朝日新聞出版/マンガマンガの感想・レビュー54件<<123>>タイムスリップしちゃう癖がある主人公時間の歩き方 榎本ナリコななし主人公はドアを開けるとタイムスリップしてまう癖がある以外はフツーの中学生の杉田果子。ある日タイムトラベルをしていた未来人の井村愚太と出会いますが、それがきっかけで時間の流れが変わってしまい果子が片思いしている先輩が死んでしまいます。なんとか愚太の力を借りて自分のせいで死んでしまった先輩の運命を変えることに成功しますが、その影響で今度は二人が時間の流れからはみ出してしまったので、タイムトラベルをして元に戻る方法を探しにいく話です。 私は普段あまりファンタジーやSFを読まないので、ストーリーが進むごとに複雑になっていくタイムパラドックスの理論とかは難しかったです…。でも最初の先輩の事故を防ぐ為に奮闘する話や終わり方、作品全体の雰囲気や絵も好きなので、榎本ナリコ先生の他の作品も読んでみたいと思いました。こんな内容だったっけ?ミライザーバン 松本零士starstarstarstarstarマンガトリツカレ男松本零士の漫画でよく登場する「時間の輪」の話で過去/現在/未来は循環していしてその輪の中で生き続けるミライザーバンが主人公。内容はミライザーバンを狙うコスモナータや ドクラス星人や100世紀の未来からきたゼンペストとなど戦う。 20年ぶりぐらいに読んだけど、記憶が松本零士の「ダイバー0」と内容が混ざって覚えていた。深い森の物語星が原あおまんじゅうの森 岩岡ヒサエナベテツファンタジーという言葉の示す範囲は非常に広いのですが、このタイトルは日本におけるファンタジーの一つの最高到達点と言っても良いと思っています。 人ならざるものと恋に落ちる。そう書いてしまうと月並みな物語ととらえられてしまうかもしれませんが、この作品では岩岡先生の巧さを感じることが多く、読み終えて良かったなあという感想を抱きます。 季節の移ろいを感じる物語なのですが、読み終えるときっと暖かな気持ちになる、そんな作品でした。逆に怖さが増してる猫で語る怪異 TONOstarstarstarstarstarひさぴよ怖い話が苦手な人でも読めるように「人間」を「猫」に置き換えて描かれた実話ベースの怪談集。主にTONO先生が友人・知人から聞いた話、又聞きした話で構成されています。 こわーい話でも、猫で描いちゃえば平気でしょう?という訳で、何も怖れる必要はないはずなのですが、結果として語られる話がどれも怖ろしく感じて仕方ありませんでした。 というのも、可愛い猫だろうと何だろうと、どうしたって頭の中で人間に置き換えて想像しちゃうからです。想像次第でどこまでもビビってしまう恐ろしさがある漫画でした。 そもそもですけど、冒頭では怖いの苦手な人のために〜と説明されてたのに、肝心の怖いシーンでは猫じゃなくて人間で描くのは約束が違うじゃないですかッ! クレイジーピエロは怒りと憎しみそのものクレイジーピエロ 高橋葉介かつて高橋葉介を読んだ者(といってもごく一部だが)クレイジーピエロには最近よく見られる「むしゃくしゃするから誰でも」といった「理不尽」は無い。クレイジーピエロは怒りと憎しみそのものではないかとも思ったりもする。だから自身の行動がもたらす結果といったものには無頓着なのだろう。 クレイジーピエロの生みの親でありかつ一時的に封じ込めた老婆の元を去る際、実際の漫画では無言であるが、自分はこんなセリフを妄想したりした。 「俺達の仲間にピストルの弾を歯で受け止める記述が得意なシルバーがいたよな。彼は面白半分に口にピストルを突っ込まれて殺された。『奴は運が悪かった』なのか。『戦時中だったから仕方が無い』のか。殺されても構わない人間だったのか。」世界中の戦士がやってくるアパート三丁目雑兵物語 グレゴリウス山田ななし十三世紀のハローワークとか竜と勇者と配達人の作品ということで買ったけど長らく積んでいたやつ。 日本の足軽を始めとして、ドイツのチュートン騎士団とかイスラームのアサシン、アステカのポチテカ、北欧のヴァイキングなどなど、大量の「戦士の女の子」が主人公が大家を務めるアパートにやってくるゆる〜い話。 ノリはゆるいけど、歴史的情報は細かく描かれていて好きな人にはたまらないと思う。 ヴァイキングの兜にツノは後世の創作で実際には無いって初めて知った。思えば幸村先生の私物にもツノはなかったと気づき興奮した。 https://natalie.mu/comic/news/333910クレイジーピエロとしか言えないクレイジーピエロ 高橋葉介マンガトリツカレ男内容はまさに「クレイジーピエロ」としか言えない内容 「クレイジーピエロ」「クレイジーピエロ 殺人サーカス」「クレイジーピエロの伝説」の3作で成り立っている 勧善懲悪のとか問題の解決とか道理など全くなく、「クレイジーピエロ」があらゆる方法で殺戮をくりかえす。問題を大きくしてより大きな破壊より多くの死をもたらしているだけで救いもほとんどない。あまりにもやばくて敵が発狂するシーンまである このセリフが内容の全てを表していると思う 「俺はクレイジーだからな、そんな道理はわかりゃしないのさ」 併録されている「義眼物語」「顔がない」も素晴らしいのでぜひ読んで欲しい #1巻応援 温泉旅番組を見ている感じ49歳、秘湯ひとり旅 松本英子Pom 旅番組を見ているようだった。 温泉に行きたくなりました。 温泉ひとり旅、いいなぁ。 年齢を重ねても楽しめる、行きたいと思える場所があるって人生彩られると思うし、本当に素敵だなと思った。 筆者さん、これからも温泉行き続けるんでしょうね〜 この生き様、貫いていってほしいです。 描写と言葉から行った場所を想像することができたので、一瞬逃避できました。笑 良かった!老若男女が楽しめる落第忍者乱太郎 尼子騒兵衛名無し小学生のころ、新聞で連載されており、単行本も持っていました。あまり優秀でない主人公が、個性豊かな同級生と過ごす忍者世界の日常が描かれています。新聞に連載されているだけあって、毒のある内容は含まれていないし、「ご飯を残してはいけない」などの教育的内容も含まれていて、子供たちにも安心して読ませられると思います。たくさんキャラクターが出てくるので、お気に入りのキャラクターを探すのも面白いかもしれません!美しい少女の人形を〈育てる〉不思議な物語観用少女 川原由美子名無し自分が小学生の頃に発売されているようなのですが、さすがにネムキは読んでいなかったので知りませんでした。90年代くらいの少女漫画で似たような絵柄だと武内直子とかCLAMPを思い出すのですが、なんか自分の中でそれらの好きを超えた気がします。 内容も”美しい少女の人形を育てる”という不思議なもの。食べるのは極上の砂糖菓子とミルクだけで、愛情をかければかけるほど応えてくれます。それはただの微笑みなんだけど、まさに天使のような微笑みなんです。その魅力に翻弄された男達の末路はそれぞれ悲喜こもごもでお話としても面白いんですよ! この作風が刺さりそうな人ってたくさんいそうな気がします。 二次元でも三次元でもなく、ど次元!!栞と紙魚子シリーズ 諸星大二郎影絵が趣味漫画というのは二次元+一次元(コマの挿入による時間の推移)で出来ています。しかし、私たちの日常生活は四次元として展開されていますから、漫画もそれに即していかなければ、リアリティのある物語を描くことができません。そこで漫画の本来の領分であるところの二次元に補助として光学を採用する、すなわちデッサンです。これにより漫画は、平面上にかりそめながら立体を再現することが出来たということになります。 はい、何を当たり前のことを言っているんだろう、という感じですが、諸星大二郎に限っては、この当たり前が当たり前ではなくなってしまう。何しろ、タクシーのなかでさえデッサンが寸分も狂わなかったと言われる手塚治虫、大友克洋が出てきたとき「あんな絵は僕にも描けるんです」と豪語した手塚治虫が「諸星くんの絵だけは真似できない」と言っているのですから。 つまり、諸星大二郎は他の漫画家のように二次元+光学の補助という絵の描き方をしていないんですね。『栞と紙魚子シリーズ』はそれがもっとも顕著なんですけども、彼女たちの暮らす胃の頭町(いのあたまちょう)はなんかよくわからないけど異界に通じているらしい。その異界の異界ぶりをもっともよく表しているのがクトル―ちゃんのお母さんですよね。あの顔の目茶苦茶でかいお母さん、あれはどう考えてもデッサンでは描けない。あの顔で、いったいどうやって段先生のボロ屋に収まっているのやら。もしあれをデッサンで描こうものなら、それこそ二次元でも三次元でもない空間の捻じ曲がった異界が爆誕してしまう。というか、この爆誕してしまった異界こそが諸星大二郎の絵なんです。 とくに栞と紙魚子が姿のみえない首輪だけのペットを散歩させる回は秀逸でした。ペットに引っ張られて段々と異界に迷い込んでゆくわけですけど、その行く先のエステサロンにクトル―ちゃんのお母さんがいる。お母さんは「あら~、こんなところでお目にかかるなんて珍しいですわね」とか何とか言って、エステのマシーンから引き伸ばされたうどんみたいな姿で出てくるんです。もう、何がなんだかわからないでしょう。でも、これを大真面目に描いてしまうのが諸星大二郎なんです。インドってすごいインドな日々 流水りんこマウナケアなにかイスラムな漫画はないものかと探して行きついたのがこの作品です。ちょっと違うかもしれませんが…。これはサッシーというインド人と結婚した女性漫画家のインドでの体験をつづったルポ漫画。で、この作品、絵も内容も密度が非常に濃い。ヒジラというインドのオカマが子供の生まれた家で踊り狂う鬼気迫るシーンや、ガンガーを流れる水死体を見世物にするおじいさんの描写など、とにかく人物の表情が豊か。さらに話題も幅広くて、衣食住はもとより政治風習、動物、観光客、買い物、遭難、怪談、結婚式となんでもあり。作者がインドをふらふらしていた十年以上前の経験が中心で、情報としては少し古いかもしれませんが、それでも行かなくてはわからないインドの何たるかは十分伝わってきます。だから糞便の話がやたら多いくてリアルなのも許します。新久千映先生流の「おひとり三昧」yeah!おひとりさま 新久千映名無してっきりワカコ酒の作者本人による ノンフィクション一人酒飲み歩きマンガかと思っていたら アラサー女性(新久先生本人)一人での 色々なノンフィクション・イベント体験マンガだった。 「ひとり居酒屋」も勿論あったが「ひとり回転寿司」 「ひとり焼肉」などの飲食系のほかにも 「ひとりスポーツ」(人生初のバッティングセンター) 「ひとり行楽地」(営業時間ギリギリの後楽園) 「ひとりイベント」(災害訓練や舘ヒロシ来場イベント) など、なかなかにハードルが高そうなものまで多種多様。 ノリはやっぱりワカコ酒的で、少し酒が絡んだりしながらの 少し、おひとりさま故の自意識過剰か否かの葛藤も あったりしながらの ひとりも楽しいよ、という体験マンガ。 多分、新久先生のような方は多人数で行動したらしたで それにあわせた楽しみ方をするのだろう。 けれど、物事にたいする観察眼とか捉え方が独特なので こういう方だから一人で自由に行動しても 勝手にドンドン楽しみ方を見つけられるのだろうなあとも思った。 面白がる能力があるというか。 そして感じた面白さを他人にも面白く伝える マンガ術も持っているからこのマンガとか ワカコ酒とかの面白いマンガを描けるんだなあ、と思った。 大槻ケンヂの短編小説が原作くるぐる使い 大橋薫 大槻ケンヂマウナケアもうかれこれ30年近く前、アマチュア時代から知っている漫画家で、少女漫画的なホラーが得意な人という印象でした。ところがこの作品はちょいとテイストが違っていて、ホラーというよりは奇妙な話。アーティストの大槻ケンヂの短編小説を原作にし、少女漫画ではまず見ない、怪しい方向にベクトルを向けています。なにせタイトルからして「くるぐる」使い、ですもんね…。これ即ち狂人のことです。くるぐるにされた特殊能力をもつ少女と、その少女を見世物にするくるぐる使いとの間に起こった悲劇を、老人が語るという構成。かたや人為的に精神を破壊され、かたや望んで人の道を外れた二人の末路は相当に哀れ。ですが、その二人が失くしたもの、失くしてはいなかったもの、そして失くして知ったものを本当に丹念に描いており、いい意味で先入観をひっくり返されました。アングラ仕立てにも関わらず感動的ですらあるので、心して読んでください。んだよ…!この可愛さは!!ギガタウン 漫符図譜 こうの史代名無し鳥獣戯画ベースのイラストや素材って最近特に人気がありますね。 この本は「漫画特有の記号」=「漫符」をテーマに、戯画モチーフのゆる~い4コマで解説してくれています。もうね、本当にこのキャラクター達(特にウサギ)が可愛すぎて…ふむふむ言いながらにやけてしまいます。 「この世界の片隅に」でこうの史代さんを知ったんですが、こんなにキュートな動物を描くのか!!と感動しました。ロリータとか好きじゃなくても毒姫 三原ミツカズ大トロおすすめです。 絵が緻密なのに物語がどんどん進んでいくので、読むととても濃い時間を過ごせます。 切ない物語です。 中国ファンタジーお茶漫画空中飲茶飯店 かまたきみこ名無しこの世界の中ではお茶はとても大事なもの。 ジャスミンティーぐらいしか知りませんがこういう中国茶があるのでしょう… お茶を運ぶものとお茶を作るもののボーイミーツガールではありますが、お茶の方がきになる!! 飲茶がメインなんて他になさそうなネタで面白いです。「夢幻紳士」シリーズの中でも特に好きなのが「夢幻外伝」高橋葉介セレクション 高橋葉介名無しある時は、少年の姿で大人も目を背けるような猟奇的な事件を解決する少年探偵。ある時は太平洋戦争のまっただなかでガールフレンドのアッコと面白おかしく事件と解決するこれまた少年探偵。またある時は特別な“能力”を持ち、ご婦人とこの世ならざるものに好かれる美青年…。山高帽と黒い背広をトレードマークに、様々な時代に現れ事件を解決する夢幻魔実也。それが、高橋葉介さんが描く『夢幻紳士』の主人公です。 数多くの「夢幻紳士」シリーズの中でも特に好きなのがこの「夢幻外伝」。このシリーズでは、おそらく昭和初期と思われる時代を舞台に、美青年・夢幻魔実也が遭遇する幻想と怪奇が描かれます。 夢幻魔実也は風貌も含め立居振舞が超然としており、大概の事には動じたりしません。自然と、友人の頼み事や出会い頭の出会いからトラブルに見舞われる、巻き込まれ型の主人公となっております。 「人でなし」という話では、往来で痴話喧嘩をする男女を仲裁するところから、話は始まります。仲裁してしばらく後、スケコマシの男・大古木俊一が、修羅場を演じたのとは別の女と結婚し、その影でさらに別の女が面あてに自殺したことを知ります。自分でも理由がわからないまま、大古木の家に向かった魔実也は、そこで、人でなしを巡る女同士の怖ろしい戦いを目の当たりにします…。 一話一話は読み切り短編となっています。華やかな昭和モダンの風景とその輝きによって一際深くなる闇、そこに生きる夢幻魔実也がとても幻想的に描き出されるのです。 高橋葉介さんが書かれた『帝都物語』では“あの”加藤と共演しているので、そちらも見逃せません。さながら上質な童話のような作品毒蜘蛛夫人 岩崎ネリsogor25表紙とタイトルの通り、貴婦人のような見た目をした"毒蜘蛛"の物語。中近世のような舞台に幻想的な雰囲気、各話の結末も含めてさながら上質な童話のよう。登場人物の絵柄も独特で、1話毎にどっぷり世界観に浸れる。 主人公が"毒蜘蛛"なだけにダークな展開が多めではあるけども必ずしも一辺倒ではなく、雰囲気としては「燐寸少女」に近いかも知れない。物語の顛末を見守るだけでも味わい深い作品。 1巻まで読了。 自分の思春期を思い出してアァッてなる思春期コアラの一日 中憲人nyae木なんてダサいから、かっこいいものにしがみつきたい。そう思った思春期のコアラは、とにかくかっこいいものを探し続ける。 道路標識から始まり、街灯、神社の鈴の綱など、いろいろ探してみるけどどれも「かっこいい」じゃない。 そんなコアラが森を出て、都会に足を踏み入れたとき、あることに気づく…。 動物しか出てこないし、絵本のような印象ですが、思春期あるあるが良く表現されているので、人によっては黒歴史が蘇ったりするかも知れないですね。 ちなみにこの思春期コアラくんの理想のしがみつくものはこれみたいです。笑漫符は発明!ギガタウン 漫符図譜 こうの史代nyae1つの漫符の意味を解説して、実際に漫符を使用した例を4コマ漫画で描いた本。改めて、漫符の使い方や意味を知ると、意外と「なるほど」という気持ちになれる。 日本の漫画表現における漫符の存在意義と、他にはない使い勝手の良さのようなものを実感した。 実用書のようでもあるが、著者らしいのんびりと、かつシュールな世界観を十分味わえ、ファンであれば読んで損はないはず。 表紙でわかるように鳥獣戯画へのオマージュをされており、表情豊かな動物たちの日常が楽しい。マチ針が見守る恋のお話幸せのマチ 岩岡ヒサエかしこ同じビルの1階と2階でそれぞれお店を開いている男女のほっこり胸キュンなお話です。1階で喫茶店を営む女性は三雲さん、2階で手作り雑貨を販売する男性が谷野くん。実は両思いなのですが、お互いの気持ちに気付いていません。 タイトルのマチは谷野くんの仕事道具であり、お母さんの形見のマチ針が元になっています。このマチ針に亡くなったお母さんの魂が取り憑いていて、二人の行く末を優しく見守っているのです! 魂が取り憑くって文字にするとホラーですが、むしろおとぎ話のような世界に近いです。問題が起きれば念力を使って応援してくれる優しいお母さんの他にも、霊のような不思議な存在は多数登場します。ほのぼのしたやり取りが面白いです。 全1巻で手に取りやすく、お話のまとまりも大変よいので、色んな人にオススメ出来ます。読んでてめちゃくちゃ癒されました。 ギャグセンスが光る業界漫画オンエアできない! 真船佳奈名無しADと言ってもあまりピンとこない。 テレビの裏方でカンペを出してる人? 想像と反してリアルはこうだよ!って知れる漫画。 ギャグがいいですね…テンション高い感じが見てて飽きません。にんげんはこわいことなかれ 星野茂樹 オガツカヅオにわかオガツカヅオのホラーの根幹には「人間」がある。それは悪意や暴力性、あるいは行き場のないどうしようもなさ、そうしたものが超常現象を生んで、物語となる。お腹が重くなるような独特の後味の悪さはこの露悪的な「人間味」に起因している。それが気持ち悪く、くせになる。この感覚を見事に描いてみせた星野茂樹の漫画力も見逃せない。<<123>>
主人公はドアを開けるとタイムスリップしてまう癖がある以外はフツーの中学生の杉田果子。ある日タイムトラベルをしていた未来人の井村愚太と出会いますが、それがきっかけで時間の流れが変わってしまい果子が片思いしている先輩が死んでしまいます。なんとか愚太の力を借りて自分のせいで死んでしまった先輩の運命を変えることに成功しますが、その影響で今度は二人が時間の流れからはみ出してしまったので、タイムトラベルをして元に戻る方法を探しにいく話です。 私は普段あまりファンタジーやSFを読まないので、ストーリーが進むごとに複雑になっていくタイムパラドックスの理論とかは難しかったです…。でも最初の先輩の事故を防ぐ為に奮闘する話や終わり方、作品全体の雰囲気や絵も好きなので、榎本ナリコ先生の他の作品も読んでみたいと思いました。