うつヌケ

ムーピーのような

うつヌケ 田中圭一
影絵が趣味
影絵が趣味

手塚治虫キャラを使ったパロディギャグ漫画で世に出た田中圭一が手塚治虫文化賞を受賞してしまったという皮肉はひとまず置いておいて、それどころか、この『うつヌケ』という漫画の主題である鬱という病気のこともひとまず置いておきたいと思います。 というのは、この漫画が単なる鬱病のひとの処方箋となるべく手に取ってもらいたい本という以上に、もっと普遍的に感動的なストーリー漫画であるからだと思うからです。ストーリー漫画というのは、手塚治虫いらい数々の漫画家によって描かれ、無数の大人子供を熱中させてきた、あのストーリー漫画に他なりません。 この漫画は単なる病気への処置を促す書物という以上に、もっと肯定的で出鱈目なパワーに満ち溢れた感動的なストーリー漫画であると思うのです。田中圭一のストーリー漫画としての資質は前作の漫画家2世をインタビューする『ペンと箸』のときからすでにあらわれていたと思います、あの連載に涙したひとは少なくないのではないでしょうか。そして今作、あの忌々しい鬱という病気が、手塚治虫の『火の鳥』にでてくるムーピーを彷彿とさせるキャラとして描かれている。しかも、それぞれの短編の主人公が鬱を抜けるとき、あの丸っこいキャラとして描かれた鬱なるものを抱いたり突いたりして愛ででやるのです。そのときどきに、鬱でもないじぶんもつい目頭が熱くなってしまうのです。

マヌケなFPSプレイヤーが異世界へ落ちた場合

なんやかや長々書いたがぶっちゃけ表紙の女の子が可愛いから買った

マヌケなFPSプレイヤーが異世界へ落ちた場合 佐伯淳一 地雷原 UGUME
mampuku
mampuku

 近所のツタヤで推されてたので手に取ってみた。ゲーム中に異世界へ飛ばされる話。流行りか。FPSの装備(銃とか)でファンタジー異世界に紛れ込んでしまい、魔力がないので他の冒険者たちにバカにされるが銃があるので結局無双できてしまう。女の子にちやほやもされる。  この手の作品に対して設定のオリジナリティのなさを残念がることは、現実の馬が空を飛べないことを嘆くぐらい意味のないことで、見るべき見どころは他にある。  作画の人が意外とベテランで、奥行きを感じる多彩な構図、昔のガンガンみたいなクールな空気感、キャラクターの息遣いが感じられるような仕草や日常芝居が素晴らしい。話の方も、モンハンよろしく斃した敵をナイフでさばいて魔石や毛皮などを文字通り剥ぎ取って見せる美少女ヒロインに主人公が面食らったりなどコミカルな描写で世界観を教えてくれるので、淡々とゲームのチュートリアルみたいな説明されるよりよほど楽しく読めた。  続きが気になって仕方がないというタイプの漫画ではないが、気持ちよく入り浸れるのでそういう意味で続きが読みたくなる。