食糧人類-Starving Anonymous-

人類VS人外ものの名作

食糧人類-Starving Anonymous- イナベカズ 蔵石ユウ 水谷健吾
六文銭
六文銭

個人的な感想で恐縮なのですが、正直コレ系の作品って冒頭からインパクトのあるテーマ・設定とショッキングなシーンがテンコもりなので、後半はダレる傾向にあると思っているんですよ。 最初の期待値を超えてこないというか。 でも、本作は最後まで読めてしまい、最初から最後まで裏切らない感じが面白かった証拠だと思います。 7巻で短くもないですが、長編ほどでもないのも良かった。 さて内容ですが、 とある星からきた虫みたいな異星人の食欲を満たすために、人間が食料になるという設定。 その異星人は、想像にもれず大きくて凶暴。 そこで国が、核処理場と偽って、人間を家畜のように繁殖・飼育できる施設をつくる。 主人公は、その施設に入れられてしまい、現実離れした世界に恐怖し脱出をはかろうとします。 同じように施設から出ようとする、ないしはこの施設と深い関係のある2人の人間、山引とナツメと出会い・・・という流れ。 この2人の人間が、特殊能力があったり色々いわくつきで、そこから展開されるストーリーは、想像の斜め上をいって飽きないんです。 (若干、ご都合主義的な部分もありますが、それはご愛嬌で。) 特に、最終的に上記の異星人と対峙するのですが、その倒し方が秀逸すぎて・・・ 過去こんな残虐な(色んな意味で)倒し方があったのか?と唸りました。 また、虫みたいな異星人のフォルムがキモい上に残虐で、そのグロ表現も本作の魅力です。 文明が高度に発達した星から来たとか言っているけど、腹減りすぎると共食いはじめるとか、その知性のカケラもない行動に不気味さを加速させます。 人外VS人類、パニックホラー、SFにピンときた人はおすすめしたい作品です。

ヒーローさんと元女幹部さん

善と悪のその先へ #完結応援 #マンバ読書会

ヒーローさんと元女幹部さん そめちめ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

これは、悪の組織の女性たちの、変化の物語。 人間のネガティブな感情から生まれた彼女たちは、純粋に人間を滅ぼす意志だけの存在だったが、「個」の形をもつことで個性を獲得し、複雑な存在になる。 ヒーローの女性に惚れてしまった女幹部は、情欲に悶えながら、ヒーローの底抜けの優しさや真っ直ぐさに信頼を寄せ、変化してゆく。 下心と、精神性の両方で惹かれる……私もそんな恋をしてきた、と思い出す。 他の女幹部の二人は情を交わす中で「子供」を作り、家族の絆で主人公たちに対抗する。ここでは主人公たちの一方的な正義は崩れ、正義同士の争いが葛藤を生み出す。 彼女たちは笑い、泣き、欲望で動き、誰かを想う。その中で誰かは悪を漂白され、誰かは原理主義に染まってゆく。しかしそこには単純な「善」も「悪」もない。複雑な「個」がある。 私は最終的に誰かを憎むことができなくなる。それぞれの葛藤に、同調してしまうから。 そんな中で、悪の女幹部と情を通じたヒーロー女性は、百合を強力な推進力にして善悪の彼岸に到達する。彼女が見つける答えの大きさに、心が震える。 新しい次元の「強さ」を教えてくれる百合ヒーローものが、見事に完結した。