ひとりぼっちで恋をしてみた

優しさを学べる漫画

ひとりぼっちで恋をしてみた 田川とまた
mampuku
mampuku

一巻読了。 不器用でいわば「ちょっと足りない」女の子のもどかしい片思いと、友情と成長のお話。 新人さんかな?絵の完成度が非常に高い(博、成家慎一郎、オジロマコト、ゴトウユキコあたりを連想しましたが、そのどれともまた微妙に違う感じ) 頭の回転が鈍く、いつも上手く立ち回ることができず失敗してばかりの主人公。そんな彼女の人格を仲のいい親友たちは「天然」と称して可愛がってくれるが、本人にとっては死活問題で、ついには思いつめて家出してしまう。 極寒の北海道で野垂れ死にかけていたところを、水商売で生計を立てる一人の女性に拾われ、命を助けられるだけでなく「人生」において大切なことを教わる。一巻おわり。 主人公の少女はたしかに「足りない」がちではあるものの、それはこの社会に属する全ての人が多かれ少なかれかかえている普遍的なテーマだ。 「他人に好かれたい、良く思われたい。でもそのためにどう振る舞うべきかわからない。言葉選びが上手くいかない。なぜか傷つけたり怒らせたりしてしまう。」 逆説的だが、負のスパイラルから抜け出すためにはまず「他人によく思われるためにどうすべきか」と考える癖自体から脱却する必要がある。「言葉を発する自分」ばかり可哀想がり労るのをやめて、「言葉を受け取る相手」を慮る。それこそが、信頼関係の第一歩なのだ。 「ありがとう」、信頼関係の初歩の初歩、第一歩の言葉を一巻の最後で水商売のお姉さんから教えられ、感謝あるいは後悔か堪えきれず涙を流す主人公の少女。 とてもシンプルだが芯のある美しい話だ。2巻以降の展開にも期待したい

シェアファミ!

ワンオペ育児の大変さとその緩和策

シェアファミ! 日下直子
兎来栄寿
兎来栄寿

『大正ガールズエクスプレス』など、男性でも読み易い少女/女性マンガの名手である日下直子さんの最新作。ワンオペ子育てに限界を感じている三人のシングルファザーが、ルームシェアして一つ屋根の下で助け合いながら育児をしていく物語です。 開始4ページで登場する、出産・育児に対する世間の無理解。嫌な「あるある」ですが、世の中にこういう人や臆見は多いよな、と思ってしまいます。 逆に、主人公がいが自分一人だけで双子の育児をせねばならぬとなった時の想像できなかった苦労、そして一杯一杯の時に自分以外の大人が家にただいてくれるだけで救われる心地など、子育てを経験した人にとって思わず共感してしまうであろう描写が多数。 誰にも頼れずに孤立してしまい一人で抱えて苦しむことがが子育てで最も辛い時であると思いますが、それを緩和するための一つのやり方として現実的にも有り得る選択肢だと感じます。勿論、条件は難しいですし赤の他人と突然暮らすことで生まれる問題なども生じます。その辺りにもしっかり手は入れられています。その中で出てくる「基本的に他人に期待するべきではない」「けれど他人はたまに期待を超えてくる」という件は正にその通りだなと。 読むと子供を育てることの大変さが解り、現在や未来のパートナーを労わる気持ちが生まれるかもしれません。その内実写化されそうな内容です。

あの人の胃には僕が足りない

おねショタ×怪異×食!こんなの見たことない!

あの人の胃には僕が足りない チョモラン
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

ずっと気になってて、まだ2巻までしか読んでないんだけど、なんだこのマンガ!激おもろいんだけど!!! すぐ3巻買わなきゃ! こんなジャンル見たことないよ! 読み終わって良すぎてかーっとして何も考えられなかったよ! Twitterの載せられたマンガに対してよく「尊い」って書かれてて言いすぎじゃない?って思ってたけどこれは完全にそれでした! 「尊い」のやつでした! もし読んでない人いたら読んでほしいし、最初のリアクションは大切にしてほしいからできるだけネタバレは避けたいんだけど、ほんと作者さんめちゃくちゃセンスいいなー。 まず、おねショタの時点でめちゃくちゃいいんですけど、身長差は当然のこと、力関係とか経験の差とか、中等部の年下男子的には高校生の年上のお姉さんにはもじもじしてしまうわけで、もじもじしながらも頑張ってアプローチしてるのかわいいし、すぐお腹すいちゃうお姉さんの健康的でいろいろでっかいかわいさ最高だし、なんだか思わせぶりな感じも最高! まず、ここまでが第一段階の最高さ。でもここまではまだギリギリ想定内の良さ。 だけど、その最高の皿の上に「怪異」が乗っかってたら、ほら、もうめっっちゃいいじゃん・・!ってなる! グッと来すぎる!! おねショタのラブコメ見てニヨニヨしてたら突然、後頭部を丸太で殴られた感じ! 語彙力失うってこれか! 物語に急に広がりが出てきて、ストーリー的な展開も気になるし、この二人の進展も気になるし、怪異の謎とか、どうやら普通ではない主人公の出生の秘密的な部分もいよいよ気になってくるしで、むちゃくちゃのめり込んじゃう!! 普通じゃないきっかけで二人は近づくし、普通じゃないきっかけで距離を取ることにもなりそうで、簡単に言うと、この恋は全く予想がつかないし違う意味でもハラハラする!! あ、ラブコメ(ラノベ?)特有の、両親ともいなくて謎にヒロインと同居するっていう部分もあるじゃん・・。 主人公の料理上手なところとか健気で一生懸命な部分もめちゃめちゃかわいいんだけど、ヒロインもめちゃくちゃよくって、『富士山さんは思春期』みたいにおっきい女の子が、大食いなところともマッチしてて最高。 さらに言うと、食べる行為のエロさったらない。 なんの映画だったか忘れたけど、男女がテーブルいっぱいに広がった料理を挟んで、ひたすらに互いの目を見てひたすらに食べるシーンがあってもはやセックスみたいなエロさがあった。 『盲獣』という映画では快楽を求めた先にお互いの体を食べるという結末が待っていて衝撃だったけど痺れるエロさがあった。(映画のネタバレすいません) 個人的にはこの作者さんは漫画が上手なんだなーと思う部分がたくさんあって、なによりコマ割りがめちゃくちゃ読みやすい! 気づいてないだけで読みやすいってめちゃくちゃ重要で、ノンストレスでテンポよく読めるのって最高ですからね。 ニヤニヤしちゃうやりとりとゾッとする何かを描ける振り幅もたまらない~。 このままいけば早い内にアニメ化するんだろうなーと思った!

少女Aの悲劇

宇宙人の〇はメロン味🍈ドS少年×宇宙人少女のドタバタ劇!

少女Aの悲劇 あさの 中村力斗
たか
たか

先週のヤンジャンに掲載されていた中村力斗先生の読切『天子ちゃんの天界道具』を読んで思い出した作品。『少女Aの悲劇』というタイトルの意味は、表紙の頭を鷲掴みにされてる少女が結真ちゃん(宇宙人)で後ろにいる少年が林(地球人)なので、2人の力関係はつまりそういうことです。 https://manba.co.jp/boards/74128 素性を隠し地球に暮らしていた宇宙人の結真ちゃんですが、クラスメイトの林くんに正体がバレてしまったため、秘密を守ってもらうため何でも彼の言うことを聞くはめに…というあらすじ。 というか1話の2人の出会いからしてブッ飛んでて最高なんですよ…!(試し読みで読めばわかります) 林の結真ちゃんの扱いは、まあ〜〜酷い! 青春や部活など無駄なことに価値を感じない林は、宇宙人に路傍の石より興味を持たない。夜中に林の部屋(※2階)の窓を叩く女の子をいったん窓を開けたうえで突き落とす。 https://i.imgur.com/ZcbswQN.png (『少女Aの悲劇』あさの/中村力斗 第1巻より) だがそこがいい…! 行き過ぎた塩対応は…ラブコメの醍醐味「デレ」までの助走ッ…!!そのハッピーエンドがちゃんと想像できるので安心して読めます。 さらに言えば、理不尽な暴力や事故に遭うために読むのがキツい作品もありますが、この少女Aでは『ちゃんとギャグですよ〜〜』とわかるようにデフォルメがされているので、安心して結真ちゃんが酷い目に遭うところを楽しめます(※個人の感想です) 単行本で初めてこの作品を読んだのですが、全2巻でかなり巻いて終わった感じがありました。もっと2人がギャーギャーするところが見てみたかった…。 銀魂みたいに女の子がギャグシーンで大変なことになる話が好きな人におすすめしたいラブコメです!

四ノ宮小唄はまだ死ねない ‐BORDER OF THE DEAD‐

生と死の境界が曖昧になった世界で"生きる"ということ

四ノ宮小唄はまだ死ねない ‐BORDER OF THE DEAD‐ りいちゅ モンスターラウンジ 大槻涼樹
sogor25
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"生"同一性障害、通称「ボーダー」。本人の主観では普通の人間と同じように"生きて"いるのだけど、客観的、つまり生物学上その身体は"死んで"いる。10年前に突如そのような疾患が発生したために"生"と"死"の概念の境界線が揺らいでしまった世界。殺人事件が起こっても、それが「ボーダー」であれば"殺された本人"への聴取で事件が解決してしまう。一方、"死んだ"後の身体は、たとえそれ日常生活を送っていたとしても法律上は"モノ"扱いであり、「ボーダー」が死後も"生きて"いくためには相応の困難が待ち受ける。そんな世界で探偵助手として"生きる"少女、四ノ宮小唄の物語。 こんな感じであらすじを説明するとすごくSFチックな作品に見えるけど、実際の内容は表紙の印象に近いポップな仕上がり。でも押さえるところはしっかり押さえていて、"生"同一性障害という素晴らしい着想から、実際に「ボーダー」という存在がいたら起こり得そうな出来事がよく考察されていて、細かいところにもネタとして散りばめられている。そして物語全体に関わる伏線らしきものも見え隠れして、ここからどう物語が展開していくか楽しみな作品。 1巻まで読了

学び生きるは夫婦のつとめ

ある高校生の男女が出会い、結ばれ、そして幸せに死ぬまでの物語

学び生きるは夫婦のつとめ 小雨大豆
sogor25
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昔気質の硬派な高校3年生・鬼城御伽。彼の幼馴染でロシア生まれの女の子・ポーニャ。実は2人は結婚していて、同級生の間でもそれは周知の事実。この作品は、高校生2人が結婚生活にカチコミを入れ、家族や仲間と共に生き、そして"幸せに死ぬ"までの物語。 というとちょっと物騒に聞こえるかもしれないけど、元々ツイ4で連載されていた4コマ作品なだけあって作品全体が持つオーラはとても明るい。ただその中で、御伽とポーニャ、そして彼らを支える仲間それぞれにフォーカスされる瞬間があって、各々が内に秘める思いや感情がモノローグのような形で語られ、それを読むと毎話ごとに強い確かなメッセージを持ってこの作品が描かれていることが感じられる。モノローグなだけにその思いが言葉となってキャラクターから他の誰かに伝えられることはないのだけど、1人ひとりが熱い思いを抱えながら生きているからこそこの楽しい物語が成立しているのだと思うと、読んでいるこちらも自然と胸が熱くなる。コメディの中に高い熱量とメッセージを忍ばせた、つい見逃されてしまいそうだけど素晴らしい作品。 全3巻読了

ガケップチ・カッフェー

宝もの。

ガケップチ・カッフェー 大前田りん
(とりあえず)名無し
(とりあえず)名無し

『ガケップチ・カッフェー』は2巻まで出ていた…とずっと記憶していたのだが、どうも違うようだ。 1巻を愛読し、週刊モーニングでの連載再開以降も追っていたので、それで2巻を読んだ気になっていたのだろうか。 でもなあ、「2巻のカバーは、1巻よりずっと良いなあ」と思った記憶があるんだよなあ。2巻を買った夢でも見たのかなあ。 本作は、大前田りんという才能が生んだ、宝石ような佳品である。 難しいところがなにもないのに、とても微妙で壊れやすい男女の関係を繊細かつ絶妙に描き出して、いつまでも心の柔らかいところを刺激しつづける、絶品のラヴ・ストーリーだ。 日本でなぜかやたらと人気の高いドイツ映画『バグダッド・カフェ』の影響があるというのは、物語的にはあまり重要ではない。 だが、まさに映画の主題歌、ジェヴェッタ・スティールが歌う「コーリング・ユー」のような、メロウでウェルメイドなミディアム・ポップ・ソングを聴いている時に感じる「あのムズムズする気持ちよさ」を、読んでいる間ずっと感じられる、そんな漫画なのである。 (ちなみに、映画本編に比べて、この曲は本当に世界中で人気で、呆れるほど多くのミュージシャンがカバーしてます。興味がある人は、英語版のWikiの"Calling You"をチェックしてください) しかし、未完なのだ。 著者の精神的不調から連載が休止し、そのままに終わった…と、どこかで聞いた気がするが、本当のところは分からない。 未完に終わった漫画はそれこそ数え切れないくらい存在するし、この作品も既に四半世紀が経過してしまった。今さら、著者に続きを描いて欲しいとは、もう思わない。未完に終わったことは、誰よりも著者が無念だろうし。 とりあえず古本で良いので、1巻を読んでください。 すごく「ムズムズして気持ちいい」から。 「1巻だけでも充分だ、この作品を描いてくれてありがとう」と思うから。 でもね、やっぱり心の奥で、少し恨んでいるのです。 「こんなに俺を夢中にさせといて」…って。

百花日和

華道に生きる「道」を見つける

百花日和 埜納タオ 槙佑子
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

専門学校いけばな芸術コースの学生達は、2年間でそれぞれ、花に関する職を見つけて羽ばたいていく。そんな中、頑張り屋の南侑生だけは、何かに迷っていた。彼女の進む道とは……? ----- 全3巻のうち2巻を使って、クラスの面々が躓き、悩み、それでも前を向いて、花を生けることと進路に取り組んでいく、群像劇が繰り広げられる。 専門学校や大学に通ったことのある人なら、クラスメイトの描写は、こんな適当な奴もいたなぁ、などとリアルに感じられるだろう。 花の仕事のリアルも描かれて面白く、立ち向かう生徒達の、元気でわちゃわちゃした雰囲気で進行していく1、2巻。 3巻になり、南が皆とは違う進路を選ぶと、次第に雰囲気が変わる。 人に道を示し、体現してみせる立場を目指す南。いつもドタバタしていた彼女が、次第に迷いを捨て、凛とした雰囲気を醸し出すようになると、途端に画面が引き締まる。 更に高め合う存在に出会うと、交わす言葉の志の高さと共に、見開きがぐんぐん詩的になっていく。 感性はあれど不器用な人が、人より少し遠回りでも、確かな「道」を歩き出すまでを紡いでいくこの作品。 特に3巻は、見開きが平安絵巻のように流麗!その美しさは連載中(2019年現在)の『夜明けの図書館』でも健在!