ナベテツ
ナベテツ
1年以上前
マンガのすばらしさは幾つもありますが、自分の知らない世界を教えてくれる、知見を広げてくれる、という点も挙げられると思います。 AVを見たことのない男性というのは日本にほとんどいないと思いますが、この業界に関して詳細な知識のある男性もまた、ほとんどいないと思います(AV女優や男優、作品レベルの話ではありません)。かくいう自分も、好きな作家のエッセイや漫画で取り上げられたエピソードやインタビュー程度の知識しかありませんが、それでも恐らく世の中の平均的な男性よりは「作品」以外について「知っている」人間になってしまうと思います。 作者の村西てんがさんは、実際に制作会社で働いた経験があり、我々のような無知な人間に、AV業界や撮影というものを、少しずつ見せてくれます。 パッケージングされた作品には、それを作っている人達がいる。至極まっとうなことなのですが、AVに関してはその事が意識する人間は殆どいないように思います。それもまた無知のもたらすものであり、想像力の翼を届かせることのない原因になってしまっているのではないかと思います。 描きたいことが沢山あるんだろうな、というのが1巻を読んで自分が感じたことでした。それは、作者の物語を紡ぎたいという願望と同じくらい、この業界に向けられる「無知」に起因する眼差しを変えたい、という祈りなのではないかと。 世の中には、色んな仕事があるし、そこで働いている人は多分自分とそんなに違わない。彼ら彼女らも自分と同じくらい懸命に毎日を生きている。そんな当たり前のことを教えてくれる、現代の日本で特殊とみられる世界をやさしく教えてくれる作品です。作者が描き切ったと言えるくらい、連載が続くことを祈り、細やかでもエールになればと思います。
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
1年以上前
お仕事漫画でライバル同士が、火花散らしながら高みを目指す物語は、昂るものがあります。アニメの現場はプロ意識の塊のような場所だと思いますが、声優さんも、プロ意識高いですよね。 声優さんの意識が垣間見られる場所として「声優ラジオ」があります。フワフワ喋っているようで、時々生々しい本音でトークをする声優さんが好きです。そんな「声優ラジオ」に、女子高生で、しかも同じ学校・同じクラスの二人が起用される……というのが、このお話。 声優ラジオというと、ふんわりした仲良しトークが普通です。この二人のラジオも表面的には仲良しキャピキャピトークですが、実際の二人は物凄く険悪。方やギャルの陽キャ、方やぼっちの陰キャ。何かというと喧嘩ばかり……ちょっと引く位の刺々しさ、荒み具合。 しかし「アイドル声優」として、可愛さを売りにする為に素の自分を隠しているのは一緒。そして仕事人としての意識が高いのも、共通している。 その上で、ラジオの収録・公録、作品の現場を成功させる為に、互いの意思をぶつけ、苦手なところを支え、相手に負けまいと高みを目指す二人は、次第に互いを理解していく……その過程を追う程に胸高鳴り、のめり込んで読んでしまいます。 陰キャのツンっぷりが物凄くて正直怖いのですが、徹底的なツンの後にポロっと出るデレが、威力抜群!陽キャと一緒に心グラグラ揺れまくりです! こんな二人をアニメ化したら、誰に声を当ててもらおうか……と、かなり真剣にメタな事を考えながら読みました。