マルジナルテイラ

本能に抗う強い愛(2巻をモノクロ版で読んだ話)

マルジナルテイラ limlim
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

本作の1巻を私はカラー版で読んだのですが、2巻を買う時に何故かモノクロ版をカートに入れて、そのまま購入してしまったのです。 電子書籍なので返品も効かず、カラー版を買い直す程の財力も無いのが悔しくて少しいじけてから、物語は同じだしと己を納得させて読み進めればまぁ……何とも重い百合が展開しているじゃありませんか。 本来争い合うはずの、蜂種族のプリマベラと蟻種族のラムリッタ。まだ幼く弱いラムリッタを保護し、戦い生きる術を教えるプリマベラ。少しずつ親愛の情を交わす二人の生活に、プリマベラの知人と思しき蜂種族の女性が介入する。 互いを救うべく行動するプリマベラとラムリッタ。ラムリッタの命を救いながら姿を消すプリマベラを、探すために強くなってゆくラムリッタに震える。 切ないのは、互いを想う心に反発する「本能」。同族と争うのを止める幻影、プリマベラがラムリッタを想う反面の殺戮衝動。果たして二人の想いは、本能を御することができるのか……ラムリッタが獲得した「強さ」が今後、カギとなるのかも知れない。 モノクロ版は『風の谷のナウシカ』漫画版のような退行世界のざらつく質感を充分伝えてくれる。その質感は、本能に抗う物語に生と死のリアリティを与え、物語をスリリングにしているのです。 カラーでもモノクロでも素晴らしいなぁ……という事が分かったので、今回は己の間違えを許してやろうと思うのでした。

SDガンダムフォース絵巻 武者烈伝 武化舞可編

親父のくれた魂(ボール)はオレの中にあるんだ!

SDガンダムフォース絵巻 武者烈伝 武化舞可編 矢立肇 富野由悠季 一式まさと
サミアド
サミアド

武者烈伝は「SD 武者ガンダム風雲録」などで描かれた武者七人衆のリメイクです。 このボンボン版はコミカル寄り、プラモのオマケ漫画はシリアス寄りで設定が違うパラレルになっています。 タイトルは『SDガンダムフォース』ですがTVアニメは無関係。 『武化舞可(ぶかぶか)編』ですが他の編は皆無。 メディアミックスや続編予定が、プラモ売れなくて白紙になりました!(泣) 親武者(光の七人衆)がカッコ良くて、 "龍神導師 " とか "天翔狩人" とか厨二病な二つ名も大好きです。 しかし彼らは過去の決戦で力を失っており、子武者達「烈火隊」が大将軍の装備 武化舞可を手に立ち上がる事になります。 「七人衆の中に裏切者が!?」という伏線が物語を盛り上げます。 大人の営業戦略で七人衆が脇役にされたのがムチャクチャ不満でしたが、生き生きとした子武者や ダジャレとハッタリの効いた必殺技を見ている内に「コレはコレで」という境地に達しました。 しかし打ち切りの影響か中ボス撃破後に主人公以外の子武者は全員捕まって出番激減…。 打ち切られなければ成長して装備も「ぶかぶか」ではなくなったはず。残念です。 最終回では綺麗にまとめて爽やかなラストになっています。 親武者・光の七人衆の活躍は模型誌ホビージャパンで『武者烈伝・零』として漫画化されています。前日譚ですが子武者メインの本編より正直カッコ良いです。

ダーウィン事変

ヒューマンとチンパンジーのあいの子、ヒューマンジーチャーリー

ダーウィン事変 うめざわしゅん
さいろく
さいろく

こりゃー事変だ。 3巻まで一気に読了。 すごい漫画だ、そしてすごくアメリカだなぁとつくづく感じる。 かといってこの題材で日本だと現実味はないとわかっててアメリカなんだろう、想像してみりゃわかる自然さと、リアルすぎる文化が入り交ざっている。 どうなっていくんだろう、どうするんだろうという期待も含め、これまで自分の読んできた短い名作たちと同じ短めな物語になってしまうのを想像してしまう。 ただ、自分の感覚ではこの時点ですでに名作だ。 自由の国では何を主張してもいい、みたいな風潮はあるけど主張したことで起こるその後の事については誰も守ってなんかくれない。 例えば(この漫画でも序盤に話題に出てくるが)私はヴィーガンはある種の宗教のようなところがあると思うけど、多数の人が集まるとそうなってしまうもんなんだろう。 ヒューマンジーであるチャーリーは唯一無二だが、この世界において生を受けたという意味ではただの一人でしかない。ONEであることはひどく難しい、というのがよくわかる。 なんか色々言いたくなる漫画でもあるなー、とにかくすごい漫画。 単行本派なので次号で終わってしまいそうな心配も少しあれど、それはそれで仕方ないとも思う。 うめざわしゅん先生の知識や想像力がいかんなく発揮されているので、この後の目を瞠る展開を楽しみに待ちたい。

るなしい

加速していく不穏な物語 #1巻応援

るなしい 意志強ナツ子
toyoneko
toyoneko

「るなしい」は,意志強ナツ子先生の新刊です。今のところ,既刊は1巻のみ。 掲載誌はなんと小説現代。 意志強先生の過去作は,「魔術師A」と,あとは「りゅうのすけくん」だけ読んだことがありました。 http://leedcafe.com/webcomic/exmanga019a/ どちらも面白いのですが,エロ比重が大きすぎて,正直自分の中で持て余していたところ, 本作は,(少なくとも1巻の時点では)直接的な描写はなく,比較的読みやすい作品になっています。 主人公の「るな」は,学校内でいじめをうけている,もっさりした感じのメガネ女子高生。 彼女は,広報委員会に所属しており,その中では「オタサーの姫」的な扱いを受けています。 一方で,彼女は,学校内で,処女の血がしみ込んだモグサを売って, 希望者にお灸をする(しかも有料)という,やや怪しげな活動にも手を出している人物。 そんな彼女が,ふとしたことから背の高いイケメンと仲良くなって…というところからストーリーが始まります。 …こう書くと,なんだかラブストーリーが始まりそうですが, 意志強先生のお話ですので,そうではなく, 中心になっていくのは「やや怪しげな活動」の部分です。 るなの「おばば」は, るなを「神の子」とするリアルな「信者ビジネス」を営んでおり, その考え方は,ほぼカルトです。 悩みがある者を焚き付け,家族と切り離し, 奇跡を見せて,取り込んでいく…。 もちろんガッチリお金をとる。 るな自身も,そのことを充分に把握したうえで, これに加担し,背の高いイケメン(ケンショー君)を取り込んでいく…。 破滅が確定している結末に向けて, 不穏さばかりが増していく物語。 オバケが出てくるわけでもないのにホラー感は強く, ゾクゾクするような読み味であり,きっと名作になるであろうと予感させてくれる作品です。

デガウザー

グロいけれどスケールや面白さは無限大

デガウザー 渡辺潤
名無し

海の上の大型船という逃げ場のない場所での パニックサスペンスかと思ったら、そんなもんじゃなかった。 まさに世界規模「以上」の壮大な物語だった。 正体不明のうえに巨大組織らしき敵になぜか命を狙われる。 状況が理解できずに翻弄されながら逃げ惑う主人公。 なぜ自分が狙われる?どうすれば助かる? なんでこんなに人が死ぬ?こんな死に方をする? 敵の正体は?狙いは?どこが安全で何が危険なんだ? 誰が味方で誰が敵なんだ? 誰を助けるべきなんだ?誰を殺さないといけないんだ? 勿論、読む人により好き嫌いが判れる物語だと思う。 嫌われるだろう部分は、かなりグロイ物語だということ。 残酷で凄惨な大量殺戮シーンが山盛り。 SFチックな話が絡んでくるのも好みじゃない人もいるだろう。 だがそれらの要素はあるものの、主人公たちが ちっぽけな存在でありながら巨大組織と戦っていくことには かなり説得力というか整合性があった。 戦う理由も、死にたくないからだけではなくなっていったし。 とかくこのての話は非力な主人公が巨大組織と 互角以上に戦っていくことに無理が生じたりするものだ。 大量殺人が行われたなら普通は世間でも大騒ぎになって、 物語の進行に非現実的なところがでてくるものだ。 けれど渡辺潤先生って、その辺にちゃんと理由付けをして リアリティを残しながら描くのが上手いですね。 好みは判れると思いますが、私は面白かったです。