめんどくさい酒呑みばかりが登場し、でも結局みんな楽しければいいじゃないかというところに収束していく酒のほそ道。 アプデ前の人も後の人も、楽しくなるまで呑んで食べればそれでいいよね。自分がよければいいの極地がここにある。みんな自分勝手に楽しければいいんです! という空気感が絶妙に好きなんですよね。 めんどくさいこと言いながら、干渉し合っているよいでありながら自由に酒を楽しんでいる宗達がなんだかんだ好きなんだなあ。 自宅でつまみを作りながら酒を飲む回はレシピ漫画としても重宝するし、一人酒も飲み会もちょっといい店もいろんな酒の楽しみ方が学べる(?)のもいいところ。 時代に迎合することもなく、自分の信念を押し付けることもなく、適度にめんどくさいリアルなスタイルを貫いてくれる酒のほそ道が好きです。 誰よりもめんどくさいカスミちゃんがどんどん宗達に影響されてるのかわいい。めんどくさかわいい。ギリギリアウト…いやセーフ、かな?九後45は一周回って追いかける たちばなかおる名無し※ネタバレを含むクチコミです。120年の時を経てやっと認知された手記のコミカライズ #1巻応援ある奴隷少女に起こった出来事 あらい・まりこ ハリエット・A・ジェイコブズnyae※ネタバレを含むクチコミです。 読むと浅草に行きたくなる名店15店!浅草うねうね食べある記 上野うねぺそAmazonのおすすめに出てきたので気になって読んでみたら、最近の作品かと思いきや2015年の作品でした。 もう1発目の「パンのペリカン」からして美味しそうすぎる…!! ホテルや喫茶店への卸しがメイン(あとで紹介されるフルーツパーラーで、フルーツサンドのパンにも使われている)で、「惣菜パンがまったくないパン屋さん」というだけでその味に期待してしまう…! その他ドイツ料理のお店や、伝統的な江戸和菓子のお店、お得な靴屋さん、オシャレな革雑貨屋さんなど、見ているだけで今すぐ浅草に行きたくなるお店がいっぱい! 冒頭で2015年のデータですと書かれていたため、「こんなに行きたくても、もしかして今はもう閉店しているかも…」と心配しならが読んでいたのですが、読後にお店を検索してみたらなんと全店舗まだ営業されている…! 「飲食店の7割が3年で廃業する」という言葉もある中で、15店舗全てが5年経つ現在も営業しているなんて本当にすごい。いつまでも愛される本当の名店だけを紹介してくれる、非常に有用な1冊でした。あだち充の兄が書いたあだち充物語実録あだち充物語 あだち勉マンガトリツカレ男昔の古本屋ではよく見かけて機会があれば読もうと思っていたがいつの間にか見かけなくなって気づいたらプレミアがついていた。 実録あだち充物語とあるが本編の主人公はあだち充だけではなく、あだち充とあだち勉を含めて登場している。絵の感じとノリが1980年代後半でなんとなく懐かしい気分で読んだ。 「あだち充」は確固たる信念で漫画家を目指していたのではなく、あだち勉の協力があってこそで漫画家になったと言うのがよくわかった気もするが、全編通してギャグが多くていまいち信用しきっていいのかと思う部分もあった...リアルタイムで読んでた旅マン ほりのぶゆきマンガトリツカレ男謎の組織によってマスク改造を受け、記憶を消されてしまった男・旅マンが以下の条件を守りつつ旅をしていく ・週1で旅 ・新幹線などの高速移動は禁止(途中で解除されたけど) ・日帰り ・目的を果たす ・組織の詮索はしない おまけに前回より遠くに行くというルールがあるため、最初は大手町だが、途中から川越/熱海/松本、最終的には神戸まで行く事になる。 徐々に旅マンの謎がとけていく本編もいいけど、マイナーな観光情報や旅のひとくちメモもおすすめです。 しっかりした釣り漫画!おひ釣りさま とうじたつや名無し雰囲気だけで終わらないしっかりとした釣り漫画!しかも釣り人が共通して好きそうな一人の釣りを楽しむというストイックさをクリアした漫画! 冷静沈着、あまり表情が変わらない会社の美女が実は休みの日に釣りをしていてしかも悦に入っていたら確かにギャップ萌えありますね。 歩きながら釣りする方法とかやっている人みたことないけど、ひとえに釣りと言っても色々あるんですね〜 自分のような釣りに明るくない人間でも十分楽しめました!歪な母と娘汚部屋そだちの東大生 ハミ山クリニカたか※ネタバレを含むクチコミです。美味しいものへの愛で生きている愛がなくても喰ってゆけます。 よしながふみ野愛読むとお腹が空いてくるけど精神的満腹感を得られる不思議な漫画。 Yなが先生の美味しいものを追求するその姿勢に、マシンガンのように放たれる食レポと蘊蓄に、豪快な食いっぷり呑みっぷりに圧倒されて…いやあ食った食った、みたいな気持ちになります。 でもお腹は空いている。 食に対する姿勢の違いで恋人と別れたお話がありますが、これはなんかわかる気がします。美味しいを同じテンションで共有できるのって大事だよね…だって死ぬまで飯は食うもんね!と思いました。 愛がなくてもなんてタイトルにはなっていますが、ここまで愛して追求したくなるものがあるYなが先生かっこいいです。 うなぎとベーグルめちゃくちゃ美味しそうです。やっぱりお腹は空いている。 これが日本のヒップホップ漫画少年イン・ザ・フッド SITE(Ghetto Hollywood)hysysk今までにもいくつかラップをテーマにした漫画はあるし、監修でラッパーが参加してたりもするけど、これは作者が90年代の東京でヒップホップ文化にどっぷり浸かった当事者で、現在もシーンの重要人物。 フィクションと史実を織り交ぜつつ、MIX TAPEとかグラフィティとかドラッグも含めてラップだけじゃないトータルな文化を描いているので、好きな人にはたまらない(もしくはちょっとイキってた頃を思い出して恥ずかしい)と思う。背景や小物に当時のものが散りばめられてるし、BUDDHA BRANDのCQとNIPPSも少し出てくる。かといって単なる懐古趣味や教養主義でもなく、今につながる文脈を伝えるものとして正しくヒップホップ的なんじゃないかな。 私は地方在住で至って普通の高校生だったからこの辺の文化は完全に後追いだけど、引き続き応援したい。全ての道は「おひ釣りさま」に通ずおひ釣りさま とうじたつや名無し上条星羅(カミジョウセイラ)は才色兼備の24歳独身OL。 趣味は釣り。それも徹底して一人での釣行に拘っている。 求道者レベルで釣りに打ちこみ楽しんでいる。 あらゆる物事が釣りを連想させ、釣行に走ってしまう。 しかしセイラさんは孤高の「おひ釣りさま」ではあるが、 けして単なる釣りバカとか釣りオタクではないと思うし、 そこが面白い。 実は釣り以外の趣味や娯楽にも精通していそうだと、 いや下手をすればそれぞれの趣味のマニアよりも 詳しいのではと、そう思わせるフシがチョイチョイあるのだ。 例えばナマズ釣りの面白さを、ミュージカル観劇で 感じる面白さと比較して例えたり、 釣りのアワセの醍醐味を野球での豪球豪打に例えたり、 微妙なニュアンスではあるが、他ジャンルの面白さも 色々と尊重しつつも釣りをもっとリスペクトしてくる。 普通の人は広島カープファンの応援スタイルとか知らんし、 釣りと結びつけて考えたりしないし、とも思うが(笑) どこをどうやったら24歳のOLがあらゆるジャンルの 面白さにそこまで精通してしまうんだよ、 しかもそれでも釣りの面白さが一番なのかよ、と あきれてしまう。 そういう意味でセイラさんは孤高で面白くてスーパーな 「おひ釣りさま」だと思う。 清野とおる先生に飯の話を聞いてほしいのだゴハンスキー 清野とおる野愛みんな大好き清野とおる先生×みんな大好き飯のお話。最高ですね。 おこだわりよりも純粋に飯の話なので「あーわかるわー」とか「やってみたい!」度が高かったです。 好きな食べ物の話って間違いなく楽しいんですが、いざしようとなると「こんな個人的な話して相手は楽しいんだろうか?」みたいに疑心暗鬼になっちゃうことありませんか? わたしはよくあります。暗いので。 なので清野とおる先生のように質問しまくりツッコミまくり時には罵倒したり褒めたたえたりしながらお話聞いてくれる人がいたら最高だなあと思います。 この作品に書かれている飯エピソードはそもそも面白いけど、それをさらに面白くする清野先生すげえなあ…いっぱいお寿司食べてね…と胸が熱くなりました。 とり急ぎセブパは絶対やろうと思いました。 マンバのインタビューから生まれたらしい脱サラ41歳のマンガ家再挑戦 王様ランキングがバズるまで 十日草輔さいろくマンバ通信でのインタビューから生まれたエッセイ漫画らしい!すごいね 王様ランキングの8巻を読み終わったらレコメンドされたので読んでみたけど面白かった。 自分も振り返ってみれば大きな挫折や自信を打ち砕かれるような出来事があったもので、今の自分を形成しているものやどうしてこうなった(なれた)かを分析しているところは見習いたいものだなーと思いました。 やっぱ絵柄が特徴的だよね、このままいろいろな作品にも手を出してもらって挑戦と経験してもらってまだまだ成長するぜーっていうのを見せてもらいたいなぁ憧れのお弁当生活つまみぐい弁当 イシヤマアズサ野愛イシヤマアズサ先生の絵はほかほかしていて美味しそうですよね。 お弁当を作ろうと思うことはあれど、朝はギリギリまで寝ていたい人間なのでどうしてもできない。1日2日ならできてもそれ以上続いた試しがない。 スープだけとか前の日の残りを詰めるだけとかなら…って思うのにできないんだからもうしょうがない。 でも、イシヤマ先生のほかほかの絵を見ちゃうとお弁当いいな〜って思います。 前の日の夜から明日はこれ持っていこうって決めると朝起きるのが楽しくなりそうです。 でも寝ていたいから漫画を読んでお弁当気分だけ味わいます。というかイシヤマ先生のお弁当が食べたいです。 <<2425262728>>
元来、奴隷問題に関する歴史的な資料や記述は大半が奴隷を扱う側の視点に立ったものでした。そもそも奴隷はまともな教育も受けられないことが多いため当然です。そうした意味で稀有なのが、この『ある奴隷少女に起こった出来事』です。 本書は元々1861年に刊行され、当時はあくまで白人著者が書いたフィクションとして受け止められていました。しかし、1987年になって歴史学者により筆者ハリエット・アン・ジェイコブズの直筆の手紙が発見され、その文章の相似から『ある奴隷少女に起こった出来事』はフィクションではなく、実際に黒人奴隷だった筆者が書いたものであることが証明されました。 「歴史とは勝者によって作られる」といわれますが、本書は弱者の立場から書かれた極めて貴重な記録なのです。 そうして100年以上の時を経て本書はベストセラーとなり、日本では2013年にハードカバー版が、2017年に文庫版が発刊されました。そして2020年8月になって、このコミカライズ版が刊行されたのです。 本作では、フリント家の「所有物」となった筆者や同様の境遇にいる人たちが人間としての尊厳を踏みにじられ続ける様が描かれます。その過酷さは筆舌に尽くし難いものです。 現代の日本人が当たり前に享受しているものが、人類史においては極めて稀有で得難いものであるということを私たちは往々にして忘れてしまいがちです。しかし、中世などではなくほんの最近まで人類はこうしたことをしてきたということは忘れてはならないでしょう。 『ある奴隷少女に起こった出来事』は日本人に読まれ始めてからの歴史はまだ浅いですが、『アンネの日記』や『夜と霧』のように読み継がれていくであろう、いくべき名著です。コロナ禍に伴って人種差別問題が取り沙汰されることが増えた今こそ読まれるべきです。 先人の偉大な努力によって築かれたこの恵まれた環境にもっと感謝しながら日々を大事に、より良いものにするべく生きていきたいと襟を正したくなる、社会的意義が非常に大きい作品です。