恋愛・ラブコメマンガの感想・レビュー4462件<<159160161162163>>これが音に聞くオメガバースというヤツか…Bite Maker ~王様のΩ~ 杉山美和子sogor25概念としては知っていたオメガバース。今まで手を出したことはなかったけど、一般的な概念だけ見ると「これって異性間の関係も加えたほうが物語が広がるんじゃないの?」と漠然と思っていた。そんな中で登場したこの作品。 1巻はオメガバース+この作品特有の世界観の説明を完了させることに注力してる感じだったけど、βが基本αに無抵抗な存在として描かれているので逆に過激な内容に(オメガバースでは一般的な設定なんでしょうか…?)。 主人公が女性のΩということで、発情期の設定は弱めに(抑制剤を飲んでいる描写はあり)、代わりに「Ωは確実にαを産むことができる」という所から番の意識を高める設定。 今のところは男性αに女性Ωの組み合わせなので、俺様男子系の少女マンガの文脈に近くて意外とオメガバースの設定が馴染んでる。逆に言うとシンプルに展開するとちょっとエロの強い俺様男子作品になってしまう可能性もありそうなので、発情期に対する心の抵抗だったり、女性αや男性Ωなどの他の性別のキャラだったり、オメガバースならではの展開が見られるのを期待。 1巻まで読了。朝の物語と、夜の物語さんらいず! 藤生ナミ兎来栄寿朝の物語と、夜の物語の二編を収めた単巻作品。どちらもヒロインが失ってしまった居場所を取り戻していく物語で、心に沁み渡ります。おじいちゃんのような老成した黒髪美少年が好きな人、三角関係ものが好きな人にもお薦めです。予定調和のようでもある青春劇が、爽やかに快く夜明けの光の粒子のように心に降り注ぎます。一生懸命考えてる東堂院聖也が面白いなぜ東堂院聖也16歳は彼女が出来ないのか? 内乃秋也 茂木完田むサラッと読めてしまうマンガ。 東堂院聖也が悶々と考え続けるわけですが一人考えて、もしくは振り回されて考えてる様、好感がもてる!! いや、彼女できる!できるよ! そのモノローグを全部声にだしてしまえば彼女できるよ!なんか応援したくなってしまいます。彼女どうこうより彼の独白が一番面白いですね。サンデーらしいファンタジー&ラブコメ水女神は今日も恋をするか? 三簾真也名無し予想外に面白かった! カラー絵の印象からどうしようもないお色気漫画という先入観を持っていたが、読んだら違った。 お色気といえばお色気かもしれないけど、マギのようなファンタジー要素、魔王城でおやすみのようなコメディ要素があって、世界観自体に魅力があった。 雨の降らない世界で、唯一水を出すことのできる女神とされる少女が、体から水を出す(意味深)という話で、ピュアなラブとエロさのバランスがちょうどよくて面白い! こういうのでいいんだよ、こういうので。 モテないことに説得力のある漫画なぜ東堂院聖也16歳は彼女が出来ないのか? 内乃秋也 茂木完田名無し眉目秀麗、文武両道、金持ちと三拍子も四拍子も揃った主人公。天から二物も三物も与えられている男である。でもモテない。なぜかモテる主人公はいっぱいいるが、これだけモテる要素を集めてモテない主人公は珍しい。 だが、読めばその理由がわかる。性格が悪いわけではない。行動力がないわけではない。しかし、自分をさらけ出すことができない。自分に自信がない。「彼女を作ること」が目的化してしまい、自分も相手のことも見えていない。そりゃ、モテないよって思う。ただそれでも彼女を作ろうと頑張る主人公はすごい。すごいんだけど、多分彼女を作ろうせず、何か他のことをした方が確実にモテそうなのが悲しい。 彼女ができない人は一読の価値あり。ちなみにイケメンの友人は「主人公がきつくて最後まで読めなかった」と言っていた。その友人にも彼女はいない。 気がついたら好きになっているが最強神のみぞ知るセカイ 若木民喜名無しギャルゲーの知識と経験を活かして女の子を「攻略」していくというコンセプトがまず面白い。人によって好き、嫌いが分かれる設定だが主人公の桂馬君がオタクゲーマーとは思えない行動力を備えており見ていて清々しい。実は顔、知力、コミュ力と揃った稀有な主人公。ロジックで行動しているだけのように見えて、きちんと一人一人の女の子のことを桂馬君なりに考え、きちんと感情、気持ちを向けている点が好ましい。また、ただの色物設定の漫画ではなくて、人を好きになるってのはどういうことなの?ということや、オタクはどうやって現実と向かい合うの、と言ったテーマが込められているように感じる。ひきこもりの経験が作品内で活きていることは作者にとっても救いであろう。多層的な枷が物語に深みを与える百合作品たとえとどかぬ糸だとしても tMnRsogor25実の兄の奥さんに恋をしてしまった女子高生のお話。 特に主人公のウタは自分の気持ち以上に、相手が女性、しかも実の兄の奥さんであることや、自分がまだ自立できていない高校生だということなど、自身と周りの状況についての理解が深くて、深すぎるからこその年齢不相応に大人びた振る舞いをしている。 百合作品だと相手が同性という理由から恋愛に対してストレートに行動できない場面も多いけど、この作品の場合はより多層的な縛りがあることによりウタの感情の揺れ動きに深みが生じる。 最新4巻は前巻最後の薫瑠のモノローグから薫瑠が意を決してウタと向き合おうとするまでの数日間。 その間にウタと薫瑠それぞれの心境に変化を与える出来事を詰め込んでくる。なぜこの世界にはこんな辛い恋をしている人間しかいないのか。 少し近い設定だけど今のところ恋愛要素を打ち出してない「兄の嫁と暮らしています。」辺りと対比させて読むと面白いかもしれない。 連載再開鼻下長紳士回顧録 安野モヨコ名無し※ネタバレを含むクチコミです。いい意味できつい作品だなと思ったら岡田麿里だった荒ぶる季節の乙女どもよ。 岡田麿里 絵本奈央名無し思春期に異性との距離感を図りかねていた人には刺さる作品。正直言っておかしいでしょ、みたいな展開、理論はあるがちょっと悔しいことに面白い。 要所要所嫌な思い出が蘇るシーンがないでもないけど笑ラブコメというオブラートで包みながらも隠しきれないフェティシズム不完全で不衛生でふしだら すのはら風香sogor25あらすじはシリアス系の恋愛ものっぽく見える、でも表紙を見ると階段の踊り場で女子に歯磨きされる男子。アレ?と思いつつも1話を読むとブッ込まれるド下ワード。面食らいつつも続きを読むと中身は言うほどエロくはなく、グイグイ来る系の女子と過去に闇を抱えてて他人を避けてる系男子の素直な感じのラブコメでした、という、何重にもオブラートに包まれながらぶつかってくる作品。 表紙の歯磨きシーンを見た瞬間某作品を思い出した方もいらっしゃると思うけど、この作品はそこまで歯磨きシーンの描写自体は濃くなく、というか1話以外ではほとんどない。それなのに作品全体から溢れるフェティシズムの波動がヤバい。 1巻まで読了。 丁寧に進んでゆく百合作品女流作家とユキ なごり悠sogor25最初は作品のファンとして先生に好意を持ったところから徐々に百合の様相を呈していく様子がゆっくり丁寧に描かれている。公式の紹介文にあった"大正百合ロマンス"という言葉が本当にピッタリな作品。 1巻の最後でちょっとミステリーっぽい展開をチラ見せしてたけど、私知ってる。これ、シリアスと見せかけて結局なんでもないっていう風になるヤツだ、間違いない。 1巻まで読了人外ものと思って避けるには勿体無い純潔乙女とユニコーン 岩飛猫sogor25ユニコーンを使役する立場のマリアーシが純朴なのでそのまま純愛展開に進むのかと思いきや、様々な思惑が絡んでバッドエンドすら見える展開に。明るい絵柄とのギャップのある物語にとにかく目が離せない。 純粋無垢すぎるマリアーシの性格が、ラブコメ展開にもダークファンタジー展開にもいい感じに作用している。絵柄も明るいしキャラそれぞれの背景も入り組んでる割に分かりやすい。 私は表紙買いだったのですが、表紙を見て人外ものと思って避けるには勿体無い作品。 1巻まで読了良い意味でアニメ化してほしくなかった作品荒ぶる季節の乙女どもよ。 岡田麿里 絵本奈央sogor251話からワードのインパクトが強くて、性というものがテーマの物語かと思っていたけど、途中から徐々に、主要5人のキャラクターそれぞれの恋愛に対する感情(それは性愛もあれば情愛もあり、一言では言い表せないような感情もあり)をいろんな方向から描いている、そんなように感じ始めた。 そしてそこに友情関係としての情の気持ちも絡めて大きく物語が動き始めた6巻。序盤から性についての話題を振ってたのはこの展開をさせたかったからなのではと思う。はたしてこの後5人それぞれはどういう方向に結論を出すのか、すごく楽しみ。 この作品に関して、アニメの脚本をメインに活動されている岡田麿里さんが敢えてマンガという表現方法を選んだ理由はわからないけど、個人的にはアニメや実写よりもマンガのほうが適していると思っていた。マンガ読み、特にBLとかTLに手を出してる人だと、セックスだとか勃つ勃たないみたいなワードにはさほどインパクトを感じなくて、だからマンガという媒体でこそ素直にこの物語を楽しめるのではないかなと。 なのでアニメ化が決定したことは素直に嬉しいことではあるんだけど、それによって視聴者層がよりマスになり、言葉のインパクトだけが先行して変な盛り上がり方をしなければいいな、とそれだけを願っている。 6巻まで読了。 非常に王道な少女漫画CRAZY FOR YOU 椎名軽穂名無し君に届けで有名な椎名先生の前作。明るくて垢抜けない女の子が、影のあるチャラそうな男の子に惹かれるというテンプレみたいな展開だが、きちんと友人達のキャラが生きていて、十代特有の狭い人間家系ですべてが構築されている感じが良かった。また、主人公の相手のことはとても好きだけど、一途な自分には酔わないというスタンスに好感が持てた。わずか六巻で良くまとまった漫画だと思う。 だめだめな五代くん、でもそんな彼が愛おしいひとが集まるスレめぞん一刻 〔新装版〕 高橋留美子ぴっぴ私は初期の五代くんが好きです。だんだんイケメンになってくんだけども。保育士の勉強をがんばる彼も好きだけど、誰にもでも優しいそんな彼が好きです!!生と死と愛の超傑作SF『愛人[AI-REN]』愛人 [AI-REN] 特別愛蔵版 田中ユタカ兎来栄寿 こんなにも素晴らしい傑作が、知る人ぞ知る名作として埋れている…… 果たして、このままで良いのか? 否ッ! 断じて否ッッッ!! 一人でも多くの漫画やSFを愛する人に! そして、この残酷な世界で人生に悩む方、悲しみの淵に暮れている方に!! この至上の愛の物語はもっともっと読まれるべきなのである!!! そんな万感の願いを込め、使命感を持って、今回筆を執っています。 確かに、この『愛人』というタイトル。 ヤングアニマルという掲載誌。 そして、この表紙。 「低俗な成人向け漫画かな……?」と敬遠してしまう気持ちも、解らなくないです。 ですが、それは大いなるミスリードに掛かっているのです! 愛人と書いて「あいれん」と読むタイトル。 そこからは一見して想像できない程に、深遠で重厚なテーマや想いが詰め込まれた、未来SFとなっています。 何せこの作品、創られ方が凄いです。 1999年。 世間ではノストラダムスの大予言を中心に終末論が蔓延していた時。 そんな時代に、連載が始まりました。 時勢に沿ってか、人類が通常の生殖機能を喪い種としての終わりを迎えつつある世界を描いて行きます。 そして、一度の休載もなく2002年連載終了。 ここまでは良かったのです。 しかし、待てども待てども出されない最終巻。 何と、連載が終了してから最後の5巻が出るまでには二年以上も掛かりました。 何故か? それは田中ユタカ先生が全身全霊を賭して、改稿・加筆作業を行っていたからです。 今作のラストは、雑誌掲載版とコミックス版では大きく異なった物になっています。 コミックスで加筆修正が行われる、それ自体はよくあることですが、それに二年が費やされるというのは極めて異例です。 普通に商品として漫画を考えるならば、『愛人』は失格でしょう。 しかし、視点を変えて、一つの作品として考えた時には違って来ます。 その二年間が素晴らしい作品の輝きを、更に途轍もない領域まで磨き上げたと言っても過言ではありません。 今回、この稿を書くに当たって、改めて精読しました。 全編面白いのですが、やはり5巻の部分は格別であり、至高です。 一度築き上げた物を全て崩し、死に物狂いで改めてこの結末を持って来た田中ユタカ先生に対し、私はあらゆる賞賛を惜しみません。 熱い涙無しに読むことなんて、絶対に無理です! ところで、漫画が好きな人なら、一度位は自分で漫画を描いてみたいと思ったこともあるのではないでしょうか。 マンガソムリエである無類の漫画好きの私も、多分に漏れずそんな経験があります。 結構本気で、丸二ヶ月間あらゆる余暇を捨て去り、平均睡眠時間3時間を切る程に根を詰めて、一作を描き上げました。 その時に、自分はこの生活を一生続けるのは無理だな、と諦めてしまったのですが……。 しかし、そんな僅かな時間の中でさえも実感したことがあります。 登場人物に絶大な辛苦を強いる際には、自分でも不可解なほどに嗚咽が止まらなかったり、怒りで情緒不安定になったりするのです。 多くの作家、『ワンピース』の尾田栄一郎先生なども、キャラクターを描く時には感情移入し、同じ気持ちになりながら同じ表情で描くといいます。 それを考えると、『愛人』の壮絶なるクライマックスと格闘している時の田中ユタカ先生は如何許りだった事か…… 田中先生は、『愛人』の連載が終わった後は自分の中に漫画を描く能力が無くなってしまったといい、実際暫く何も描けなかったそうです。 これだけの作品であればそういう事も起こるだろう、と読めば自然に納得できます。 ネタバレになるので語れませんが、一線を画す愛が『愛人』では描かれています。 どこまでも残酷でありながらも、果てしなく美しい世界が、呈示されています。 常に死が共に存在する中で、尊き生への頌歌が謳われています。 こ、ここまで描いてしまうのか……と、半ば放心してしまうような凄味があるのです。 これ位途方も無い作品を描き上げられたら、私なら人生に悔いが無くなるでしょう。 ……本当はその凄さを赤裸々に語りたいんです! でも語れない…… 嗚呼、もどかしい! さあ、早く読んで、誰かこの素晴らしさを語り明かしましょう!! 恐らく生涯顔を合わせることのない、それでもこの世のどこかで一度しかない人生を懸命に生きている誰かに届けば、そんな嬉しいことはありません。 そして、田中ユタカ先生。 こんな大傑作を描いて下さってありがとうございます! 通常版と特別版がありますが、空白の二年間のメイキングを含んだ濃厚なインタビューが掲載されている上下巻の愛蔵版をお薦めします。 REXらしい攻めたラブコメ佐土原和葉は完璧ですか? おおのいもmampuku一見して完璧美少女だが裏の顔は「金持ちの男」にしか興味がないヒロイン佐土原和葉がポンコツ可愛い漫画。イケメンな幼馴染も交え、同じ一迅社の「政宗くんのリベンジ」に負けず劣らぬ複雑怪奇なラブコメになっていきそう。 外面はいいが実はお金が目当てであの手この手で同じクラスの御曹司に近づく、というあらすじだけ見るとただの性悪だしまったく可愛くないが、おおのいもの絵がとにかく戦闘力高いのと(表紙だけでは伝わり切らないので試し読みを参照されたい)、恋愛下手すぎて空回るポンコツぶりが憎めないのとで、なかなかどうして魅力的なキャラになってしまっている。このあたりも「政宗くん」と少し被る。 あと、自室でのポニーテール姿が宮水三葉そっくりwぐいぐいくる京女とヘタレ先生古屋先生は杏ちゃんのモノ 香純裕子むカッコ悪いイケメンはずるい!可愛いから! そしてみんな関西弁なんですが女子がぐいぐいくる…。男子の方が女子に惹かれるという構図、なかなか新しい始まり方な気がしました。ファーストキスが女子高生から先生にってなかなかですよ! よかったよかった;パーフェクトワールド 有賀リエむついに結婚で読者としても純粋におめでとうといいたい。 こういうカップルが実際にいるなら赤の他人でもおめでとうと言いたい。 車椅子でタキシードの新郎に新婦がしゃがんで誓のキスするってほんと素敵な絵ですね… おもろかったGANTZ 奥浩哉名無しおもろいおもろいGANTZ 奥浩哉名無しおもろかった 人の弱さを精緻に、自然に、サタニック・スイート ヤマシタトモコにわか表題作「サタニック・スイート」を含んだ六編の短編をまとめたヤマシタトモコの短編集。静かにさり気なく描写される表情や動き。六つの短編はどれも不思議な魅力に溢れている。 「妖怪」の友人だろうが、「超能力」をもった女の子だろうが、あるいは先生を手玉にとる女の子だろうが、自然と感情移入し、気がつけばヤマシタトモコの世界にどっぷりと浸かっている。なぜそうも遠い人々に感情移入させられるのだろうか。読み返すと、どの作品にも「人の弱さ」が描かれていることに気付く。つまり人の弱さを精緻に、自然に、描いている。そこでは誰もが弱さを抱えて、生きているからだ。だからヤマシタトモコの作品は面白い。サタニックスイートは、そんなことを教えてくれる貴重な短編集なのだ。 好き好き大好き超愛してる。ねじまきカギュー 中山敦支ぱにゃにゃんだーとは舞城王太郎の小説のタイトルですが、カギューちゃんのカモ先生への愛情はまさにこんな感じだなと思う次第であります。あらすじには「“バトル×純愛×個性的キャラ”を最驚の表現で抉り出す!!!」と書かれていて、おおよそここから予想できる通りの内容で、だいたい想定外の作品になっています。なので、期待した通りの面白さは得られますし、期待を裏切られる楽しさも得られます。だから、読んでなかったら読むのをお勧めします。 ねじまきカギューあるいは中山敦支という作家が好きなところは主に二つあります。一つ目は行間の使い方です。 言うまでもないことですが、一コマ一コマの枠線の外側には、小説では行間と言いますが、何もない空白がありますよね。彼はその空白の使い方が上手です。 この空白は漫画という表現の特殊性のひとつだと思いますが、考えてみれば不思議な存在です。見栄えとしては連続性が絶たれているのに、読むという行為によって自然と補完され、損なわれることがありません。きっと、一つのコマの意味を理解し、それまでの流れを汲み取り、行間という空白では描かれていない何かを補完することで、間隙の表現形態である漫画の読書体験が成立するのでしょう。 つまるところ、漫画を読むとはコマとコマの間に存在する空白を埋めつつ読書すること。しかし、中山敦支という漫画家は、それまでのコマが指し示した方向に沿って読者が埋めた空白をぶち壊して、全く未知の展開を次のコマでいきなりぶん投げてくるわけです。下手な例えで恐縮ですが、愛し合う二人が感動の再会を遂げた次のページで、出刃とドスで相手の腹を刺しあっている、みたいな。漫画家と読者の間のお約束的な予定調和を次々と破壊していく。それでいて物語の大筋は崩さず、むしろ深度を増していく手段としています。 漫画を描いたことがないわたしがいうのもなんですが、きっと漫画を描き始めたとき、このコマとコマの間の意味的距離感に戸惑うと思います。離し過ぎては伝わらないし、近過ぎては冗長になる。しかし、中山敦支は適度に伝えた上で裏切る。間隙の美とは(わたしが今思いついたのでこんなものがあるのかは不明ですが)、彼に与えるべき賛辞だと思うわけです。 さて、中山敦支の好きな二つ目。これはもっとシンプルで作画力です。美術的なことに明るくないのでわかりませんが、ねじまきカギューはポップな感じの絵柄でキャラクターが描かれています。パワーパフガールズをもうちょっと日本風に味付けし直した感じ。原宿っぽい気もする(よくわからないけど)。ですが、彼自身はおそらく割と正統派な漫画キャラも描けるし、あるいはもっと荒々しくも描けるはずです。全体的には和製パワーパフ(としておきましょう)ですが、要所要所ではそのスタイルも崩して多様な描かれ方がします。感心したのがキュビズム的なのも取り入れられていて、すごいなぁと思ったわけです。そういう意味でも見ていて飽きない作画力のある漫画家だと思います。 あとですね、雑誌派の方もいるとは思いますが、単行本の描き下ろしオマケ漫画でほっと胸をなでおろすことができるので、まぁこれを機に雑誌派も読んでもらえると嬉しいかな。 またもや、長々と書いてしまいましたが、ねじまきカギューは絶対個性主義(キャライズム)を校訓とする学園を舞台としております。そして、物語はトラウマイサーへと続くわけです。ぜひこちらも。果たしてこの作品に今後ラブコメの「ラブ」のほうはあるのか咲けよ花咲け! モリコロスsogor25それぞれの趣味を語るときの、腐男子の飛島くん、百合女子の町屋さんのテンションの振り切り方が表紙詐欺レベル。そして明らかに前作より一コマの情報量が多い。完全に物量と圧力で攻めてくるタイプのコメディ。 主人公が腐女子っていう設定の作品だと多いのが同人でBLを描いてるっていうもの。でも今作は美大が舞台。その結果、同人活動よりも性癖バレのインパクトが大きくなるのと、仕事とかいうオタ活動に不要な存在を消し去ることでより趣味に没頭するキャラを描くことができるのが強みかも。 ちなみに、物語の途中、前作「のぼさんとカノジョ?」の主人公らしき人物が登場します。 『宗教論の授業?もしや…やっぱり!のぼせんせぇぇぇ!』と叫んだのは私だけじゃないはず。 1巻まで読了。<<159160161162163>>
概念としては知っていたオメガバース。今まで手を出したことはなかったけど、一般的な概念だけ見ると「これって異性間の関係も加えたほうが物語が広がるんじゃないの?」と漠然と思っていた。そんな中で登場したこの作品。 1巻はオメガバース+この作品特有の世界観の説明を完了させることに注力してる感じだったけど、βが基本αに無抵抗な存在として描かれているので逆に過激な内容に(オメガバースでは一般的な設定なんでしょうか…?)。 主人公が女性のΩということで、発情期の設定は弱めに(抑制剤を飲んでいる描写はあり)、代わりに「Ωは確実にαを産むことができる」という所から番の意識を高める設定。 今のところは男性αに女性Ωの組み合わせなので、俺様男子系の少女マンガの文脈に近くて意外とオメガバースの設定が馴染んでる。逆に言うとシンプルに展開するとちょっとエロの強い俺様男子作品になってしまう可能性もありそうなので、発情期に対する心の抵抗だったり、女性αや男性Ωなどの他の性別のキャラだったり、オメガバースならではの展開が見られるのを期待。 1巻まで読了。